注目度No1のレトロモダンな観光列車で瀬戸内海と桜を愛でる~JR予讃線・伊予灘ものがたり「八幡浜櫻編」(4,500円) 【ライター望月の駅弁膝栗毛】

By -  公開:  更新:

bl160407-1

今、鉄道のトレンドといえば、乗ること自体を楽しむ「観光列車」。

特に「食」をキーワードとした「レストラン列車」は全国各地に誕生しています。
中でも「乗りやすく」「もてなしがよく」「景色もいい」3拍子揃った乗りドクな列車があります。
その名は「伊予灘ものがたり」!
去年、全国紙の週末別刷りで観光列車ランキングの1位にも輝いたJR四国の列車で2014年から運行されています。

bl160407-2

昼下がりのJR予讃線・松山駅3番のりば。
アテンダントさんの笑顔に迎えられて、気持ちよく車内へ足を踏み入れます。
伊予灘ものがたり」は2両編成で、全車グリーン車指定席の普通列車。
普通列車グリーン券(980円)は、全国の「みどりの窓口」などで1か月前から発売されています。
この敷居の低さが「乗りやすい」理由でもあります。(このほかに乗車券が必要です)

bl160407-3

伊予灘ものがたり」の車両は1編成のみですが、走る時間帯によって4つのバージョンがあります。
早朝下りが「大洲編」、昼前の上りが「双海編」、午後の下りが「八幡浜編」、夕方の上りが「道後編」。
今回乗車したのは、松山13:28発、八幡浜15:52着の「八幡浜編」です。
ちなみに指定グリーン券を確保する際、窓口の方から「海側席にしますか、山側席にしますか?」と訊かれます。
海側席は海に向かって座れる席(7人分)と4人ボックス席×2、山側席は2人で向かい合う席が景色に配慮して一段高い位置に設けられています。

bl160407-4

指定された席へ足を運べば、ゆるキャラのみきゃんと共にランチョンマットがセッティングされていました。
伊予灘ものがたり」の目玉は、何といっても、車内で食べられる食事!
しかも食事のメニューが、4つのバージョンによって異なるのです。
食事をいただくには、乗車4日前までに「伊予灘ものがたり食事予約券」を購入する必要があります。
指定が取れれば、この食事券も全国の「みどりの窓口」などで購入することが出来ます。

bl160407-5

【メニュー】
えんどう豆と新じゃがのポタージュ
真鯛の桜塩ポワレ 才巻海老 春の伊予灘 潮の香り
蛤の香草黄身酢焼き 地鶏と百合根のパテ
ふきと媛王しいたけのコンソメ煮
ひじきと小海老の洋風かき揚げ
筍と媛ポークのトマトシチュー
鰆と菜ノ花 飾り寿司
門田特製 ローストビーフ
コーヒー

※お米は愛媛県産にこまるを使用

bl160407-6

伊予灘ものがたり(八幡浜編)」は定刻通り松山駅を発車、予讃線の伊予長浜経由で八幡浜を目指します。
「八幡浜編」の食事では、松山市内のフランス料理店「門田」が手がけたフレンチをいただくことが出来ます。
コチラのお店のシェフは、世界料理オリンピックでメダリストに輝いたこともある実力の持ち主なんだそう。
まずは温かい「えんどう豆と新じゃがのポタージュ」からスタート。
ご当地・愛媛を代表する焼き物、砥部焼の器にも胸がときめきます!

bl160407-7

3月から提供されているのは、春らしいフレンチ風の松花堂弁当(4,500円)。
シェフのイチ推しは、右手下の「筍と媛ポークのトマトシチュー」とのこと。
「ふれ愛・媛ポーク」は愛媛県産のみかん成分等を配合した飼料で育てられた愛媛のブランドポーク。
筍も松山近郊で採れた地元の食材を使うことで、ご当地性をアピールしています。
乗車券+グリーン券+食事券の合計でも「6,760円」なのは、レストラン列車随一のコスパ!

bl160407-8

この日はあいにくの天気でしたが、それでも伊予灘を眺めてのフレンチランチは最高!
予讃線は、伊予市の先で海沿いを走る「伊予長浜回り」と内陸をショートカットする「内子回り」に分かれます。
「内子回り」は松山~宇和島を結ぶ特急街道であるのに対し「伊予長浜回り」は閑散としたローカル線。
でも、車窓は圧倒的に「伊予長浜回り」が美しい!
「伊予灘ものがたり」は、のんびり走っても支障がない「伊予長浜回り」の路線の特性を活かした観光列車なのです。

bl160407-9

この「伊予長浜回り」のハイライトといえば「下灘(しもなだ)駅」。
旅好きの方ならピンときますよね、しばしば「青春18きっぷ」のポスターで登場する「あの駅」です。
私自身は、2010年11月以来の再訪となりました。
それゆえに人気も高く、ダイヤ改正ごとに「伊予灘ものがたり」の停車時間が拡大されています。
2016年3月のダイヤ改正以降「伊予灘ものがたり(八幡浜編)」は、14:15~23まで「8分間」停車します。

bl160407-10

乗車記念にオリジナルの「缶バッジ」と「ポストカード」が配られました。
このグッズ、乗車した4つのバージョンでそれぞれ異なるものが配られるそう。
しかも、今回乗車した3月31日の「伊予灘ものがたり」は「八幡浜櫻編」という特別バージョンで運行されました。
実はこの「櫻編」バージョン、3月31日から4月3日までの4日間に乗車した人だけが手に出来るレアなもの!
平日なら空いてるだろうという感覚で予約したのですが、とてもラッキーな列車に乗ることが出来ました。

bl160407-11

さらに!この「櫻編」だけの特別企画も・・・。
なんと、普段の「伊予灘ものがたり」は通過する「喜多灘駅」にも臨時停車。
伊予市と大洲市の境にある「喜多灘駅」は、ホームに桜がいっぱいある駅。
満開まではもう暫く時間がかかりそうでしたが、菜の花との共演もあって、下りただけで春満喫!
”公式発表”で「2分」の臨時停車の間に「伊予灘ものがたり」との花見です。

bl160407-12

桜の余韻を楽しみながら、食後のコーヒータイム。
もちろん、砥部焼のコーヒーカップでひと息です。

bl160407-13

伊予長浜駅を出ると伊予灘に別れを告げ、肱川に沿ってさかのぼっていきます。
建物の向こうに見えるのは「赤橋」こと「長浜大橋」。
現存する橋では、日本最古の「跳ね橋」として知られています。
今では毎週日曜日の午後1時から、観光向けに開閉を行っているそうです。
(参考・大洲市観光協会)

bl160407-14

そして「八幡浜編、道後編」だけが楽しめる景色が、伊予大洲駅を出た先にある肱川の鉄橋からの「大洲城」。
大洲城の天守閣は、史実に基づいて2004年に「木造」で再建されました。
周辺にある4頭の櫓は解体を免れたため、国の重要文化財に指定されています。(参考:大洲市観光協会)
ゆっくりと鉄橋を渡りながら、美しい城と見ごろを迎えた桜の景色を満喫!
「伊予灘ものがたり」の通過に合わせて、お城のスタッフの皆さんが幟を振ってくださいました!

bl160407-15

菜の花とのジョイントが楽しめるのが「伊予平野駅」。
「八幡浜編」はココで松山方面行の普通列車、および特急「宇和海」とすれ違うために長めの停車。
単線区間の旅は、この「交換」による長時間停車がたまらないんですよね。
この駅では、大洲のご当地パン「ミルクパン」の販売も・・・。
販売に先立ち小さい試食版を配ってくれたので、味見してから購入していた人も見受けられました。

bl160407-16

「伊予灘ものがたり・八幡浜櫻編」のフィナーレは、八幡浜のみかん山と桜並木のジョイント。
勿論、こういった景色のいい所では、ゆっくりと走ってくれます。
松山~八幡浜間を、松山13:24発の特急「宇和海15号」では46分で走破します。(内子回り)
同じ区間を「伊予灘ものがたり」は、遠回りしながら「2時間24分」かけて、のんびりと行きます。
でも食事をして、美しい景色を楽しんでいれば、この時間はあっという間なんです。

bl160407-17

目下、全国トップクラスの注目を集める観光列車「伊予灘ものがたり」。
次回は、折り返しの「道後編」へ!

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
「ライター望月の駅弁膝栗毛」
(取材・文:望月崇史)

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

Page top