新宿と松本を結ぶ中央東線の顔、特急「あずさ」。
今年(2016年)12月12日で、運行開始から50周年を迎えます。
「あずさ」の歴史は、新宿・松本をそれぞれあの「8時ちょうど♪」に発車する列車から始まりました。
当時は食堂車も連結された編成で、およそ4時間をかけて信濃路を走り抜けるダイヤでした。
現在「スーパーあずさ」は最高時速130キロ、新宿~松本間を最速2時間25分で走破します。
※参考:JR東日本八王子支社HP、「Rail Magazine」2015年10月号ほか
「あずさ」の名は、上高地を流れる「梓川」に由来します。
信州の美しい山や高原のイメージ、昭和52(1977)年のヒット曲「あずさ2号」による知名度アップ、さらには急行「アルプス」の格上げなどもあって、2往復で始まった「あずさ」は年々増加。
現在は「あずさ・スーパーあずさ」合わせて毎日18往復の定期列車が運行されています。
ちなみに、振子装置を搭載したE351系電車が充当されるのが「スーパーあずさ」。
白地に武田菱などが描かれたE257系電車で運行されるのが「あずさ」です。
この「あずさ50周年」を記念した駅弁が、小淵沢駅弁「丸政」から登場しています。
その名もズバリ「特急『あずさ』誕生50周年記念弁当」(1,300円)。
10~12月の限定販売で、早くも当初予定の5,000個を突破!
急きょ“大増発”が決まったという人気ぶりなんだそうです。(丸政公式FBより)
でも、鉄道好きならやっぱり“見た目”に魅かれますよね!
実はこの駅弁、初代「あずさ」のボンネット形・181系特急電車をモチーフにした包装。
181系電車は最初の9年間、上越線「とき」や信越線「あさま」などと共通で使われました。
この際、中央東線のトンネルが小さいため、おでこのライトなどが取り外されました。
それまでの「こだま」形特急とは変わった見た目に、当時は賛否両論あったと思いますが、駅弁の「弁当箱」としてはライトが無かったのがかえって好都合になったかもしれません。
天井には「あずさ」の停車駅と沿線のイメージが描かれ、後ろの連結面を引き出すと中から駅弁が現れます。
【お品書き】
(山梨)
甲州ワインビーフすき焼き
甲州ワイン豚ソースメンチ
ワインらっきょう
白御飯
(長野)
信州牛炭火焼肉
まつたけ
赤カブ、野沢菜炒め
松茸御飯
「あずさ」が走る山梨と長野の食材を使っているのが特徴。
お品書きは「きっぷ」風のものとなっていました。
「丸政」オールスターズの食材をたっぷり詰め込んで「あずさ」のメモリアルを祝う気持ちが伺えます。
小淵沢は勿論、新宿・甲府・茅野のほか、普段は「丸政」の駅弁の販売がない上諏訪・下諏訪・岡谷・塩尻・松本の「あずさ」停車駅で入手可能。
今、甲州・信州へ「あずさ」で行くなら、まずは食べておきたい駅弁です。
「あずさ」の魅力って、やっぱり下り列車の「山登り」だと思います。
見せ場は、高尾~相模湖間、大月~塩山間、甲府~富士見間の3回。
車窓の南アルプス・八ヶ岳は勿論ですが、モーターのある車両(モハ)に乗ると聞ける力強い唸りの音も魅力的で、車窓と音だけで駅弁1個、あっという間に完食できます!
そもそも標高35mあまりの新宿から標高955mの富士見まで、900m以上の高低差を体感できる特急って、他にはまず無いんですよね。
車体を傾けてカーブを描きながら高速で挑む「あずさの山登り」、50周年の今、ぜひ乗って、見て、撮って楽しみたいものです。
(取材・文:望月崇史)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/