日本最大級の鉄道イベント「グランシップトレインフェスタ2016」②~静岡駅「幕の内弁当」(800円) 【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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静岡で行われた日本最大級の鉄道イベント「グランシップトレインフェスタ2016」。
メイン会場はJR東静岡駅前の「グランシップ」ですが、「サテライト会場」として5/14.15の両日「静岡鉄道」の長沼車庫も公開されました。
「静岡鉄道」静岡清水線は、静岡市内の新静岡~新清水間を走るおよそ11キロの路線。
ほぼJR東海道線・静岡~清水間と並行していますが、JRが4駅に対し、静鉄は全15駅とこまめに停まる「地域の足」となっています。
ワンマン運転2両編成の電車が日中6~7分間隔で運行され、地方都市では屈指の「便のよさ」を誇ります。
オリジナルICカード「LuLuCa」もあり、関西私鉄の「PiTaPa」に加盟しているため「Suica/PASMO」「TOICA」などの交通系ICカードも利用可能です。

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首都圏の中古車両が活躍することが多い地方の私鉄にあって「静岡鉄道」はオリジナル車両を走らせているのも特筆すべき点。
長年、1000形電車(1枚目画像左)が活躍してきましたが、今年およそ40年ぶりの新車となる「A3000形」がデビューしました。
既に1編成が営業運転に入っており、この日はその1編成が「トレインフェスタ」に合わせて長沼車庫で展示されたという訳です。
「A3000形」は今度数年かけて1000形を置き換えていくことが報じられており、新しい「静岡鉄道の顔」となる車両。
さあ、果たしてどんな車両なのか、さっそく中へ入っていきましょう。

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LED照明の白めの灯りに照らされ、さすが今どきの電車という雰囲気。
1両・全長18mの車体に3ドアロングシートが並び、ドア上には細長い液晶の案内モニターを設置しています。
ちょっと面白いのは「つり革」の形で、丸型と三角をミックスしたような2段構造になっています。
公式発表では新型のつり革だそうで、身長はもちろん、好みや気分で上下どちらでも握ることが出来るようにしたとのこと。
車いす・ベビーカースペースはもちろん、通勤車両ながら車内には4台の防犯カメラも設置されています。

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「A3000形」は「shizuoka rainbow trains」と銘打たれ、最初の7編成は「レインボーカラー」で登場することが発表されています。
最初に登場したのは、富士山にちなんだ「ブルー」で、今後どんなカラーリングの順番で出てくるか興味深いところ。
運用される時刻表などは「静岡鉄道」の公式サイトで随時発表されています。
また、この車両、横浜の「総合車両製作所」が製造した新しいステンレス車体のブランド「sustina(サスティナ)」を私鉄で初めて採用。
既にJR山手線の新型車両・E235系電車などで採用されており、今後、首都圏の通勤電車にはこのブランドが増えていくものとみられます。

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さて、静岡駅を拠点に駅弁を販売しているのは「東海軒」。
明治22(1889)年、静岡駅の開業と共に「加藤弁当店」の名前で創業。
最初の駅弁は、1個5銭のおにぎりに沢庵を添えて竹の皮で包んだものだったといいます。
明治時代に早くも、今も続くロングセラー「鯛めし」というヒット商品が誕生。
シンプルで長く愛される商品が多いのも「東海軒」の駅弁の特長です。

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そんな静岡駅弁・東海軒で常に人気No1を誇るのが、昭和12(1937)年生まれの「幕の内弁当」。
かつて東京~大垣間の夜行普通列車「大垣夜行」があった頃は、深夜の静岡駅ホームでこの駅弁が売られたことでも有名です。
「幕の内」って、駅弁を選ぶのに困った時に”消去法”で選ぶ人も少なくないと思います。
でも、静岡駅・東海軒の幕の内は、積極的に「選びたい」幕の内!
各地で昔は「特殊弁当」と呼ばれたご当地名物駅弁が主流となる中、「普通弁当」である幕の内を”推し”に出来るのは「東海軒」だからできる芸当。
私自身、静岡駅に来たらこの駅弁を買わずに帰るのは勿体ないと思ってしまう定番の味です。

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一般に「幕の内弁当」の三種の神器として挙げられる「焼魚、蒲鉾、玉子焼」、いい幕の内はココを絶対に外して来ません。
東海軒では門外不出・秘伝の技で作り続けられているという「サバの照焼き」は塩加減、脂のノリとも絶妙!
また、玉子焼が鶏のひき肉入りの「親子焼」になっているのも面白いところです。
そして、これぞ「静岡の駅弁」ともいうべき「わさび漬け」も存在感たっぷりで、白いご飯のお供を務めます。
これが発売当初からほとんど「変わってない」という点にも驚きです。

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静岡「東海軒」をはじめ、浜松「自笑亭」、富士「富陽軒」、沼津「桃中軒」、伊東「祇園」とJR線では5社が頑張る静岡の駅弁。
加えて伊豆急行線・伊豆急下田駅、伊豆箱根鉄道・修善寺駅、大井川鐵道・新金谷駅、天竜浜名湖鉄道・天竜二俣駅などでもオリジナルの駅弁が存在。
ぜひ「駅弁王国・静岡」で、鉄道の旅と共に、明治から守り受け継がれている駅弁という「食文化」を舌で感じてみてはいかがでしょうか。

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
「ライター望月の駅弁膝栗毛」
(取材・文:望月崇史)

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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