この三連休で今シーズンの運行を終えたJR釜石線の「SL銀河」。
「SL銀河」は「C58形」蒸気機関車239号機が5両の客車を率いて、平成26(2014)年から運行されています。
列車のテーマは、今年で生誕120年を迎えた宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」。
レトロ風のボックスシートを中心に売店、さらにはプラネタリウムまで付いた車両も!
運行開始から私も数回乗っていますが、今年も夏休みに仕事を忘れ、のんびり乗ってみました。
「SL銀河」は基本的に週末の運行で、土曜が「花巻⇒釜石」、日曜が「釜石⇒花巻」に向けて走ります。
下り・上り共に、途中の遠野では、1時間以上の長時間停車があり、駅周辺の散策も楽しめます。
このため、花巻~釜石間・通しの所要時間は、4時間半前後かかります。
関係者の方によると、所要時間に加え、限られた人数でSLを運行することもあり、1日の運行は片道運行になっているそう。
車両のデザインは東日本エリアではおなじみの奥山清行氏、車内のプロデュースは作家のロジャー・パルバース氏が担当しています。
首都圏から「SL銀河」に乗る場合は東北新幹線・新花巻駅が最寄り。
下りの釜石行は、東京7:56発の「はやぶさ101号」から接続します。
そんな新花巻駅で駅弁を手掛ける「まるろく」のSL駅弁といえば「ロマン銀河鉄道SL弁当」(1,150円)。
実はコレ、「SL銀河」が走り始めた2014年よりずっと前からあるんです。
「銀河鉄道の夜」ゆかりの釜石線では、JR初期から「ロマン銀河鉄道SL」号(後に「SL銀河ドリーム」号)という列車が、年に数回運行されてきた歴史があります。
この駅弁の名前は、釜石線で積み上げられてきたSL運行の実績を、今に伝えるものでもあります。
夜空をイメージさせる青い掛け紙を外すと、キラキラと海鮮食材の“銀河”が広がりました。
ホタテを真ん中にイクラ、トビッコ、錦糸玉子、刻み海苔、椎茸など・・・。
特にイクラと風味豊かな刻み海苔の組み合わせはテッパン!
奇をてらわず、真っ直ぐに食材の良さが伝わってきます。
もちろん”海鮮の銀河”と取るか”ただの海鮮駅弁”と取るかは、食べるあなたの感性次第。
だって、今なお多くの謎を秘め、解釈の分かれる「銀河鉄道の夜」ゆかりの駅弁なんですから。
「SL銀河」の客車は「キハ141系」と呼ばれ、実はディーゼルカーとして自走出来ます。
これは釜石線には急勾配区間があり、SLとディーゼルの力を合わせて登る必要があるため。
加えて始発・終着駅などでは自力で走れますので、機関車の付け替えなどの手間が省けます。
元々は、JR北海道で活躍していた「50系51形」客車を改造して生まれた気動車。
時間を経て、再び「客車」としての役割を果たすようになったのも興味深いところです。
私自身は、残念ながらリアルタイムのSL世代ではありません。
ただ先日、仕事で元・大洋ホエールズのプロ野球選手で、今は鉄道写真家としても活躍されている屋鋪要さんにお話を伺う機会がありました。
SLの音や走った後の匂いの話、さらにはSL写真の極意まで、とてもアツく語って下さいました。
機会を作って、構図にも拘ったSLの写真をしっかり撮ってみたい・・・そんなSLへのロマンも起こり始めている最近の望月です。
(取材・文:望月崇史)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/