株式会社ニップン(以下、ニップン)が材料の提供や講師派遣で協力をしている視覚障害者向けのパン教室が、11月22日(土)、竹之丸地区センター(神奈川県横浜市)にて開催。その活動に感銘を受けたニッポン放送では、昨年も現地を取材。目の不自由な人たちを支援する番組『ラジオ・チャリティ・ミュージックソン』の放送を前に、今年も現地へと向かった。

KAMEの会が主催するパン教室の様子
横浜市で活動しているKAMEの会は、目の不自由な人たちへの支援をおこなっているボランティア団体。このパン教室では、食と健康を通じた社会貢献活動をしているニップンが材料の提供や講師の派遣をおこなっており、KAMEの会の代表でニップンのパン教室講師を務める兼重崇子氏を中心に、目が不自由な人も見える人も、一緒に笑顔でパン作りを楽しんでいる。

ニップンの『強力小麦粉 ゆめちからブレンド』『ふっくらパンドライイースト』
今回作るのは、クリスマスの定番スイーツとして知られるシュトーレン。まずは、前生地作りからスタート。前生地は、ニップンの『強力小麦粉 ゆめちからブレンド』と『ふっくらパンドライイースト』を使用して作る。
『強力小麦粉 ゆめちからブレンド』は、北海道産「ゆめちから」55%以上と北海道産小麦をブレンドした、パン作りに適した小麦粉で、もっちりとした弾力のある食感が楽しめる。『ふっくらパンドライイースト』は予備発酵不要の顆粒タイプであるため、粉に直接混ぜて使うことができる。
この工程では上記2つと牛乳を合わせて前生地を作り、ふっくらと美味しい仕上がりにしていく。

参加者たちの前で工程の説明をする兼重氏
各工程に移る前には、まずお手本として兼重氏が、大きな声で説明しながら作ってみせる。目が不自由な人にも伝わるよう、表現の仕方にも工夫をこらしながら、丁寧に1つ1つ言葉にしていく。

空いた時間には自己紹介タイム
入れて30分間発酵させるが、その時間を使って、全員で自己紹介をする。参加者もスタッフもそれぞれニックネームが書かれた名札をつけていて、お互い呼び合ったり出身地について語ったりしながら終始和やかなムード。目が不自由な人も見える人も分け隔てなく、アットホームな雰囲気の中で進行していく。

前生地ができたら本捏作りへ
前生地が発酵したら本捏作りへ。オーブンから出した前生地を台の上に出し、ニップンの『強力小麦粉 ゆめちからブレンド』、食塩、砂糖、アーモンドプードル、シナモン、牛乳を加える。押しつけるようにして生地と粉をまとめ、前後に押し引きするようにこねていく。

フルーツミックスやクルミを混ぜることで、シュトーレンらしい見た目に
その後はバターを塗り拡げていき、生地を指で千切って重ねるといった作業を繰り返す。何度もこねて柔らかくなったら、生地を持って台に叩きつけるようにする。
少し温めて生地の温度が29度になったら、生地を伸ばして、フルーツミックス・クルミ・アーモンド・カシューナッツを入れる。それを巻いたら再び指で千切って重ね、なるべく均一な状態になるよう全体になじませる。

感触を伝えるために参加者の手に生地を乗せる兼重氏
目が不自由な人には、生地を触らせることで感触を伝えるといった工夫も。度々触らせることで、硬かった生地が徐々に柔らかく様子が伝えられ、工程が進んでいくことを実感させることができる。

各テーブルを回って教えていく兼重氏
作業中は、兼重氏が、各テーブルを回って教えながら進めていく。分量は、兼重氏があらかじめ測って用意してきているので、参加者たちにとっては作業がしやすくなっている。
兼重氏のほかにも、KAMEの会のスタッフが常にサポート。初めての参加者とも他愛のない話をして、場に溶け込めるような空気づくりを大切にしながら進めていく。こうして本捏生地ができたら、50分間発酵させる。

ニップンの『めちゃラク レンジケーキミックス』『オーマイ スープ用パスタ』
本捏生地が発酵するまでの間は、ニップンが提供した商品を使って昼食作り。『めちゃラク レンジケーキミックス』は、牛乳や水だけで作ることができる優れもので、袋の中で混ぜられて、片付けも“めちゃラク”なレンジケーキミックスとなっている。『オーマイ スープ用パスタ』は、粉末スープに熱湯を注いで3分待つだけでできるスープ用パスタで、この日はそこに野菜を加えて、野菜スープとして楽しんだ。

本捏生地作りを進めていく参加者たち
発酵が終わったら、生地を2等分に分割して丸め、濡れ布巾をかけて10~15分程度おく「ベンチタイム」といった工程に入り、その後は成形をおこなう。麺棒や台に小麦粉をつけてくっつかないようにした後、空気抜きをして、麺棒でころころと転がして生地を伸ばす。そして製菓用のカードで形を整え、折り目がつきやすいように麺棒で真ん中を凹ませて、縦に半分に折って2つを並べる。ここでも兼重氏が、目の不自由な参加者にも伝わるように、手で生地を触らせながら教えていく。

本捏生地作りを終えたらホイロに移る
次に、生地を休ませて発酵させる「ホイロ」と呼ばれる工程に移る。ホイロを終えたら一度取り出し、ふっくらした状態の生地に、霧吹きで水をかけて湿らせる。

ホイロを終えたら180度で焼成
ホイロを終えて180度で焼成すると、美味しいニオイが漂ってきて、参加者たちも出来上がりに大喜び。ハケを使い、溶けたバターを塗る。

仕上げの粉をつけてシュトーレンの完成
冷ましたところでグラニュー糖と粉糖をつけたら、シュトーレンの完成だ。

初めてのシュトーレン作りを終えて笑顔を見せる参加者
シュトーレン完成後、パン教室を終えた参加者へ、この日の感想を聞いてみた。参加者の1人は、「みんなでわいわい話しながらできて、すごく面白かったです」と笑顔。工程が多く大変だったが、生地を触ったり美味しい匂いを感じ取ったりして、完成に近づいていく様子を感じ取りながら進められたことで、とても楽しくできたと語っていた。

シュトーレンの出来栄えに満足そうな表情を浮かべる参加者
パン教室に何度か参加したことがあるという参加者は、「相変わらず和気あいあいとしていて、とても癒やされました」と話した。出来上がったシュトーレンについては、「家族が喜んでくれるので、持ち帰って、クリスマスまで大事にいただきます」と嬉しそうな表情を浮かべた。

インタビューに答える兼重氏
最後は、兼重氏にインタビューを実施。教える際の工夫や苦労している点などについて話を聞いた。
―――まずは、今日の感想を率直にお伺いできますか?
兼重氏:今日も美味しく楽しくできて、良かったと思います。1人1人の方がとても個性的で、それぞれの個性を発揮して楽しませてくれるので、そこが特に楽しいですね。みんないい人なんですよ。
―――教える際に、特に工夫している点はありますか?
兼重氏:まず、声で案内するということを心がけていて、「こんな風に」「こうやって」ではなく、「手のひらの付け根に近いところで」「手前から向こうに押すように」など、言葉で表現するようにしています。
みなさんのところへ行って、生地を触っていただくということもしています。実際に触っていただくのが、一番分かりやすいので。「このぐらいの大きさにしてください」というのを伝えるために、クリアファイルを切り抜いて大きさの見本を作るなどの工夫もしています。
―――大変に感じる部分はありますか?
兼重氏:事前に分量を測ってくるといった事前準備と、あとは人集めですね。ただ呼びかけるだけではなくて、「誰が」「誰と一緒に」「どうやって来るか」というところまで考えておかないといけないので。「この人はこの力量なので…」とか「この人は初めてで…」とか、それによって席順を決めるというのも、結構考えるところですね。
―――最後に、今後楽しみにしていることはありますか?
兼重氏:あまり先のことは考えていないですね(笑)今後も、楽しい雰囲気でやっていけたらいいなと思います。私は基本、「人は人の役に立つのが嬉しいんだ」と思っているので、どの人も「役に立てて良かったな」と思えるような、そういう活動にしたいと思っております。

最後は、参加者とスタッフ全員で記念写真
パン教室終了後には、この日の思い出として全員で記念撮影。目の不自由な人も見える人も一緒に楽しむことのできるこのパン教室は、誰かの役に立つことができる喜びの笑顔であふれていた。





