東京都医師会理事で「目々澤醫院」院長の目々澤肇氏が8月18日、ニッポン放送「モーニングライフアップ 今日の早起きドクター」に出演。医療DXの今後について語った。
スマホに健康データを入れられるソフト「パーソナル・ヘルス・レコード(PHR)」 ~PHRソフトに電子カルテから情報を流すためには巨額の投資が必要
飯田浩司アナウンサー)電子カルテの持ち出しについて、USBに入れて別の病院に持って行くのは難しいかも知れませんが、物理的に自分が持って行くことができれば楽ではないかと思うのですけれど、いかがでしょうか?
目々澤)いまはスマートフォンが普及しているので、患者さんのスマートフォンに本人のデータを入れられるようなサービスがあったらいいと思います。
飯田)便利ですね。
目々澤)既にサービスとして、我々が「パーソナル・ヘルス・レコード(PHR)」と呼んでいるソフトが多くあります。しかし、PHRソフトに電子カルテから情報を流すためには、巨額の投資が必要です。
「PHR」によって、病院に行かなくても自分の健康データを見ることができるアメリカ
飯田)PHRというのは、スマートウォッチなどで歩いた歩数が出るなど、そのようなデータですか?
目々澤)そのようなデータの積み上げを、Appleでは「ヘルスケア」というソフトウェアで管理しています。アメリカではヘルスケアを開くと、病院リストの一覧が出てきます。
飯田)そうなのですか?
目々澤)「自分はこの病院の何番というIDである」と入力して希望のボタンを押すと、PHRが動き出します。これを日本でもやりたいと思っています。
飯田)病院と連携して、病院でもそのデータを見ることができるのですか?
目々澤)患者さんが日常的にApple Watchで取ったデータをiPhoneに蓄え、それを病院へ流す。病院側からは患者さんが希望する場合、その患者さんの画像データや血液検査のデータが流れるのです。
飯田)病院に行かなくても見ることができる。
目々澤)それをぜひ日本でもやりたくてお願いしたのですが、まだできていません。いま標準化の真っ最中ですから、規格が変わっていくこともあり、すぐには受け入れられないのです。
Apple Watchで見つかった不整脈のデータを電子カルテに載せることも可能に
飯田)いまは1つひとつの拠点間、ハブとハブをつなげることを続けつつ、最終的にはそれぞれ個人がつながっていけばよいのですか?
目々澤)実際に私の診療所では、「Apple Watchで不整脈が見つかった」という形で持ち込まれれば、その方のiPhoneを広げて心電図データをPDFで表示させ、AirDropで私の電子カルテにもらうこともできます。私の診療所では当たり前のように行っています。
飯田)心電図も取れてしまうのですか?
目々澤)「Apple Watch Series 7」以降では可能です。
飯田)ちなみに精度はどのくらいですか?
目々澤)不整脈などはしっかりとわかります。ただ、これは個人として取ったものであり、その場に医師がいないので正式な医療記録にはなりませんが、受け取るドクターが判断する場面においては重要な情報になります。
ネットワークそのものが共通サービスとして利用できるようになり、OS側で受け入れられる世界が来れば、明るい未来が開ける
飯田)デバイスが増え、取れる情報も増えてきたなかで、目下、話題になっているのはマイナンバーの部分です。これが果たす役割はどんなものがありますか?
目々澤)マイナンバーによる名寄せができれば、医療連携にはとても役立つと思います。日本中、どこにいても患者さんが自分のデータにアクセスできる。患者さんが医療機関に運び込まれたら、医療機関がその方の情報をすぐに確認できる。そのような状態になれば、患者さんの安全性、医療の効率化などにつながります。
飯田)マイナンバーによって。
目々澤)それがきちんと機能するようになり、日本中で利用できるようになればありがたいと考えています。1つひとつの病院がPHRのメーカーと結ぶよりも、ネットワークそのものを共通サービスとして利用できるようになり、それをOS側がきちんと受け入れてくれるような世界が来れば、とても明るい未来が開けると考えています。
番組情報
医師が週替わりで登場。
飯田浩司アナウンサーと新行市佳アナウンサーが、健康に関する疑問や予防法、症状、治療法などを聞きます