「政治とカネ」の野党追及にも岸田総理が平然としている「心の内」
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双日総合研究所チーフエコノミストの吉崎達彦が2月14日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。国会で審議が始まった所得税と住民税の定額減税について解説した。
6月減税にこだわっているのは、「6月解散」を狙っているため ~東京都知事選とのダブル選挙にすれば経費も浮く
所得税と住民税の定額減税をめぐる国会審議が2月13日、衆議院本会議で始まった。岸田総理が2023年10月に物価高対策の目玉として打ち出し、6月から1人当たり合計4万円が減税される。
飯田)新年度の税制改正法案です。
吉崎)1人当たり4万円で1回だけですので、どの程度、ありがたみがあるのでしょうか。一方では事務手続きが大変らしいのですよね。企業としては1回限りのために給与システムをいじらなければならない。しかも、そのうち1万円は住民税なのですよね。
飯田)そうですね。
吉崎)所得税3万円と住民税1万円が別のシステムになっている。こんなことをするくらいなら当初言われた通り、給付金にしておけばよっぽど楽だったし、いまごろ皆さんの手元に渡っていたわけです。なぜ6月まで待っているかと言うと、減税にこだわったからですが、では何のために6月減税にこだわったのかと言うと、やはり6月解散を狙っているからではないでしょうか。
飯田)タイミング的にはぴたりと合う。
吉崎)通常国会の会期末に解散すると、ちょうど7月7日に東京都知事選がありますよね。東京は大きいですから、ダブル選挙の形にすれば経費的にもいい。ただ、どうなのでしょうね。
1人当たり4万円の定額減税 ~「定額」というその場限りの減税
飯田)市区町村の事務が相当大変になると指摘されています。
吉崎)だから4万円の定額減税は筋悪なのです。給与でも定率であれば嬉しいですが、定額だといかにもその場限りという感じで、どうなのでしょうか。褒められない手口かなと思います。
飯田)よくボーナス等の一時金で払われると「消費に回らない」と言われますが、経済全体への効果も薄くなりますか?
吉崎)そうだと思います。「経済成長の果実を国民に還元する」と言っていますが、実はそれほど余裕はないわけです。実質成長は大したことがないけれど、名目が伸びているので、見かけ上は政府の歳入が伸びている。ただ、政府の歳入が伸びるということは、歳出も伸びるわけです。そんなに大盤振る舞いできるわけではありません。「入り口のところから、かなり難しい議論をしているな」と思います。
岸田総理の心中は、「俺はやることを全部やっている。有権者にもいつかわかってもらえる」
飯田)一応、国会審議がスタートしましたが、報じられるのはやはり「政治とカネ」の話です。今朝(2月14日)の新聞でも、「政治倫理審査会を開け」というような野党の要求が1面を飾っています。岸田政権はどうするのでしょうか?
吉崎)でも、ご本人の様子を見ていても、わりと吹っ切れている感じですよね。おそらく岸田さん本人の立場だと「俺はやることを全部やっている」という感じなのではないでしょうか。岸田政権になって2年余りですが、防衛3文書や防衛費増額、あるいは福島第一原発処理水の海洋放出など、やるべきことはやっている。それも、どちらかと言うと安倍さんが手掛けて、ご本人ができなかったことを次々にやっている。そして、岸田さんにとって大きな思い入れがあるのは、デフレ完全脱却宣言です。
飯田)デフレ完全脱却宣言。
吉崎)日本銀行の金融政策正常化が、おそらく4月ぐらいにあります。その上で政府が「デフレ完全脱却宣言」を出し、6月解散ができれば、「どうだ、俺は安倍さんが手掛けて、実行できなかったことを全部やっているだろう」と言える。支持率は低くても、「いつかわかってもらえる」という感覚があるのだと思います。
飯田)特に外交・安全保障に関しては、相当やっているような感じはあります。
吉崎)さらに一言を加えると、「俺が苦しんでいる問題は、ほとんど安倍派がつくった話だろう」と。裏金もそうだし、旧統一教会もそうです。安倍さんに恩義はあるけれど、結構やり残しもあるし、迷惑も受けている。全然恥じるところはない、とご自身は考えているかも知れません。
次期総裁選では「とりあえず女性党首で1回ごまかそう」という側面も
飯田)その辺りの評価が下るのが、4月28日の3補選だと言われています。
吉崎)2月4日には京都市長選挙と前橋市長選挙がありました。京都は与党候補がギリギリ勝ち、前橋は現職が負けました。あれを見ると、やはり4月28日もそれなりでしょうし、その結果を見れば「解散なんて何を言っているのだ。やめてください岸田さん」ということになると思います。
飯田)解散を打てないまま9月の総裁選が迫ると、「この人では戦えない」という話になる可能性もあります。
吉崎)7月を過ぎると、次の参議院選挙まで1年を切るので、今年(2024年)の夏ぐらいから皆さんリーチが掛かり、額に汗が浮かんできます。そうすると9月の総裁選は「フレッシュスタートで、ガチンコ・フルスペックでやりましょう」という感じになる気がします。
飯田)そのときに誰が出てくるのか。取り沙汰されているのは上川さんや高市さんなど、女性の名前が出ています。
吉崎)ここはチャンスですよね。自民党的には、こういうときこそ「とりあえず女性党首で1回ごまかそう」というところがあります。
新たな総裁が空気を一変する可能性も
飯田)フルスペックの総裁選なら各地を遊説して回るから、積極的に報道される。
吉崎)実際に総裁選挙で雰囲気が変わることは過去に何度もありました。
飯田)岸田さんが出てきたときもそうでしたね。
吉崎)岸田さんも、その前までは何となく「はっきりしない人」という感じでしたが、二階幹事長の首を切ったころから「すごいではないか」と空気が変わりました。だから別の人が出てきて、また空気を変えてくれるかも知れません。
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