ハワイアンブルーの電車で南伊豆産の豪華伊勢海老を食べる!~伊豆急100系電車で行くレトロ電車ぶらり旅(下り編)「伊勢海老弁当」(4,900円・ツアー料金) 【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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昭和36(1961)年生まれといいますと今年で55歳。
55歳といえば昭和の頃なら定年、今でもこれからの年齢の重ね方を考える時期なのかもしれません。
実は鉄道車両の世界はもっとシビアで、30~40年で廃車になるのが一般的。
半世紀を超えた現役車両はほんの一握りで、様々な偶然と鉄道会社・ファンの愛情があって初めて走ることが可能となります。
今回から暫くの間、鉄道会社とアツいファンに支えられている、奇跡的に残った「1両の電車」にスポットを当てていきます。

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ハワイアンブルーの塗装に身を包んだ伊豆急行「100系」電車。
昭和36(1961)年、伊豆急行線・伊東~伊豆急下田間の開業と共にデビューした伊豆急のオリジナル車両です。
まだ電車といえば「こげ茶色」が普通だった時代、その斬新なカラーと広々とした窓は、大きな衝撃をもって迎えられたといいます。
しかも普通車両だけでなく、国鉄に直通するために作られた私鉄唯一のグリーン車や軽食堂車なども存在。
東伊豆のシンボル的な電車として愛されてきましたが、平成14(2002)年、伊豆急「100系」は惜しまれながら全車”引退”となりました。

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引退から9年あまり、平成23(2011)年に伊豆急行は開業50周年を迎えます。
この50周年記念事業として、再び日の目を浴びることになったのが「100系」電車でした。
実は「100系」電車のうち「クモハ103」の1両だけが両方に運転台がある重宝さから「事業用車両」として伊豆高原の車両基地に残されていたんです。
関係各社の協力のもと、大規模な修繕を受けて、誕生から50年にして奇跡の復活を遂げました。
以来、団体列車を中心に大事に使われており、修繕の際に張り替えられた青いシートもピカピカのままです。

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今回は伊豆急行が主催した「伊豆急100系で行くレトロ電車ぶらり旅」という日帰りツアーに参加しました。
2年ほど前から定期的に行われていて、今回が第4弾。
各駅停車でも40分とかからない伊豆高原~伊豆急下田間を「100系」電車で行ったり来たりしながら、およそ2時間かけて「乗り鉄」三昧。
下り編と上り編の2コースがあり、フルで楽しめば東伊豆の海を眺めながら「伊勢海老弁当」を食べ、沿線ゆかりの神社仏閣にお参り、伊豆の素晴らしい温泉にも入れてしまう「伊豆満喫」のツアーなのです。
第4弾は「5/14,28,6/4,11,25」の計5回開催予定で、1回の定員は30名、この日も下り編はほぼ満員のお客さんを乗せて10:49、伊豆高原から下田に向けて出発しました。

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「100系」の車内には、開業当時の復刻版とみられるレトロな中吊り広告も・・・。
昭和36(1961)年の「伊豆急行」開業前には、文化放送で開業特番が組まれていたようですね。
右側の「スコールカー」とは、今のサントリーがスポンサーになって作られた私鉄唯一の本格的な「食堂車」。
ただ、当時は国鉄の熱海まで乗り入れることが出来ず、伊東以南での運用となり、後に普通車に格下げとなってしまった悲運の車両でもあります。
この夏、JR東日本が「食」がメインの観光列車「伊豆クレイル」をデビューさせますが、「スコールカー」から半世紀以上経ってようやく伊豆急の先進性に時代が追い付いてきたようにも感じます。

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伊豆高原から1駅、伊豆大川(いずおおかわ)で早くも10分以上の停車。
早々に伊豆急オリジナルでは最古の「100系」と最新の「アルファ・リゾート21」とのすれ違いです。
最近の観光列車やツアー列車は「長時間停車を楽しむ」のが1つのトレンド。
発車時刻まで思い思いの角度から列車の写真を撮ったり、駅構内を散策して風景を楽しんだり・・・。
あるいは乗務員の方に列車運行のウラ話を訊くなど、鉄道趣味が細分化される中、自分の好きなスタイルで「鉄道」を楽しめるようになっています。

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「レトロ電車ぶらり旅」ツアーの面白いところは、鉄道趣味で完結せずに、地元の方と交流の時間を設けているところ。
第4弾の下り編では、沿線の伊豆熱川駅が最寄りとなる「熱川ハーブテラス」のご主人が「100系」電車に乗って「ハーブ」の出張解説。
「ハーブ」ってちょっとオシャレな女の人がメインのターゲットだと思っていたら、ご主人によると実は今、年配の人にも大注目なんだそう。
TVの生活情報番組をきっかけに、ハーブの香りと健康性が指摘されたことで、世代を超えて話題を呼んでいるというんですね。
望月はハーブに全く下知識がなかったのですが、ご主人の熱弁に思わず聞き入ってしまいました。

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この日はミント、ローズマリー、ステビア、ルッコラなど、身近なハーブを実際に配っていただき、香りを楽しむことが出来ました。
ミントは口にするとまさに「ガム」の味ですし、ステビアはスポーツ飲料のような甘さがホントにあるんですね。
実は野菜でおなじみキャベツも、出てきたときは「ハーブ」だったといいますから驚きです。
「レトロ電車」ということで年配の人も多めだったんですが、結構皆さん聞き入っていた様子。
おしまいは「じゃんけん大会」となり、今が盛りのハーブ園のお花から花束プレゼント・・・まさかまさかの望月、勝ち抜いて花束『ゲット』です!

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ハーブのお話を聞きながら「100系」電車は、伊豆高原→片瀬白田→伊豆大川→伊豆稲取(貨物線)→片瀬白田と「東伊豆の海岸線」を行ったり来たり。
海岸線を3回走ることで、絶景を思う存分満喫してもらおうというのがこのツアーの趣旨の1つです。
その中にあって意外と知られていないのが「伊豆北川(いずほっかわ)」駅のホーム。
実はココ、いろんなドラマの「撮影スポット」なのです。
今年正月の「相棒」でも出てきましたし、少し前の戦隊シリーズ「烈車戦隊トッキュウジャー」でも出てきました。
北川温泉「黒根岩風呂」が好きな望月としては、下りただけでドラマ気分が味わえるので、機会があればぜひ下りていただきたい駅!

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さあ、海岸線を眺めながら、お待ちかね「伊勢海老弁当」の登場です。
ワゴンに「伊勢海老弁当」とお茶が満載されて、車内販売気分でお弁当をいただきます。

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実は伊豆急行の「伊勢海老弁当」は元々伊豆急下田駅の「駅弁」として販売されており、今回も当時と同じ包装が使われていました。
この「伊勢海老弁当」、一時期は時刻表の出版社とコラボレーションしたり、予約制で丸々一尾使ったりいろんなタイプがありました。
しかし今回、伊豆急行の方に話を訊いて衝撃的な一言が・・・。
「正直に言いますと・・・あの時は地物が使えなかったのです。」
そうかぁ、確かに伊勢海老にしてはお値打ち・・・でも「あの時は」ということは???

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安心して下さい!このツアーで出される「伊勢海老弁当」は地物の伊勢海老ですから!!
赤々とした大きな南伊豆産の伊勢海老が半身ドーン!
手でサッと持ち上げるとフワッと香る「味噌」の匂い・・・これはたまりません。
しかも、伊豆急下田・往年の名駅弁「さざえめし」を彷彿とさせる「さざえ」も貝殻ごとズシリ。
名物「金目鯛」の大きな煮付けも入って、伊豆の名物を手抜き無しで詰め込みましたという内容・・・これは「あの景色」で食べたい!!

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他のお客さんがどんどん食べてしまう中、空いたお腹を必死でこらえてやってきたのは「東伊豆の海岸線」!
やっぱり、伊豆急「最高級弁当」は、伊豆急「最絶景」を誇る片瀬白田~伊豆稲取間でいただきたいもの。
肉厚の伊勢海老の歯ごたえと味噌の旨みに思わず目を細めても、天気が良ければしっかり伊豆大島・三原山が見えてくるでしょう。
なお、現在は駅弁としては販売されていないので、このような「ツアー」のみでいただくことが出来る「伊勢海老弁当」。
仕入れやコストを勘案しますと、駅弁で毎日というのは厳しくて、このあたりが致し方ない所かと推察します。
なお、調整元は最近の伊豆急下田駅弁と同様、下田市の「株式会社クックランド」となっています。

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定期列車のすき間を縫うように行ったり来たりを繰り返しながら、東伊豆の海岸線を3回運行した伊豆急100系「レトロ電車ぶらり号」。
海に面した潮風感じる片瀬白田駅での長時間停車を最後に、いよいよ下り編の終点・伊豆急下田へ。
今回は下田を代表する有名な「あのお寺」を訪ねます。

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
「ライター望月の駅弁膝栗毛」
(取材・文:望月崇史)

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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