黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「黒木瞳のあさナビ」(3月15日放送)に医療法人「優和会」理事長の松永平太が出演。長寿時代の地域医療について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「黒木瞳のあさナビ」。3月11日(月)~3月15日(金)のゲストは医療法人「優和会」理事長の松永平太。5日目は、いい最期の迎え方について---
黒木)松永先生は千葉県南房総市千倉町を中心に、高齢者を支える地域医療を実践されています。全国で高齢化が問題になるなか、今後はどんな取り組みに力を入れる予定ですか?
松永)生まれてきた以上、人は必ず死にます。しかし、その死がいま見えないのです。誰にでも必ず訪れる死を、もう少し身近な生活の場に持っていきたいと思っています。例えば最期を看取るために、おばあちゃんが家に帰ってくると、「あんなにふくよかだったおばあちゃんが、こんなに細くなっている」と思うこともありますよね。
黒木)帰ってきたおばあちゃんを見て。
松永)訪問入浴で一緒に体を洗ってあげると、実感として「死んでいっているのだ」とわかるのです。でも苦しそうではなく、穏やかであり、「このように最期を迎えていくのだ」と感じる。命は、おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん、そして孫へとつながって流れていく。そういう命の流れを、もう1度「自宅に戻って守る」ということを考えていきたいです。
黒木)命の流れを守る。
松永)本人も「みんな自分の最期に集まってくれてありがとう」と思えます。周りの方や友人も「あんな最期がいいね」と感じる。家族もできることを行い、関わってきたスタッフも一緒になって涙を流す。QOL(クオリティ・オブ・ライフ)という言葉がありますが、QOLの先にはQOD(クオリティ・オブ・デス)があります。それをできるだけ高めたいと思っています。
黒木)クオリティ・オブ・デス。
松永)臨終の場合、目を真っ赤にして涙を流しながらも、笑顔なのですよ。「やることをやった」という笑顔がいいのです。「死んだとしても生きている」という現象になる。10年経っても20年経っても、「おじいちゃんは幸せそうに死んでいったね」と思えることが大事なのです。
黒木)私も子どものころ、祖母が家で亡くなりました。子ども心に死を初めて体験し、そうやって死を教わるわけですよね。その意味では、自宅で最期を迎えることは大切なのかなと思います。
松永)年を取ると足腰が弱くなり、認知症にもなります。「人生の先輩である」という尊敬の念を持っているかどうかは、家庭によって違いますが、「長老を尊ぶ文化」が消えかけていると思います。長老を大事にする一家は、同じように命を大事にする。長老を軽んじる家族は、同じ仕打ちを自分の子どもから受けると思うので、もう1回「長老を尊ぶ文化」を復活させたいと思っています。
黒木)そういう活動を実践なさっているのですね。
松永)生きている以上は社会とつながる。人間は動く生き物、「動物」です。逆に動かなければ病気になるので、ゴソゴソと動く。地域のなかでもう少し死が見えて、「うまく生きていけるような方法を伝えていければ」と思っております。
松永平太(まつなが・へいた)/医療法人「優和会」理事長
■1992年、東京医科歯科大学を卒業後、民間病院へ入職。地域医療、看護ケアの大切さ、命を支えるケアを学ぶ。
■父親が倒れたことにより、1997年に父の診療所「松永医院」を継承。
■2000年、介護保健制度施行に合わせ「有限会社ハイピース」にて、訪問看護のための介護ステーション「そよかぜ」創設。2001年、医療法人社団「優和会」創設。
■以降、デイサービスセンター「あそぼ」を設立。社会福祉法人「おかげさま」創設。老人保健施設「夢くらぶ」、「夢ほーむ」、認知症対応型デイサービス「おかげさま」創設。
■2023年、看護小規模多機能「にこにこ」創設。
■2024年には、地域包括支援センターを創設予定。
■医療・介護・福祉を通じて社会貢献することを使命とし、「“いのち”を助け、“いのち”を元気にし、“いのち”を輝かせる」ことを経営理念として掲げる。いまの命を助けるのは医療者として当たり前であると考え、「患者の未来の笑顔を守ること」を使命とし、多職種協働を図っている。
番組情報
毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳