北陸新幹線の開業に伴って、在来線の北陸本線は、県ごとに3つの第3セクター鉄道に分割されました。
①IRいしかわ鉄道(石川県:金沢~倶利伽羅)
②あいの風とやま鉄道(富山県:倶利伽羅~市振)
③えちごトキめき鉄道(新潟県:市振~直江津、日本海ひすいライン)
このうち最も長い、100キロあまりの区間を受け持つのが「あいの風とやま鉄道」です。
「あいの風とやま鉄道」の看板列車とも言えるのが「あいの風ライナー」。
朝夕を中心に金沢~泊(とまり)間で運行される”通勤ライナー”的な快速列車です。
全車指定席で「300円」の追加料金が必要で、ライナー券は原則として駅での販売ですが、空席があれば列車内でも購入可能です。
車内で精算する場合、車掌さんがタブレット端末を操作して、レシートのような「ライナー券」を発券してくれます。
停車駅も金沢・石動(いするぎ)・高岡・小杉・富山・滑川・魚津・黒部・入善・泊の各駅に絞られ、かつての特急並みのスピードで走り抜けます。
「あいの風ライナー」の車両はJR西日本から譲渡された521系電車が中心。
進行方向に向かって座席の向きを変えられる転換クロスシートを装備した車両ですが、実は普通列車用の車両と共通です。
その意味では追加料金「300円」は着席保証料といった感じで、首都圏では京急の「ウィング号」や東武東上線の「TJライナー」に近い存在。
下校の中・高生は追加料金の無い普通列車に流れるようで、乗っている人は大人が多め。
たまに地方の通勤列車に乗ってみるのも、その地域の土地柄のようなものが見えて面白いですね。
521系電車は2000年代後半から作られた新しい車両なので、スピードを出しても車内は静か。
「あいの風ライナー」の車窓には、富山の田園風景が広がりました。
田植えが済んだばかりの水鏡の田んぼに夕日が映えて、日が暮れていきます。
ちなみに「あいの風とやま鉄道」ではJR西日本の「ICOCA」が使えるので、首都圏の「Suica/PASMO」も利用可能。
北陸新幹線のモバイルSuicaと組み合わせれば、首都圏からケータイ1つで「あいの風・・・」沿線の移動が可能です。
富山から40分弱で「あいの風ライナー」は終点の泊に到着。
泊駅のある朝日町(あさひまち)は富山県の東端にあり、次の越中宮崎駅までが「あいの風とやま鉄道」の駅となります。
このため泊から東は、新潟・直江津からやって来る「えちごトキめき鉄道」のディーゼルカーがメインの運行。
ただ、乗り通す人が全くいないわけではないので、泊駅では双方の列車が縦列停車して、同一ホームで乗り換えられるようにしています。
実は「あいの風とやま鉄道」・・・この富山・新潟県境の「越中宮崎~市振」間が、日本海が見えて景色がキレイなんです。
「あいの風ライナー」から乗り継いだ泊18:54発の直江津行からは、日本海に沈む夕日を眺めることが出来ました。
列車の窓から、海に出来た光の道を眺めながら移動できるとは”富山の果て”までやってきた甲斐があるというもの。
タイミングが良ければ”ジュッ!”と音がしそうな日の入りを眺められるかもしれません。
こんな美しい景色を眺めながら「駅弁」を食べたら、きっと美味しいこと間違いなし!
在来線乗継ぎの場合、駅弁は”富山の果てまで行って喰う”のがオススメです。
そんな「富山」がぎっちり詰まったのが、昨年末販売開始の「とやま弁当」(1,300円)。
元々は富山県の「平成27年度 越中とやま食の王国づくり事業」として企画された駅弁で、富山駅弁の「源」が調製しています。
北陸新幹線の開業を機に富山の食の魅力を首都圏へ発信すべく、富山の食材を使った駅弁を作ることになり、NREと提携して東京駅「駅弁屋・祭」でも販売。
3月以降は北陸新幹線開業1周年に合わせて、富山県内での販売が始まったという”東京先行発売”の珍しい駅弁でもあります。
E7(W7)系新幹線・普通車の背面テーブルいっぱいに広がる、横長の折詰が特徴ですね。
(参考:富山県ホームページ)
【おしながき】
とやま牛 すき煮
パプリカのピクルス
らっきょう 赤ワイン仕込み
鰤かまステーキ
白海老浜焼き
生姜の酢漬け
紅葉麩
とやまポークロースト
茗荷の酢漬け(富山県郷土料理)
厚焼たまご
紅ずわい蟹
とやま黒大豆枝豆
酢れんこん
錦糸たまご
大きく4つに分かれた「とやま弁当」、とにかく「富山を詰め込みました!」という意気込みを感じます。
富山県産コシヒカリを「酢飯」にしてあるのは、ますのすしの「源」ならではですね。
首都圏在住者からすると「富山の食=氷見のブリ、白えび、ホタルイカ、回転寿司」あたりがざっくりイメージ。
でも魚介1点勝負ではなく、肉系のおかずも入れてバランスを取っている点に、行政の企画らしさを感じます。
魚・2食材、肉・2食材でボリュームがあるので、女性なら2人くらいで食べ分けるのがちょうど良さそう。
いずれにしても富山県の税金を使って企画された駅弁、富山の食材を知るきっかけになっていて欲しいものです。
旅行者はもちろん地元の皆さんも、地元再発見の意味を込めて、ぜひ一度味わうべき駅弁ではないでしょうか。
新幹線では味わえない風光明媚な景色を楽しめるのが在来線の旅。
ぜひ新幹線と組み合わせて、富山・新潟県境越えを体感してみては!?
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
「ライター望月の駅弁膝栗毛」
(取材・文:望月崇史)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/