4/23に静岡県の大井川鐵道で行われた乗車時間およそ11時間の「長距離鈍行列車ツアー」。
新金谷~千頭間を3往復する中、目玉の一つが途中駅の「長時間停車」。
1往復目後半には、地名(じな)駅で「12:28~37」まで9分間の停車がありました。
実はこの間に大井川鐵道名物・SL急行「かわね路」との交換(すれ違い)があるということで、お客さんのほとんどがホームへ・・・。
皆が待ち構える中、坂を登って「C10」形蒸気機関車の8号機に牽引されたSL急行が力強くやってきました!
C10形蒸気機関車による客車列車と、E10形電気機関車による客車列車同士のすれ違い。
互いに挨拶を交わしながらの交換・・・何となくホッとしますよね。
JRからは3月の「はまなす」の廃止によって、定期の「客車列車」が消滅してしまいました。
それだけに「客車列車」、ましてや「旧型客車」同士のすれ違いなど見られること自体が貴重!
昭和の頃は当たり前だった風景が、今やツアーという「商品価値」のあるモノになっているのです。
実は今年で、大井川鐵道で「SL」の復活運転が行われるようになって40周年の節目を迎えました。
そもそも、日本(国鉄)における蒸気機関車の列車「さよなら運転」は昭和50(1975)年のこと。
昭和50年12月14日、北海道・室蘭本線の室蘭~岩見沢間を最後のSL定期旅客運行列車が運行。
先頭に立ったのは「C57」形蒸気機関車の「135号」機で、この機関車は今、大宮の「鉄道博物館」に保存されています。
10日後の12月24日、同じ室蘭本線の追分~夕張間をSLさよなら貨物列車が運行され、国鉄からSLが姿を消した訳です。
(参考:安平町ホームページ)
その翌年に「大井川鐵道」ではSLの復活運転を始め、全国におけるSL動態保存の先駆けとなりました。
そんなSL急行の旅を演出してくれる駅弁といえば「汽車べんとう」(1,290円)。
「大井川鐵道」の駅弁は「東海軒」金谷工場(東海軒大鉄フード)での調製。
この駅弁は新金谷駅前の「ロコ・プラザ」内の売店で購入可能です。
やや大きめの包装には、大井川鐡道にいる「C56」形蒸気機関車の44号機が茶畑の中を走る様子がイラストで・・・。
ちなみにこの機関車、戦時中にタイへ渡り昭和54年に帰還を果たしたという強運の機関車でもあります。
売店には「SLの定番弁当」というキャッチが付けられ、お店の一番目立つ所に陳列。
「大井川鐵道」における駅弁の看板商品とも言える存在。
茶めしに桜えびなど静岡らしい食材がたっぷり入って、ふたを開けた瞬間から満腹間違いなしのボリューム。
静岡らしさで言えば”静岡の駅弁”に欠かせないのが、何といっても「わさび漬」。
「東海軒」の幕の内系駅弁には「田丸屋」さんのわさび漬が、ほぼもれなく付いて来ると言っても過言ではありません。
もう1つ、忘れてならないのが「黒はんぺん」のフライ。
「はんぺん」と言えば「白はんぺん」 が普通ですが、静岡で「はんぺん」といえば「黒はんぺん」のこと。
もちろん、私も小さい頃から当たり前にいただいてきた味で、サバやイワシなどが原材料となっています。
最近は煮込んだ「静岡おでん」の具としても有名ですが、我が家の家庭の味では「焼き」が記憶に残っています。
お店から買ってきた時は生(ゆで)でいただくことが多いですが、時間が経って火を通して食べようとなった時の「焼き」が醤油と合うんですよね。
さて、駅弁のお供にはどんな飲み物がいいのか?
定番といえば、やっぱり「お茶」!
日本を代表する茶どころの一つですから、お茶を飲まないというのはあり得ません!
しかも、今の時期は「新茶」のシーズンですので「ロコ・プラザ」にも地元のお茶屋さんが入って試飲が出来たりします。
新茶って、あの独特の苦みがいいんですよね。
一方、新金谷駅前には5年ほど前から少しお洒落なカフェ「This Is Cafe」が出来ています。
ココの目玉は何といっても「SLラテ」。
このお店自体は静岡県内に数店舗あるようですが「SLラテ」は新金谷のお店限定なんだそう。
カウンター脇には新金谷駅のジオラマをはじめ「ラテ」を写真で撮影できるポイントが設けられているのも有難いところ。
16:30ラストオーダーで17:00まで営業とのことで、今回は「長距離鈍行列車ツアー」の列車が1往復後、2往復目が発車する13:18~39まで「21分」の停車時間にお邪魔しました。
一方、ご当地ソフトドリンクといえば、千頭駅前の土産物店などで販売されている「ゆずジュース」。
千頭駅のある「川根本町」は「ゆず」が静岡県内一の生産を誇る特産品。
2年前には静岡県が全国・海外に誇る農林水産物ブランド「しずおか食セレクション」に認定されたといいます。
酸味が効いた素朴な味わいで「長距離鈍行列車ツアー」でなまった体が程よくシャキッとなりました。
やっぱり一杯・・・という人には、3年ほど前から販売されている「大井川鐵道ビール」。
大麦麦芽を100%使用、麦の香りと味わいを楽しめるラガータイプの地ビールです。
高級アロマホップをぜいたくに使って、絶妙のタイミングで投入することによって、ほどよい苦味を引き出したそう。
噴煙を上げて走るSLのラベルが貼られた瓶を、旧型客車の「センヌキ」を使っていただくのが一番いいかも。
大井川鐡道の主要駅売店などで冷えた瓶、常温の土産用、両方が販売されていました。
新金谷13:39に発車した「長距離鈍行列車ツアー」の2往復目。
駿河徳山では14:45~15:04まで19分停車して、今度は上りの「SL急行」と交換(すれ違い)。
40周年を迎える「大井川鐵道」のSLは、基本的に「毎日」運行しているのが素晴らしいところ。
加えて、近年は「きかんしゃトーマス」とのコラボレーションも大人気。
大井川鐵道・広報の山本さんは「若い世代がトーマスきっかけで、黒い機関車を知ってもらえたら・・・」と話しています。
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
「ライター望月の駅弁膝栗毛」
(取材・文:望月崇史)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/