函館本線・落部(おとしべ)駅から乗り込んだ「キハ40」は9:29発の普通列車函館行。
3/26までこの列車は、長万部→函館間をおよそ2時間で走る快速「アイリス」として運行されてきました。
「アイリス」は、国鉄末期まであった瀬棚線直通の急行「せたな」の生き残りといわれてきた列車。
「銀婚湯」のチェックアウト時に使える列車だったものの、新幹線開業に伴うダイヤ改正でひっそりと普通列車に格下げされました。
普通列車・820Dとなってからは初めての乗車でしたが、落部→函館まで2時間あまり、なかなか旅情のある列車になりました。
JRから委託を受けた地元の年輩の方に手作業で発券してもらった乗車券を手に乗り込むと、車内はようやく10数名になったくらい。
乗車したのが日曜だったせいかもしれませんが、平日ならもう少し病院通いの年輩の方がいるのかもしれません。
まずは森へ向かって、進行左手に噴火湾、その向こうに駒ヶ岳を望みながら進みます。
「北斗星」「トワイライトエクスプレス」があった時代、この噴火湾を眺めながら食堂車で朝食をいただくのが定番でした。
一時期「北斗星」が落部駅に運転停車(客扱いをしない停車)して、後続の特急「スーパー北斗」を先に通していたこともありました。
さて、快速から普通に格下げとなって増えたのが「停車時間」。
まずは、森まであと2駅の石谷(いしや)駅で9:42~53まで「11分」の小休止。
キハ261系が充当された後続の特急「スーパー北斗4号」に抜かれました。
「森まで逃げ切ってくれたら特急に乗り継げるのに・・・」と思いたくなりますが、このもどかしさも普通列車ならでは。
ちなみに石谷では下りの特急「スーパー北斗5号」ともすれ違うので、ホームに出る場合はくれぐれも安全に注意を!
特急通過後、石谷を発車した820Dは、およそ9分で森に到着。
森では普通列車とのすれ違いもあり、10:02~13までまた「11分」停まります。
「銀婚湯」でいっぱい朝ご飯を食べてきたので、さすがに2日連続で「いかめし」とはならず・・・。
でも、北海道キヨスク定番のお茶「緑茶うらら」が欲しくなって、無駄に改札を出たりします。
ニセコ山系の水を使って低温でじっくりと抽出、茶葉の味と香りを引立てたという飲み口がいいペット茶なんですよね。
森まで噴火湾沿いの平らな線路を走ってきた820Dですが、森からは快速時代同様「駒ヶ岳回り」の山岳路線に入ります。
元からの函館本線である「駒ヶ岳回り」は勾配がキツイことで有名な区間。
国鉄時代からの「キハ40」は大きなエンジンの唸りの割に、あんまり進んでいないのはご愛敬。
快速の頃は停まらなかった姫川駅にも停車、正面に駒ヶ岳を望みながら、続く山道にひと息入れて再出発。
思わず「頑張れ~!」と声援を送りたくなる非力っぷりこそ、この「キハ40」旅の楽しみ方の1つです。
お隣の東山駅までは、さらに10分かけて登っていきます。
元々、すれ違いのための信号場として開設され、昔はスイッチバックがあったとのこと。
いわゆる「秘境駅」の1つに数えられる駅で、当然のように乗降客もいないのですがちょいと長めの停車時間。
まるで切れてきた息を整えるかのような「キハ40」の走りっぷりに、ますます愛着が生まれてきます。
ようやく発車して振り返れば、駒ヶ岳を望む木製のホームが、これぞ「北海道の無人駅」という雰囲気でした。
820Dは森から25分かけて、10:38にようやく駒ヶ岳駅に到着。
この列車、駒ヶ岳で10:38~49まで、この日3回目となる「11分」の停車をします。
なんと820D、所要時間1時間強のうち「33分」、およそ半分が停車時間という”笑っちゃうくらい”遅い普通列車なのです。
しかも、こんなに休んでいるのに山登りの力も出ないという「キハ40」、哀れみを通り越して愛おしいくらい!
10:45過ぎ、函館からやってきたキハ281系の特急「スーパー北斗」が7両編成で悠々と通過していきました。
駒ヶ岳駅から大沼公園駅にかけては下りとなるため、今までの鈍足がウソのように快調に坂を下っていきます。
駒ヶ岳駅を出てすぐ(下りの場合は手前)大沼寄りの区間が、函館本線では駒ケ岳を最も間近に見られる区間。
3月に通った時は、まだ雪がたくさんありましたが、すっかり雪も消え、畑が始まっていました。
北海道の鉄道の車窓は『畑』というのも、かなり重要なポイント。
特に美瑛の丘を望んで走る富良野線の車窓は、まさに「畑」が美しいので、これはまた機会を設けて紹介しましょう。
大沼の玄関口となる大沼公園駅でやや多めの乗車があって、ようやく1両の車内が埋まってきた820D普通列車。
続く大沼駅から仁山(にやま)駅にかけては、小沼の畔を走ります。
この小沼越しの駒ケ岳も函館本線の車窓では外せません。
在来線の旅は時間がかかりますが、トンネルが少なく、車窓が移り変わる楽しみがあります。
それゆえ「新幹線の先」にある”普通列車の旅”が面白いんです。
新函館北斗まであと1駅となる「仁山」では、再び4分の停車。
もう「11分停車」を3回繰り返した後では、4分の停車が大したことなく感じてきます。
仁山駅も、函館本線有数の急こう配、20パーミルの坂にある駅として有名。
標高が高い分、大型連休の終わりでも、まだ駅周辺の「桜」が楽しめました。
普通列車でないと「駅の景色」には、気づくことはできないもの。
ゆっくり走って土地の空気を感じられる「820D普通列車の旅」、また「銀婚湯」と一緒に楽しみたくなりました。
この仁山では、東京6:32発の「はやぶさ1号」と接続するキハ261系特急「スーパー北斗9号」と交換。
実はこの区間、新函館北斗駅が出来たことで下りの特急列車が走るようになった区間でもあります。
函館本線の七飯(ななえ)~大沼間には、通称「藤城線」という上り勾配を緩和するための別線があります。
従来、札幌行の下り特急はこの勾配が緩い藤城線経由で運行されていました。
しかし旧来の勾配がキツい路線にあった渡島大野駅が「新函館北斗」になったことで、特急が全て新函館北斗・仁山経由に・・・。
新函館北斗から1駅、元はスイッチバックもあった駅とのことで、ちょっと訪れてみたい駅かも!?
そんな仁山駅のお隣「新函館北斗」の新作駅弁をまたまた紹介。
八戸「吉田屋」がオープンさせた「BENTO CAFE 41°GARDEN」調製の「函館浪漫ハイカラ弁当」です。
北海道の山海の幸を程よく詰め合わせた駅弁。
「吉田屋」さんは魚介ガッツリ!肉ガッツリ!という駅弁が多い中、ひと捻り入れてきたのが興味深いところ。
「BENTO CAFE・・・」のおしゃれな雰囲気にも似合いそうな弁当です。
ご飯は定番の蒸しうにのうにご飯、白醤油漬けサーモン+いくらの酢飯、そして意表を突いたおかかご飯!
目いっぱいイカとかウニを食べた後に、この「おかかご飯」が現れると、何となくホッとする気がします。
おかずに塩味のから揚げが入ったのも面白いところ。
加えて定番の煮物やトマトとブロッコリー、ポテトサラダも登場して、バランスが取れた構成にも・・・。
普通の幕の内にせず、懐かしさとお洒落な雰囲気を両立させたところが「ハイカラ弁当」たる所以でしょう。
たぶん、駅弁大会等ではあまり目立たたないと思いますが、実際に食べるならこういう駅弁のほうがいい感じ。
小分けの幕の内駅弁ですと、他の駅弁との共用だったり、ザックリとした造りのものも無いわけじゃない。
でも「吉田屋」さんは、ちゃんとサーモンにも炙りを入れてる!
このプチ焦げ目を入れるひと手間に気づいた瞬間から、弁当のことが一気に好きになりますよね。
”駅弁なんてコスパ的に・・・”みたいなことを言う人がいるかもしれませんが、素材と手間がちゃんとかかっているんです。
駅弁は”愛でてから食す”のも大事です。
ハイカラな雰囲気も漂う金森倉庫、その向こうにそびえる函館山。
次回、素晴らしい夜景と共に”愛でて食べたい”駅弁もご紹介!
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
「ライター望月の駅弁膝栗毛」
(取材・文:望月崇史)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/