元厚生労働省医系技官で医師の木村盛世氏が9月5日、ニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演し、辛坊と対談。政府の感染症対策の「司令塔」として1日に発足した内閣感染症危機管理統括庁について、「すでに内閣危機管理監がおり、看板の掛け替えでは使いものにならない」と指摘した。
政府の感染症対策の「司令塔」となる内閣感染症危機管理統括庁が1日、発足した。新型コロナウイルス禍の教訓を踏まえ、感染症危機対応の企画立案や調整を一元的に担う。新たな危機に備え、当面は政府行動計画の改定作業を1年程度かけて行う方針だ。
辛坊)内閣感染症危機管理統括庁は役に立つのでしょうか。
木村)すでに首相の直下には内閣危機管理監がいます。感染症も含め、危機管理に対応しなければならない事象が起こった際には、官邸がすぐに動ける体制はあるはずなんです。しかし、新型インフルエンザの流行でもて新型コロナウイルス禍でも全く使いものになりませんでした。
今回、同じようなものをつくったところで、使いものにならないというのは誰が考えても明らかです。そもそも、日本の感染症の危機管理は3つの大きな問題を抱えています。この根本的な問題を解決しない限りは、いくら新しい組織や役職をつくって看板を掛け替えても使いものにはなりません。
辛坊)3つの大きな問題とは何ですか。
木村)1つ目は、法体系が危機管理に即していないことです。すなわち、昭和中期の状況で今も感染症対策が行われていることです。最も大きな問題は、感染症に関する法律のうち、検疫法と感染症法がそれぞれ国外向けと国内向けで担当部署がことなることです。さらに、新型コロナの特別措置法もあり、感染症の危機管理を行おうとすると、それぞれの法律のすり合わせをすっとしなければなりません。
加えて、法律の運用は上意下達ですから、段階を1つでも飛ばすと大変なことになります。1つの例ですが、検疫法に基づき職務を行う検疫官は、空港の国際線ターミナルに入れますが、国内線ターミナルには入れません。こうした現状からしても、危機管理の際には使いものにならないですよね。
2つ目は、日本では感染症にまつわる系統だったデータが一度もとれていないことです。新型コロナに関しても、国内でどれほどの感染者数があったか、実際のところは分かりません。
3つ目は、新しい感染症が国内に入ってきたときに急がなければならないのは、ワクチンをはじめとする新薬の開発ですが、日本は海外の国から周回遅れとなっていることです。さらに、その有効性を確かめる大規模治験も日本はいまだに行ったことがありません。
こうした問題に付け加えるとすれば、感染症の危機管理を何とかして束ねようとする責任感のあるトップがいないことも問題です。政治家は責任をとりたくないわけで、票田である日本医師会のほうを向いていればいいというスタンスです。日本を感染症のから何としても守ろうという政治家が存在しないことが問題です。
番組情報
辛坊治郎さんが政治・経済・文化・社会・芸能まで、きょう一日のニュースの中から独自の視点でズームし、いま一番気になる話題を忖度なく語るニュース解説番組です。
[アシスタント]増山さやかアナウンサー(月曜日~木曜日)、飯田浩司アナウンサー(木曜日のみ)