ジャパンモビリティショー2023取材記(3) モビリティ社会の未来を担う

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「報道部畑中デスクの独り言」(第346回)

ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、モビリティ社会の未来について---

電動車いすなど、モビリティ社会の未来も東京フューチャーツアーで

画像を見る(全10枚) 電動車いすなど、モビリティ社会の未来も東京フューチャーツアーで

東京モーターショーから実に59年ぶりに名称が変更されたジャパンモビリティショー。次世代EV、空飛ぶクルマ、自動運転と注目点をお伝えしてきましたが、今回はこれまでにない新たな試みもありました。

モビリティの未来を紹介する「東京フューチャーツアー」は、入口をくぐると、大型のスクリーンから迫力の映像が飛び込んできます。高速道路には自動運転のトラック、その上を走るドローン、空飛ぶクルマ、そしてゴジラに破壊された街の復興。いわば「災害対応」にモビリティがどう関わるのか……未来のモビリティ社会の姿が映し出されていました。

東京フューチャーツアーのひとコマ 災害対応へのモビリティの貢献を伝える

東京フューチャーツアーのひとコマ 災害対応へのモビリティの貢献を伝える

この他、次世代モビリティの試乗体験、燃料電池車の発電で会場の電気をまかなうライブステージ……「クルマ離れ」と言われるなか、さまざまな「見せる工夫」が施されていました。

東京フューチャーツアーでは、さらにロボット、電動スクーター、ドローン、月面探査車のイメージ模型……これまでのクルマの枠を超えたモビリティが集結しています。

こうしたモビリティに関わるスタートアップ企業も今回、90社参加しています。まさに、未来のモビリティ社会のカギを握る可能性もある企業……このなかから「エアロセンス」と「岩谷技研」の2社を訪ねました。

災害車両が集結

災害車両が集結

エアロセンスは2015年にソニーモバイルコミュニケーションズと、ロボットのベンチャー企業ZMPの合弁会社として設立されました。開発・製造を行っているのはドローン。垂直に飛んだあと、横に水平飛行できるのが特徴で、展示されたドローンには底面にカメラが搭載されています。

カメラは用途によって交換可能。災害が起こったときに空中から広範囲を撮影できる他、測量などにも対応できるということです。顧客は東京都などの企業・団体、いわゆる「BtoB」。

今回の出展について広報IRマネージャーの後藤剛さんは、「クルマという域を超えて、移動するものであればすべて展示するというコンセプトのショーで、展示させていただけることはありがたい」と話していました。

災害対応におけるモビリティのあり方 リアルでも表現

災害対応におけるモビリティのあり方 リアルでも表現

岩谷技研は2016年設立。気球による宇宙遊覧飛行を目指しています。目標高度は上空25kmの成層圏。「キャビン」と呼ばれるカプセルは与圧密閉され、内部は地上と変わらない環境が維持されるということです。1時間前後の宇宙滞在を含め、4時間あまりのツアーを想定しています。

「宇宙に縁が遠かった人にも宇宙に触れる機会をつくりたい」と話すのは、制作広報部課長の唐津哲也さん。乗員は5名で予約を締め切り、現在選考中とのこと。

気になるお値段は、初回は2400万円。将来的には「プリウスぐらいの値段にしたい」とも。今回の出展については「未来をつくる側に自分も加わっているという感慨がある」と心境を語っていました。

月面探査車のイメージ 4年前の出展より”現実”に近づいているという

月面探査車のイメージ 4年前の出展より”現実”に近づいているという

クルマが社会の一部としてどんな位置付けとなっていくのかが問われる時代になりました。自動車業界はこれまでのクルマによる“移動”に、ある種の限界を感じているのかも知れません。

次世代EV、空飛ぶクルマ、自動運転、ライドシェア……だからこそ、その概念を超え、「限界突破」に挑むということでしょう。ジャパンモビリティショーにはそんな姿があったと思います。

エアロセンスが開発するドローン 防災にも貢献する

エアロセンスが開発するドローン 防災にも貢献する

一方、今年(2023年)春の上海モーターショーでは、“EV百花繚乱”の内容に関し、危機感を持った国内メーカーのトップが少なくありませんでした。日本国内のEVの販売比率は、2022年度で全体の2%に達していません。

国内販売トップの日産でさえ、日産車全体では8%ほど。さらに今回の中国・BYDの出展……次世代EVの出展がにぎやかだったのは、中国に対する危機感にほかならないと思います。

岩谷技研が開発する「宇宙への気球」

岩谷技研が開発する「宇宙への気球」

また、コンセプトカーというのは、まさに夢のクルマですが、夢とは言え、こんなクルマが本当に実現するだろうか……現状と未来の間の距離を測りながら見ている人は少なくないと思います。私もその1人です。できっこないと思えば、極端に言うと「ハリボテ」です。現状と未来の間の“距離感”、各社でかなり差があったように感じます。

そう考えると、コンセプトカーながら距離感が近いと感じたのは、トヨタのワンボックスEV「KAYOIBAKO」、スズキなどの一連の電動モビリティ、いすゞのEVバスなどです。これらのクルマは「街の景色」を変えるかも知れません。

通り際にパチリ、コンパニオンも健在(横浜ゴム)

通り際にパチリ、コンパニオンも健在(横浜ゴム)

また、EV技術を向上させるには、電池やモーターの技術はもちろんですが、何といっても「場数」。実走のデータを多くとることもカギになります。電動モビリティや電動バイクの普及は技術向上の後押しとなるでしょう。

そして、今回のショーでは“次世代”を実現するためにどうするのか、まだ表に出せないところがあるのでしょうが、技術面では見えにくい部分もありました。キーテクノロジーがAIやソフトウェアに移りつつあるなかで、機械的な、「メカメカしい」展示が少なくなっていることも理由かも知れません。

通り際にパチリ、コンパニオンも健在(Ohlins Racing AB)

通り際にパチリ、コンパニオンも健在(Ohlins Racing AB)

かつてのクルマに慣れ親しんでいた者としては、いささかの寂しさも感じますが、そういう意味では報じる側も変わっていく必要があるのでしょう。

ジャパンモビリティショー、ざっと私なりの視点でお伝えしてきましたが、来場される方々それぞれに見えてくるモビリティのあり方があると思います。一般公開は11月5日までです。(了)

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