「景気回復」を実感できない「2つの問題」 佐々木俊尚が指摘

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ジャーナリストの佐々木俊尚が2月7日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。前年比2.5%減となった2023年の実質賃金について解説した。

「景気回復」を実感できない「2つの問題」 佐々木俊尚が指摘

※画像はイメージです

2023年の実質賃金が前年比2.5%減、給与増も物価上昇に追いつかず

2023年の働き手1人当たりの実質賃金は、前年比で2.5%減少した。現金給与の総額は増えたものの物価上昇に追いつかず、実質賃金は2年連続でマイナスとなった。

新行)厚生労働省は従業員5人以上の事業所3万余りを対象に「毎月勤労統計調査」を行っており、2月6日に去年(2023年)1年分の速報値を公表しました。基本給や残業代、ボーナスなどを合わせた働き手1人当たりの現金給与総額は、月平均で32万9859円となり、前年比1.2%増。3年連続でプラスになりました。

賃金上昇が物価に追いついていないだけで景気はいい

佐々木)外国人投資家が金融市場に流入するなど、日本経済に明るい兆しが見えてきています。熊本に台湾の半導体大手が工場をつくるなど、いろいろな要素があってよくなっていますが、実質賃金が下がっているという情報だけで「景気が悪い」と勘違いする人が多い。景気はよくなっているのですよ。問題なのは、賃金は上がっているけれど、物価上昇に追いついていない。ただそれだけなのです。

新行)景気は決して悪くない。

佐々木)物価が上がると「生活がこんなに苦しくなって、何が好景気だ」とSNSで怒る人がいますが、物価が上がるのは景気がよくなる証拠です。物価が上がらないと景気はよくならない。日本の平成の30年間は物価がまったく上がらず、逆に下がったから不景気だったのです。物価が上がり、それに伴って「賃金が上昇するかどうか」が重要です。

春闘で賃金がアップすれば、実質賃金がプラスに転じる可能性も

佐々木)少し前まではウクライナ侵攻をきっかけに、エネルギーや原材料価格が上昇するコストプッシュインフレで、「物価が上がっているだけだ」という話でした。でも消費者物価指数によると、去年の後半ぐらいからディマンドプルインフレになって、原材料や食品だけでなく、サービス部分の値上がりも始まっています。

新行)ディマンドプルインフレ。

佐々木)賃金を上げるために値上がりが始まっているので、傾向としてはいい状況です。ただ、追いついていないので苦しいという印象ばかりが浮き彫りになり、岸田さんの支持率が下がっている。岸田さんの内心では、春闘で賃金がアップすれば実質賃金がプラスに転じる可能性があり、「そうなったら政権支持率も上がる」という期待があると思います。

経済全体にK字回復の傾向 ~二分化する状況で国民の不満をどう解消するか

佐々木)初任給についてもユニクロが初任給30万円など、大企業が賃上げしましたよね。ただ、いまの状況は昔の高度経済成長時代と違うので、国全体でみんなの賃金が上がるという状況ではないのです。企業や産業によって「よくなるところ」と「よくならないところ」に分かれている部分がある。コロナ禍から消費が復活したとき、景気がよくなる業種とよくならない業種に分かれる「K字回復」の現象がありました。コロナに限らず、経済全体にそういう傾向があるのだと思います。例えば建設産業では、人手不足で賃上げが進んでいるではないですか。

新行)そうですね。

佐々木)観光業も外国人観光客が増えているので、賃上げしないと人が集まらないような状況になっている。一方、業種で言えば一般事務などは、AIに一般事務の仕事が奪われるという話もあります。IT化や省力化が進んでいるので、「そんなに給料を上げなくてもいいだろう」という空気があり、上がらない。二分化した状況のなかで国民の不満をどう解消するのか、という問題が1つあります。

「これから給料が上がるぞ」というマインドにどうやって持ち上げて消費を復活させるか

佐々木)もう1つ、K字回復とはまた別に、可処分所得が減っている問題があります。私が新聞記者だったのは90年代でしたが、最近の会社員の給与明細を見せてもらうと、当時に比べて「こんなに社会保障費が引かれているのか」と驚きます。

新行)そうなのですよね。

佐々木)可処分所得が減っているので、「これから給料が上がるぞ」という期待感がないと消費は復活しません。消費が復活しないと最終的に経済はよくならないので、「どうやってマインドを持ち上げるか」を考える必要があります。

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