「丸亀製麺」などの経営で知られる株式会社トリドールホールディングスが17日、都内にて「トリドールHD 心的資本経営メディア説明会」を開催。人的資本経営をさらに深化させた独自の経営手法として、人の“心”を起点とする「心的資本経営」を始動すると発表した。

株式会社トリドールホールディングス代表取締役社長兼CEO・粟田貴也氏
「心的資本経営」とは、「従業員の“心”の幸せ」と「お客様の“心”の感動」を共に重要な資本ととらえ、どちらの“心”も満たし続けることで持続的な事業成長を実現する新たな経営思想のこと。「従業員の“心”の幸せ」と「お客様の“心”の感動」による好循環づくり、そして永続的な人材確保や離職率の改善、求人や教育コストの削減、お店の地元への地域貢献など、様々な価値を長期的に生み出し、グループ全体で持続的な事業成長を目指すという。
代表取締役社長兼CEOの粟田貴也氏は「働く人の幸せが1番最初にあって、その幸せそのものが店や商品に対するエンゲージメントを高める。それがモチベーションに繋がり、我々がもっとも大切にしてきた“食の感動体験”をお客様に提供できる。それにより(顧客の)店に対するロイヤリティが高まり、足しげく店に通っていただけるんじゃないかと。繁盛して上がったものは、また働く人に還元していく。この流れがもっとも大切」と考えを述べた。
従業員の“ハピネス”と顧客の“感動”を足した「ハピカン」という造語を作り、上記サイクルを「ハピカン繁盛サイクル」と名付けた同社。この経営方針は1年ほど前から社内で示しており、従業員離職率12.9%減少、顧客からの称賛件数24.5%増加(共に前年比)、売上収益は2,682億円(※2025年3月期連結業績)と過去最高のセグメントを記録し、さっそく効果が表れていることを明かす。
そして、この思想をより実態化するために、2つの制度を始動。従来の店長制度を刷新し、従来店長が担っていたオペレーション業務の一部を他メンバーへ移管。店舗で働く従業員一人ひとりの内発的動機を引き出し、店独自の感動体験の創造をリードする役割へとシフトした「ハピカンオフィサー制度」を導入。報酬制度も抜本的に見直し、ハピカン繁盛サイクルの実践レベルに応じて報酬が変動。最大で年収2,000万円を得られる制度を構築すると発表した。
もう1つは、従業員の子供を対象とした「家族食堂制度」。トリドールグループの店舗で働く従業員の家族(15歳以下) を対象に、所属するブランドの全国の店でいつでも無償で食事を楽しめる機会を提供。家族との団らんの時間づくりや従業員の子育て支援、職場への理解を深めるきっかけとして導入すると明かされた。
「年収2,000万円」というインパクトが強く、質疑応答ではそれにまつわる質問が多数。そこに到達するための具体的な指標を聞かれると、音声対話型AIを活用した独自指標「ハピネススコア」導入し「そのスコア、お客様の感動状況、お店の繁盛状況が基本的な評価軸として、それに伴う行動・結果をもとにステップを上げていく」とのこと。店長以外の従業員の報酬についても「お店のハピカンサイクルを回していくことが実現した際には、全体的に上がっていくと考えている」と話した。
最後に、粟田CEOは「この心的資本経営を、我が社の最高のエンジンにしたいと考えております。単なる哲学で終わらすのではなく、実態化していきたい。そうすることにより、新たなブルーオーシャンを築き、我々をはるかなる成長に導いてくれると考えています」と今後の展望も力強く語っていた。