日産復活はあるのか?【2】 識者の見方
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ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム「報道部畑中デスクの独り言」(第434回)
■3つの条件が満たされれば、日産復活は成る!
歴史ある追浜工場、日産車体湘南工場の車両生産終了方針など、工場整理、人員削減のリストラに舵を切った日産自動車。名門の復活は果たしてあるのか、展望していきます。

日産オフィス
「日産は復活すると楽観している。なぜなら、メニューがちゃんとあるから」
こう語るのは、自動車専門誌「マガジンX」の神領貢編集長です。もちろん前提はあり、自身のリストラ策をやり切ること、一緒に組んで「1+1が3にも4にもなるパートナー」を見つけること、取引先の金融機関におカネの面で当面支えてもらうことが条件になります。その上でこの3つが組めれば日産の先は明るいと分析します。
国内2工場の生産終了方針について、神領さんは早くから予想していたと言います。
「海外を集約化するとなると、日本も例外でいられないだろう。日産車体はいまでも生産台数が非常に少なく、(湘南)工場も古い。栃木か、九州か、追浜かという点では、やはり首都圏に近く、先の有効活用がしやすい。従業員の再就職先や転職先を世話していこうという流れを考えると、最終的に追浜がバランス的にも一番いいのではないか。日産創業の地というメンタルな部分はあるが」
企業規模についてはこのように話します。
「年間500万台、600万台のメガブランドでなくてもいい。日産は日産だよねということがわかるクルマ、そういうクルマを選りすぐって、これから世の中に出していければ」
再建策で日産は、2027年度に中国を除く生産体制を350万台から250万台に削減することを示しています。

マガジンX・神領貢編集長
■年内にも資本交渉?驚くべきシナリオ
「最短で今年のうちにも改めてホンダと日産が資本的な合流をしようということが表に出てくる可能性があるのではないか。予言のレベルだが、年内にもう1回、破談したのを結び直すということは起こり得る」
今後について、神領編集長は驚くべき見通しを示しました。資本提携については今年2月に“破談”となった両社ですが、次世代SDV(Software Defined Vehicle)や電動化に向けた協業は現在も続いています。少なくとも現場レベルでは両社はかなり接近していると言います。日産の開発関係者は2~3年前は「何でホンダとやらなきゃならないのか」と言っていたのが、昨年ぐらいから「いいモノをつくれるのなら誰と組んでもいい」という声が増えてきたそうです。日産の販売サイドも同様で、より疲弊している状況で、雇用の問題が担保されれば、「○○日産」のようにこだわることもないだろうと、神領さんは話します。
ホンダもしかりで、三部敏宏社長は就任から5年あまり。いったん舵を切ったEV(電気自動車)路線からの軌道修正など足元が揺らいでいる中、自身の体制の中で日産との合流に道筋をつけたかったようです。経営統合に向けた検討開始を発表した昨年末の記者会見も「年を越えてはだめ」と主張したのは三部社長だったと言います。
これに対し、日産は再建モードに入り、業績回復を狙います。スピード感の違いなどで統合協議は“破談”になりましたが、「皆でまとまって何かやる方がいい」という基本的な思惑は両社一致しており、「この流れはいまも変わっていない」と神領さんは話します。
ただ、提携の形態については事実上、ホンダの下に日産が入ると予想します。日産がホンダの傘下になるという見立てです。
「そうでないとホンダにとっては組む理由がない。日産のプライドを保ちつつ、役割もちゃんとお願いをしつつ、かじ取りはホンダが主導という形を担うだろう」(神領編集長)

日産・追浜工場入口
■自動車に代わる新しい産業の育成を
一方、神領編集長は日本の産業構造についても言及します。
「日本のブランドは日本市場が縮小する中、輸出もどこの国もあまり良しとしてくれない。自分の所のクルマは自分の国でつくってくれというのは、アメリカはそれを強くドラスチックに出してきたが、この流れは止まらない」
「日本もクルマ産業がかなり長い間屋台骨を背負ってきたが、クルマに変わる競争力のある産業を早く育てないと。その点で言うと、日産問題と今回の関税問題は少し先を予見させるような出来事がいま起きていると思わないといけないだろう」
日産は2026年に向けて商品投入がようやく本格化します。再建について依然、様々な説が飛び交う中、「予言」が適中するかどうか、そして、日産の再建、トランプ関税は日本の産業構造、「国のカタチ」と言ってもいいかもしれません、これを変えるきっかけになるのか、目が離せない年の後半になりそうです。
(了)