『怪物』是枝裕和×坂元裕二×坂本龍一、カンヌ脚本賞に輝いた話題作
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【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第1122回】
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画・ドラマを発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。
今回は、 絶賛公開中の『怪物』と『クリード 過去の逆襲』をご紹介します。
映画館で観たい!『怪物』 ~かいぶつ、だーれだ!?
日本勢が大躍進した「第76回カンヌ国際映画祭」で、脚本賞とクィア・パルム賞(※)に輝いた映画『怪物』。
メガホンを取ったのは、世界のフィルムメーカーとタッグを組んできた是枝裕和監督。そして脚本は、是枝監督が「いま最もリスペクトしている」と語る脚本家、坂元裕二。
音楽は、海外でも第一線で活躍し、2023年4月に逝去した坂本龍一。日本映画史上、もっとも心を揺さぶられる奇跡のコラボレーションが実現しました。
※クィア・パルム賞……性的マイノリティなどを扱った映画に与えられる独立賞のひとつ。
『怪物』のあらすじ
舞台は、大きな湖のある郊外の町。
ある日、小学校でケンカが起きた。それは、どこにでも起こりうる子ども同士の諍いのように見えた。
しかし、息子を愛するシングルマザー、生徒思いの教師など、この出来事をめぐる周囲の人たちの主張は食い違うばかり。やがて、小さなケンカは社会やメディアを巻き込んだ事件へと発展していき……。
『怪物』のみどころ
出演は、パルム・ドールに輝いた『万引き家族』に続き、2度目の是枝組への参加となる安藤サクラ。本作が初めての是枝作品出演となる永山瑛太。さらに田中裕子、高畑充希、角田晃広、中村獅童など、変幻自在な演技で観客を魅了するキャストが集結しました。
そして本作を語るにおいて外せないのが、物語の鍵を握る2人の少年を演じた黒川想矢と柊木陽太。
これまでは子役には台本を渡さず、口頭で演出してきた是枝監督ですが、今作では敢えて台本を使用。意見交換をしながら役づくりを行ったとのこと。
その選択が功を奏して、子役の2人はある葛藤を抱える難しいキャラクターでありながら、瑞々しい演技をみせています。黒川想矢と柊木陽太、是枝監督が引き出した“新たな才能”に注目ですよ。
「羅生門」を思い起こさせる複数章で構成されたストーリー展開は、実に秀逸。観れば観るほど、映画の世界観にどんどん巻き込まれていくような感覚を覚える本作。
ひとつの出来事が、人それぞれの思い込みや勝手な解釈によって、これほどまでに見え方が違ってくるものなのか……。そんな驚きをもってご覧になる方も多いことでしょう。
視点が変わると、“怪物”の存在も変化していく。一体、誰が“怪物”なのか。何を持って“怪物”となされるのか。カンヌでの興奮が冷めやらぬいまこそ観て欲しいヒューマンドラマです。
コチラも映画館で観たい!『クリード 過去の逆襲』 ~マイケル・B・ジョーダン、主演・監督・プロデュースでシリーズ最高傑作をつくり上げる
『ロッキー』シリーズに登場するアポロ・クリードの息子を主人公にした『クリード』シリーズ第3弾。
過去2作にわたって主人公アドニス・クリードを演じてきたマイケル・B・ジョーダンが、今作では監督・プロデューサーも兼任。クリードへの復讐に燃える幼馴染デイムとの死闘を、パワフルに映し出しました。
スポーツ映画では初となるIMAX認証デジタルカメラで撮影を敢行し、リングサイドさながらの臨場感が味わえるファイトシーンは迫力満点。そして封印してきた自分の過去と対峙するストーリー展開にも、グッとくること間違いなし。ボクシング映画ファン必見の1作です。
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『怪物』
2023年6月2日(金)から全国ロードショー
出演:安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、高畑充希、角田晃広、中村獅童、田中裕子
監督・編集:是枝裕和
脚本:坂元裕二
音楽:坂本龍一
企画・プロデュース:川村元気、山田兼司
製作:東宝、ギャガ、フジテレビジョン、AOI Pro.、分福
配給:東宝、ギャガ
(C)2023「怪物」製作委員会
公式サイト https://gaga.ne.jp/kaibutsu-movie/
『クリード 過去の逆襲』
大ヒット公開中
監督・制作:マイケル・B・ジョーダン
出演:マイケル・B・ジョーダン、テッサ・トンプソン、ジョナサン・メジャース、ウッド・ハリス、フロリアン・ムンテアヌ、ミラ・デイビス・ケント、フィリシア・ラシャド
製作・ストーリー:ライアン・クーグラー
原題:Creed III
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C)2023 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All rights reserved.
CREED is a trademark of Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All rights reserved.
公式サイト https://wwws.warnerbros.co.jp/creed/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/