経済アナリストのジョセフ・クラフトが1月18日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。岸田総理が調整していることが明らかになった政労使会議について解説した。
岸田総理、賃上げ実現に向け政労使会議へ
岸田総理大臣は1月17日、総理官邸で開いた政府与党連絡会議で物価上昇を上回る賃上げ実現に向け、労働団体、経済界の代表者と話し合う政労使会議を調整していると明らかにした。総理は「日本経済を長く覆うデフレ心理とコストカットの縮み志向から完全に脱却すべく、全力を挙げる」と強調し、医療、介護、障害福祉団体に賃上げを要請する考えも示した。
飯田)岸田さんはずっと賃上げを言い続けていますね。
クラフト)今回の春闘で2023年を上回る賃上げ率になるのは、ほぼ確実ではないかと思います。それよりも日本の雇用の7割を占める中小企業が、どこまで賃上げできるのか。中小企業の状況は厳しいので、その辺りの伸び率がどこまで上げられるのか、少し心配ではあります。概ね平均化すると、去年(2023年)の賃上げよりも今年は上がると見ていいと思います。
「デフレ心理とコストカットの縮み志向」という岸田総理の発言は重要
クラフト)総理が言った「デフレ心理とコストカットの縮み志向」は非常に重要で、ダイハツ不正問題やその他、いろいろな企業が行った不正。これらはすべてがデフレ心理で、収益・売上を伸ばしてパイを広げる事業展開ではなく、コストカットによって収益増を狙うものです。でも、コストカットには限度がありますよね。
飯田)そうですね。
クラフト)行き詰まると、それ以上カットできないので「不正行為で逃れよう」という方向に進んでしまう。デフレが長く続くと、そういう悪い方向に企業が向く可能性がある。そういうことも断ち切る意味で、低インフレはある意味重要だと思います。
企業が投資・開発に資金を投入し、家計を金融投資に回すという循環を生みたい
飯田)ここから先、低インフレが続くとなると、手元でお金を持っていれば目減りします。どこかで使わないとならない。それは発想の完全な転換ですよね。
クラフト)企業は成長していかなければいけないので、持っている資金は成長投資あるいは研究開発にあてがう必要があります。家計も同じで、家計が持っている現金・預金1100兆円は、毎年2%のインフレだと10年で20%目減りしますから、やはり金融投資にある程度あてがわなければいけない。この循環が始まると、企業の成長が促されて賃金が上がっていく。それによって家計も金融投資を行い、株や資産が増えていく。この非常にいい循環に入ったら、10年後の日本はすごくなると思います。また去年、海外投資家が6兆円買って、日本株が7000円ほど上がっているのです。
家計が金融投資に回れば、5年後、日本株が6万円になる可能性も
クラフト)もし日本の家計がたった1%、持っている現金の1%を株式投資に回すだけでも、約11兆円です。海外投資家の倍です。株価はどうなるのでしょうね。私は5年後に6万円になってもおかしくないと思います。もし家計の現金が「うまい具合に金融投資に向かえば」という条件付きですが、そうなれば6万円も夢ではないと思います。
飯田)いまは本当に、その循環に行くかどうかの瀬戸際。
クラフト)入り口にいると思います。
官民一体となって賃上げを促進し、企業が適正に値上げし、また賃上げしていく
飯田)現状で家計を預かる人たちからすると、そうは言っても物価は上がるし、給料は上がらず、可処分所得は下がっている。それを何とかしなければいけません。岸田総理も可処分所得の話をしていますよね。
クラフト)政府としては、まず賃上げで可処分所得を増やし、実質賃金をプラスに持っていく。そうすれば家計にも余裕が出てきて、「少し投資の方にも回そうか」という機運になってくる。これは1日ではできないので、徐々にそういう心理的機運を高める必要があります。今年(2024年)の終わりごろ、どういう状況になっているのか注目したいですね。まずは入り口として、春闘での賃上げが重要です。
飯田)企業からすると「我々ばかりに賃上げ、賃上げと言わず、政府も可処分所得を増やす方策を出して欲しい」と思うかも知れませんが。
クラフト)そういう狙いもあって定額減税を考えたのですが、批判されてしまい、政府も消極的になっているのだと思います。それでも官民一体となって賃上げを促進し、企業が適正に値上げして、それでまた賃上げしていく。そういう好循環が生まれれば、いまのような生活苦は多少、和らぐのではないでしょうか。当面、家計は苦しいですが、今年の年末から来年に向けて、少しずつ状況が改善していくことを願っています。
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