いまは「金融引締めするような状況ではない」須田慎一郎が指摘
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ジャーナリストの須田慎一郎が1月22日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。日銀による「金融政策決定会合」について解説した。
日銀が「金融政策決定会合」を開催
日本銀行は1月22~23日の2日間、金融政策決定会合を開催する。日銀は賃金上昇を伴う形で物価上昇率を2%で安定させる目標を掲げており、実現できればマイナス金利の解除に踏み切る方針だが、賃上げの広がりが不透明なことなどもあり、今回の会合では「大規模な金融緩和策を維持する公算が大きい」との見方が出ている。
大手企業以外はまだ見えない賃上げの状況
飯田)近く春闘も始まりますが、足元の経済をどうご覧になりますか?
須田)人手不足もあって、一部の企業では大幅な賃上げが予想されます。余裕のある大手企業だと「5%程度の賃上げ」というラインが出ていますが、一方で経営体力に劣る中堅・中小企業、零細企業、小規模事業者などは、「とてもではないけれど難しい」という状況です。下請けや発注先を考えると、部品単価や手間賃・工賃などの単価が上がらなければ業績回復につながらない。賃上げにもつながらず、その先がまだ見えてきていないのです。
国内の企業物価指数が落ち着き始めて「よい物価上昇」につなげることが難しくなってきた
須田)昨年(2023年)末の国内の企業物価指数、よく消費者物価指数と言われますが、これはあくまでも川下です。消費者が物・サービスを買うときの価格がどの程度動いているかを見るのが物価指数ですが、川上の企業・メーカーが、例えば問屋さんに製品を売るときの価格はどう動いているのか。言ってみれば、これが川上の企業物価指数と言われているものであり、去年の暮れから落ち着き始めているのです。
飯田)落ち着き始めた。
須田)そうすると川下では今年(2024年)後半の物価、つまり「消費者物価指数も落ち着いていくだろう」という見立てが強く出ています。消費者サイドからすると歓迎すべきことですが、マクロで見ると、またデフレになる可能性も出てきている。つまり原材料価格やエネルギー価格の高騰による物価上昇が、一定程度収束するという見立てが出ています。需要が多すぎて供給が足りず、価格上昇が起こる「よい物価上昇」につなげることが難しくなるかも知れない。マイルドな「年間2%程度の物価上昇」を考えていくと、「いまは金融緩和策をやめるタイミングではない」と思います。
「金融引き締めをするような状況になっていない」日本経済
飯田)まだ十分に経済が温まっていないので、いま引き締めたら、また風邪を引く可能性があるのですね。
須田)日銀はいつになったら利上げするのか、金融引き締めに転じるのかという見方が強まっていますが、日本経済の景況感は、まだ「利上げ、金融引き締めをするような状況には全然なっていない」と言えるでしょう。国はきちんとした財政出動を含め、対策しないとならない。増税を行っている場合ではないと思います。
飯田)海外から入ってくるものの値段が上がったり、円安などで見た目には物価が上昇しているため、このままだと可処分所得が減ってしまいますよね。
須田)悪い物価上昇ですね。
飯田)可処分所得が減ったら、使うお金が少なくなるから国内需要が伸びるはずがない。「何とかサポートしなければ」と感じますが、いまは賃上げ頼みになっていますね。
須田)賃上げ頼みではなく、賃上げがスムーズに循環していくためには、やはり公的セクターが必要です。民間の金を使う動きが鈍いものだから、何とか正常な状態に戻るまで公的セクターが引っ張る必要があると思います。いまの政権には、その意識がまったく欠如しているのです。政権というよりも財務省だと思いますが。
策を打てば好循環のプロセスに入ることができる瀬戸際なのに、財務省が「平時キャンペーン」
飯田)可処分所得を残す、あるいは増やす。もちろん入ってくるお金、賃上げがあればいちばんいいけれど、働いている方としては「天引きされる税金や社会保険料を何とかできないか」と思いますよね。
須田)ところが、ここへ来て去年の後半ぐらいから「有事ではなく平時だ」と言い出した。日本経済が平時なのだから、例えば社会保険料の減免や減税、場合によっては公共事業投資などの「財政出動なんて行っている場合ではない」と。財務省発の平時キャンペーンで、新聞紙面にも「平時、平時」と並んでいます。はっきり申し上げて、これでは日本経済が失速してしまいますよ。
飯田)いままさに、景気がうまくいくかどうかの入り口に来ている。
須田)瀬戸際なのですよ。いましっかりした策を打てば、好循環のプロセスに入ることができるのに、それをやろうとしない。ものすごく歯がゆい状況です。
飯田)いまがチャンスなのですね。
須田)千載一遇のチャンスですよ。
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