秩父旅の〆はゆったり優雅に~西武 旅するレストラン 52席の至福「ディナーコース」(15,000円) 【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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全国各地の鉄道に誕生している「レストラン列車」。
多くは地方のローカル線における集客・観光の目玉として走っています。
しかし、ついに今年、首都圏の大手私鉄「西武鉄道」がこの「レストラン列車」に参入!
その名も「西武 旅するレストラン 52席の至福~fifty two seats of happiness~」。
4/17から池袋・西武新宿~西武秩父間で運行を開始した列車に、さっそく乗車してきました。

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西武 旅するレストラン 52席の至福」はその名の通り全52席、予約制の列車です。
池袋(西武新宿)発⇒西武秩父行の下り列車は「ブランチコース」(10,000円)。
西武秩父発⇒池袋(西武新宿)行の上り列車は「ディナーコース」(15,000円)。
西武鉄道のウェブサイトから予約、乗車10日あまり前に、行程表および当日の西武線1日フリーきっぷがセットになったチケットが簡易書留で届きます。
今回は「羊山公園」の芝桜を見た帰り、ゆったり「ディナーコース」を楽しみながら東京に戻ることに・・・。

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西武秩父駅の電光掲示にも「西武 旅するレストラン 52席の至福」と表示されました。
乗車の際は「西武線1日フリーきっぷ」で自動改札を通り、乗車ホームへと向かいます。
西武秩父発池袋行「ディナーコース」の場合は西武秩父17:42発、終点・池袋には20時過ぎの到着。
特急レッドアロー「ちちぶ」号では最速78分のところ、倍近い140分あまりをかけて走ります。
西武秩父駅での案内放送は、直前17:25分発の特急が出た後くらいから「3番ホームへ・・・」と始まります。

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発車10分ほど前、いよいよ乗車口に赤いマットが敷かれ、乗車が始まりました。
車両は元々、飯能~西武秩父間の普通列車用に使われていた2ドア・4両編成の4000系電車を改造して誕生。
そのうち、客室になっているのは「2号車」「4号車」。
案内状に記された車両のドアから、係員の方に行程表とチケットを見せて乗車します。
マットを踏みしめて車両に乗り込むと、ちょっぴりVIP感があっていいですよね。

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今回は「4号車」の指定された席へ足を運ぶと、既にディナーの準備が・・・。
フォークやナイフにまで入っているオリジナルのシンボルマークがなんとも可愛らしい!
従来のボックスシートを撤去して設けられた椅子の座り心地もよく、誰かの家にお邪魔した感じ。
それでいて、鉄道の「食堂車」みたいな雰囲気も、程よくあるのも嬉しいところ。
今はなき「北斗星」「トワイライトエクスプレス」のディナーをちょっぴり思い出しました。

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この4号車、まず目を引くのが「西川材の格子天井」!
西川材とは、飯能市・日高市・毛呂山町・越生町周辺で生産されるスギ・ヒノキ材の総称。
実は埼玉って工業、農業から林業まで、本当にポテンシャルの高い県なんですよね。
外装、内装のデザインを担当したのは、今をときめく建築家の隈研吾氏。
ちなみに西武池袋線の始発駅・池袋に去年出来た、新しい豊島区役所も隈研吾氏ですね。

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4号車は「2人席」が5卓(10人)、「4人席」が4卓(16人)の造り。
「4人席」の方が若干ゆとりを持たせていて、卓と卓の間が荷物置き場となっているスペースも。
なるほど!天井のインパクトは、網棚を撤去したことで生まれたものだったんですね。
上着などは、乗車の際にアテンダントの方が「お預かり」してくれます。

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まずはメニュー表から・・・。
和洋中の著名シェフが、埼玉県の食材を中心に、埼玉県産の「牛肉」をテーマにコースをアレンジしているとのこと。
スゴイのは誰か1人のプロデュースではなく、有名店4人のコラボレーションによって生まれていること。
なお、隅に刷り込まれたロゴマークは「秩父」の自然をトランプの柄に見立てたものだそう。
このようにバラしたり、4つくっ付けたりして使われています。(アートディレクター・古平正義氏デザイン)

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さあ、17:42の発車を前にウェルカムドリンクのスパークリングワインが注がれました。
だんだんテンションが上がってきますね!
「コースターはどうぞお持ち帰りください」との案内も。
このコースター、ゴム製で滑りにくくなっており、お土産になるのはとても嬉しい感じ。

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発車に合わせて乾杯!
西武 旅するレストラン 52席の至福」は2人からの予約。
今回は妻に頼んで、一緒に乗って貰いました。
普段、取材は1人でやっているのでなかなか慣れないものです。

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西武秩父駅の駅長さんの見送りを受けて発車します。
他のどの列車よりも、発車の衝撃を少なくしようとした感じの、ソロ~りとした動き出し。
ワイングラスのワインがこぼれるようなことはありません。
西武秩父線は単線なので、各駅でポイントの通過がありますが、ココも丁寧な走行をされていました。
このあとの各駅でも列車の通過に合わせて駅員さんが出てきて、手を振って下さっていたのも印象的。

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アミューズ
温かい海鮮茶碗蒸し(La BOMBANCE(ラ・ボンバンス) 岡元信シェフ)

いきなり茶碗蒸しから来ましたか!
あったか~い茶碗の上でウニがキラキラ。
コレ、電車の中の出来事、しかも西武線の電車の中で、こんなことが起きちゃってるんです。

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実は「2・4号車」の客室車両の間にある「3号車」は丸々キッチン車両になっています。
しかも「オープンキッチン」なので、料理を作っている様子を見ることが出来るのです。
元々、4000系という「電車」を改造したこともあり、電気を使った調理機能をフル活用できるのも利点。
だからこその「温かい料理」なのです。
さあ、次の料理の準備が進んでいますよ!

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前菜至福の12種類の前菜(4人のシェフによる)
こんにゃくオランダ煮
鶏のチーズこがね焼き
パイナップルスモークサーモン奉書巻き
笹麩茶巾
さつまいも甘露煮
サーモンチーズボール
大黒本しめじのピクルス
パテ・ド・カンパーニュ
ロースハム
くらげ頭の甘酢漬
長芋湯葉巻き カニフカヒレあんかけ
口水鶏(よだれ鶏)

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アルコールは有料でオーダーすることが出来ます。(ソフトドリンクは無料)
今回は白ワインの「秩父ブラン 甲斐ブラン シュール・リー」をボトル(3,800円)で頂きました。
秩父市蒔田の上原農園で収穫された白ワイン専用種「甲斐ブラン」から、兎田ワイナリーが作ったアルコール12%、辛口の白ワインとのこと。
ラベルに2015という文字が見えるので去年収穫されたモノを使っているようですが、とても飲み口のいいワインでした。
なお、ドリンクは19:30ラストオーダーで、現金かPASMO(Suica)決済となります。

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日が暮れゆく秩父の山並み。
「西武 旅するレストラン 52席の至福」は正丸峠を心地いいスピードで駆け下っていきます。
国道299号に連なるクルマの列を横目に、ハンドルを握るお父さんの疲れた表情をのぞきこみながら、コチラはワイングラスを傾けてスイスイ!
まさに、これこそ「52席の至福」!
ホラ「北斗星」の個室で足を伸ばしながらぎゅうぎゅう詰めの京浜東北線の電車を抜いていくのを見る・・・あの感じに近いですね。

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スープ
CHICHICON~武州和牛のWコンソメ(Restaurant La Fins 杉本シェフ)

付添はミートパイ。
スープそのままで楽しんでもよし、パイを浸していただいてもよし。
これも素晴らしいお味。

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再びオープンキッチン・・・メインの準備が進んでいます。
こんな料理の匂いが立ち込めた列車、初めてかも!?
料理が出せるのは、西武線の線路状態がイイのも有利な条件。
特に秩父線は昭和44(1969)年開通の新しい路線で、あまりキツイカーブが少ない作り。
加えて無駄な揺れが少なく、保線の皆さんの頑張りがあるからこその「レストラン列車」であるように思います。

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もう1つの客室「2号車」は「柿渋和紙の天井」となっています。
埼玉はユネスコの世界無形文化遺産にも登録された「和紙」作りもある県。
車内の雰囲気は、コチラのほうが若干落ち着いた雰囲気かも。
ただ「2号車」はモーターがある車両、静粛性では「4号車」がいいかも。
車内では、練馬をテーマに唄い続けている「谷修(たに・しゅう)」さんのアコースティックライブも行われました。

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メイン
里芋リブロース巻黒酢煮込みフカヒレ添え(「海鮮名菜 香宮」篠原シェフ)

肉料理によくあるデミのように見えて、実は黒酢というウラのかき方が好き。
サトイモが優しく包まれ、フォークとナイフの入れ方まで優しくなっていきます。
口の中でとろけだせば、自然と気持ちまで優しいものになっていきます。
「サトイモと牛肉ってこんなに合うんだ!」と思ってから「そうか、日本には芋煮というものがあった」と気付く次第。
食の世界は、アレンジ一つでまだまだ奥深い!

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ご飯
鯛ご飯 狭山茶漬け(つきぢ田村 三代目 田村シェフ)

勿論、このままでもいいんですが・・・。

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狭山茶をかけ、茶漬けにしてサラサラッといただきます。
ここまで肉が強かった分、サッパリと〆られるのが嬉しいですね。

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デザート
ごまふぇ(La BOMBANCE(ラ・ボンバンス)岡元シェフ)

ゴマの風味と思いきや、口に運ぶと珈琲の味わい。
車内でもびっくりしている方が多かったように見受けられました。

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お飲み物
紅茶(よこぜの美味しい紅茶)

秩父の一つ手前・横瀬町では、2013年から紅茶の栽培を始めたそう。
飲み物はこのほかコーヒー、カフェラテ、カプチーノ(ネスカフェ レギュラーソリュブルコーヒー 「挽き豆包み製法」使用)が選べます。

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列車は飯能で進行方向が変わって「4号車」を先頭に池袋を目指します。
途中、レッドアローも停まる所沢は通過して、保谷と東長崎で長めの時間調整。
下り電車から降りてくる人たちが、物珍しそうに覗き込んでいくのも、まだ走り始めて日が浅い証拠。
その中、アテンダントの方から「今日はご乗車ありがとうございました」のご挨拶と共にお土産が・・・。
どんなお土産が入っているのか?

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あの「よこぜの紅茶」を使ったバターカステラが入っていました!
しかも、秩父の老舗、秩父餅などでも知られる「水戸屋本店」によるもの。
後で家に帰っていただきましたが、フワッとした食感、紅茶の香りがとても上品でした。

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アテンダントさんからは、卓ごとに手書きのお礼メッセージも・・・。
こういうのって手書きにするだけで、ホント心温まりますよね。
西武の電車に乗って「手書きのありがとうメッセージ」をもらえるのもまた「52席の至福」。
最近の「西武線」って、いい意味で「攻め」の姿勢を感じられていいんですよね。
西武沿線で20年以上暮らしていますが「次に何を仕掛けてくるか?」本当に楽しみです。

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夜8時過ぎ、池袋駅の7番ホームに到着。
あゝ、現実に戻されていく・・・。
秩父から池袋まで2時間20分あまり、美味しい料理と共にあっという間でした。

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アテンダントさんが笑顔でお見送り。
今回乗車した4/29(金)は「西武 旅するレストラン 52席の至福」が運行を始めて、まだ3度目の週末。
おそらく試行錯誤な点もあったかと思いますが、あまりそれを感じさせず、よくシミュレーションを積んで今回の運行に臨まれた様子が伺えました。
地方の「レストラン列車」ではやや素朴な所がウリだったりするんですが、そこはさすが東京・山手線の駅を発着する「レストラン列車」。
”大手私鉄が本気出すと違うぞ!”そんな矜持のようなものも感じることが出来ました。

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「西武 旅するレストラン 52席の至福」は既に6月分までが完売となっており、7月以降は別メニューでの展開が予定されています。
ブランチ10,000円、ディナー15,000円という価格帯ですが、1日丸々西武線に乗り放題で「いいご飯」も食べられるとなれば、かなりお得だと思います。
今の時期なら朝イチで三峯神社へお参り、午後「羊山公園」で芝桜を見て、最後「52席の至福」で〆る旅も出来そう。
しかも西武秩父駅には、温泉入浴施設も誕生予定で、この辺りの組み合わせも面白そう。
いつもの通勤電車が走る線路で、いつもとちょっと違う体験・・・すごく楽しいです!

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
「ライター望月の駅弁膝栗毛」
(取材・文:望月崇史)

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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