ぬか床はiPS細胞と同じ?
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黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「黒木瞳のあさナビ」(1月17日放送)に「味処 矢野」女将の矢野寿美子が出演。ぬか床(ぬかみそ)について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「黒木瞳のあさナビ」。1月15日(月)~1月19日(金)のゲストは「味処 矢野」女将の矢野寿美子。3日目は、ぬか床の受け継ぎ方について---
黒木)ぬか床、そしていろいろな菌のことを教えていただきましたが、小指の第一関節ぐらいの種ぬかから、なぜぬかみそが「ブワッ」と増えるのですか?
矢野)生ぬかを足し、水を加えて野菜を漬ければ餌が増えるからです。
黒木)種ぬかとは何ですか?
矢野)菌の塊と考えればいいですね。
黒木)それはどこにあるのですか?
矢野)もともとのぬか床です。
黒木)矢野さんが持っていらっしゃるぬか床。
矢野)例えば、誰かに「あなたもつくりなさい」と少しあげた場合、そこに生ぬかと水と塩を入れれば、「ブワッ」と増える。ぬか床ができるのです。
黒木)小さじ1杯ぐらいの矢野さんのぬかを元にして、新しいぬかと水、塩を加える。
矢野)それだけでいいのです。
黒木)そうしたら、どのように増えていくのですか?
矢野)ぬかが持っている栄養分、大きく分けると炭水化物が餌になるのです。元にあった菌にえさが入るから、元気になる。
黒木)どれくらいの量になるのですか?
矢野)入れたぬかの量だけ増えます。例えば300年続いたぬかを持っているけれど、カビが生えてしまった場合でも、なかの方の小さじ1杯を取り出して、新しくつくれば300年がつながるということです。
黒木)なるほど。
矢野)ひいおばあちゃんのも、ひいひいおばあちゃんのも全部つながるのです。歴史はつながる。腐らないのです。iPS細胞と一緒で、ちょっと持ってきて、その人の菌を入れれば、また違ったものになるのです。
黒木)ips細胞とぬか床。
矢野)一緒ですよ。微生物の世界だから。
黒木)郷土料理のぬか炊きについても伺いますが、「ぬか炊き」とは何ですか?
矢野)ぬか床のぬかみそを入れて炊いた、煮魚の料理です。
黒木)ぬか床とぬかみそはどう違うのですか?
矢野)ぬかみそを入れたすべての容器に入ったものを、ぬか床と言うのです。
黒木)同じものなのでしょうか?
矢野)そうです。「床の間に置いてあるからぬか床と言った」という説もあります。容器やカメを置いていて、それをぬか床と呼んだ。中身だけは、一般的には「ぬかみそ」と言います。
黒木)これが矢野さんのお宅の大切なぬかみそですね。
矢野)触ってみてください。柔らかいから。
黒木)触っていいのですか?
矢野)いいですよ。舐めても美味しいです。うちのぬかみそを、ちょっと食べてみてください。
黒木)酸っぱいような。
矢野)それが乳酸菌です。そして最後に「うまいな」と感じるのがアミノ酸。旨味成分ですね。決して嫌な味ではないでしょう?
黒木)これだけでご飯が食べられますね。
矢野)うちに来たお客さんも、「ご飯に塗って食べたいからぬかみそが欲しい」と言います。
黒木)クセになる味ですね。このぬかみそにきゅうりなどを漬ける。
矢野)そういう味に漬かります。
矢野寿美子(やの・すみこ)/「味処 矢野」女将
■福岡県北九州市のJR小倉駅近くにある海鮮丼&ぬか炊き専門店「味処 矢野」。
■小倉の郷土料理「ぬか炊き」は、母が残し80年継いできた“ぬか”と、女将の工夫と研究で独自の味を実現。
■もともと漁師だった夫が始めた海鮮丼屋さん。夫の体調不良もあり、寿美子さんが切り盛りすることになったが、独自の味が人気で口コミでどんどん広まり、地元の人に愛されるお店に。
■本人はジャズシンガーでもあり、店ではジャズがかかっている。
<ぬか炊き(ぬかだき)>
■江戸時代から豊前国に伝わる、イワシやサバといった青魚をぬか床(ぬかみそ)で炊き込んだ北九州小倉の郷土料理。
■江戸時代初期、小倉城を築城し、豊前国を治めた細川忠興のころにぬか漬けが伝わり、その後の国替えで小倉藩主となった小笠原忠真もぬか漬けを好んで食べていたようで、小倉城下の人々へも推奨したことからぬか漬けが広まったと言われている。
■その後、北九州近郊で獲れる新鮮なイワシやサバをぬか床で炊き込んだ「ぬかだき」が保存食として食されるようになった。ぬか床はどの家庭でも非常に大切にし、小倉では嫁入り道具として代々親から子に受け継がれて40年、50年と経ったぬか床は珍しくなく、100年を超えるぬか床を持っている家庭も少なくない。
番組情報
毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳