さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
“日本人が愛する外国映画”として、必ずといって言いほど名前が挙がる名作『ローマの休日』。
一度はご覧になった方も多いのではないでしょうか。
では『ローマの休日』の脚本家が誰か、ご存知ですか?
映画のエンドロールにはイアン・マクレラン・ハンターの名がクレジットされていますが、実際にこの物語を書いたのはダルトン・トランボという人物なのです。
そこで今回の「しゃベルシネマ」では、稀代の脚本家ダルトン・トランボの波瀾万丈の人生を描いた『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』を掘り起こします。
『ローマの休日』を生み出した脚本家の真実を描く人間ドラマ
ダルトン・トランボは、ハリウッド黄金期に第一線で活躍していた脚本家。
『恋愛手帖』で第13回アカデミー賞脚色賞にノミネートされるなど、着実にキャリアを積んできた。
しかし第2次世界大戦後の冷戦の影響による赤狩りの標的となり、下院非米活動委員会への協力を拒んだため、投獄されていまう。釈放されても、ハリウッドでの居場所を失ってしまったトランボ。
それでも筆を置くことはなく精力的に脚本を書き続け、偽名を使って次々と作品を発表。
『ローマの休日』など名作を世に送り出し、アカデミー賞を二度も受賞した。逆境に立たされながらも信念を持って生きたトランボの映画へのアツイ想いと、彼を支え続けた家族や映画関係者らの姿を、実話をベースに描かれています。
監督を務めたのは『オースティン・パワーズ』シリーズ、『ミート・ザ・ペアレンツ』のジェイ・ローチ。
稀代の脚本家トランボを演じるのは、テレビシリーズ「ブレイキング・バッド」で知られるブライアン・クランストン。
トランボを執拗に攻撃するコラムニスト、ヘッダ・ホッパー役は、『クイーン』のオスカー女優、ヘレン・ミレン。
本作の陰の主役とも呼べるトランボの娘、ニコラには『マレフィセント』のエル・ファニング。
苦境のトランボを陰ながら支える妻、クレオに『運命の女』のダイアン・レインと、実力派がズラリ。
劇中には『ローマの休日』や『スパルタカス』のフッテージが盛り込まれているほか、ジョン・ウェインやカーク・ダグラスといった実在の著名映画人が多数登場。
20世紀半ばの華やかなハリウッドを再現すると同時に、理不尽な弾圧と闘い抜いた脚本家の苦難と復活の奇跡を鮮やかに描き出しています。
マッカーシーズムとその時代を描いた映画と言えば、若き日のバーブラ・ストライザンドとロバート・レッドフォード共演の『追憶』やジョージ・クルーニーが監督した『グッドナイト・アンド・グッドラック』などが思い浮かびます。
それらの映画と同じく、1940年代から1960年代にハリウッドを覆った閉塞感ある時代を舞台にした作品ですが、決して思想に偏ることなく、「映画は面白くなければならない」というトランボのスピリットそのままに、エンターテインメント作品としての面白みがギュッと凝縮されている一作です。
トランボという人は『ハリウッドから最も嫌われた男』に”仕立て上げられた”ハズなのに、ついには『ハリウッドから最も必要とされた男』になってしまったように、私の目には映りました。
真のエンターテインメントとは。そして、真の“表現の自由”とは。
この映画を通じてトランボという人物を知ってから改めて彼が手がけた作品に触れると、また見え方が変わってくるでしょうね。
私も彼の手がけた映画を見直してみようっと。
映画鑑賞の新たな常識、ムビチケはとっても便利!
さて私の場合、映画は試写室で観ることが日常なのですが、今回は映画館で友人と鑑賞しました。
何故なら、いつもお世話になっている方からのご招待で、本作のムビチケカードをいただいたから。
それならば試写ではなく映画館の大きなスクリーンで楽しもうと、劇場公開を待ち望んでいました。
ムビチケはオンラインで購入できる前売り券。
事前にWeb上で座席の指定が出来るので上手に利用すれば、映画鑑賞もよりスムーズにスマートに楽しめますよ。
最後にもうひとつ。
本作のエンドロールには、トランボの真実の言葉がもうひとつ隠されています。
だからどうぞ、場内が明るくなるまで席を立たないで最後の最後まで見届けて下さい。
トランボ ハリウッドに最も嫌われた男
2016年7月22日(金) TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
監督:ジェイ・ローチ
出演:ブライアン・クランストン、ダイアン・レイン、エル・ファニング、ヘレン・ミレン ほか
©2015 Trumbo Productions, LLC. ALL RIGHTS RESERVED
公式サイト:http://trumbo-movie.jp/index.html
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/