茅野駅「おやき三昧」(650円)~信州の伝統食が創る「新しい駅弁」!【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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飯田線からの213系電車

飯田線からの213系電車

中央東線を走るオレンジと緑の「湘南色」の帯を巻いたステンレスの電車。
前回、211系電車はスカイブルーの「信州色」になったとお伝えしたばかりですよね。
実はこの車両、211系ではなくJR東海の飯田線から乗り入れてきた「213系」電車。
よく見ると正面の窓も助士席側が広く拡大され、側面も3ドアではなく2ドアです。
飯田線の213系が乗り入れる中央東線・辰野~茅野(ちの)間は、同じような顔のステンレス車でも、クロスシート車あり、ロングシート車ありの珍しい区間となっています。

リスの歩道橋、2013年・ニッポン放送「ルートハンター」で取材

リスの歩道橋、2013年・ニッポン放送「ルートハンター」で取材

213系がやってくる「茅野」は、信州でも珍しい風景が点在する街。
少し郊外の「茅野市運動公園」の道路にはなんと「リス専用歩道橋」があります。
様々なメディアで紹介されているので、ご存知の方も多い筈。
本来の歩道橋の下に設置されており、リスを交通事故から守るためなんだそう。
市民の憩いの場に、当たり前のようにリスがいることが珍しいですよね。

道端のピラミッド&スフィンクス、2013年・ニッポン放送「ルートハンター」で取材

道端のピラミッド&スフィンクス、2013年・ニッポン放送「ルートハンター」で取材

同じ茅野市の国道152号沿いでは、ピラミッドとスフィンクスが顔をのぞかせます。
国道152号は茅野から伊那方面へ抜ける道で、交通量もそこそこある道。
コチラはゴミの不法投棄対策として、地元の方が置いたものだそう。
草むらの中に鎮座するスフィンクスというのも、なかなか無い発想です。

そんな茅野に、今までありそうで無かった「駅弁」が登場しています。

おやき三昧

おやき三昧

その名も「おやき三昧」(650円)!
信州の伝統食「おやき」がそのまま「駅弁」になりました。
手がけたのは小淵沢の駅弁屋さんで茅野駅でも営業する「丸政」。
「三」昧だけに「三」角形なのか、見た目にもインパクトがありますね。
現在開催中の「駅弁味の陣2016」のエントリー駅弁でもあります。

おやき三昧

おやき三昧

「おやき三昧」と書かれたステッカーをゆっくり剥がして開封。
中からは「野沢菜・きんぴらごぼう・茄子」の3種の「おやき」が登場しました。
焦げ目が付いた、中信(松本・諏訪エリア)の定番「焼きおやき」です。
これこそ「今までありそうで無かった」駅弁!
信州の駅弁ではこれまで幕の内のおかずの1つとして「おやき」が入っていることはありましたが、「おやき」のみの駅弁というのは記憶にありません。

おやき三昧・野沢菜

おやき三昧・野沢菜

「おやき」といえば、まずは「野沢菜」から。
これが思いのほかシャキッとした食感で、しかも具だくさんなのです。
きんぴらごぼうも具だくさん、茄子はひと手間加えた「茄子味噌」です。
個別包装されているので、1つ食べて残りはお土産にすることも可能。
お財布にやさしく、女子旅、おやつ代わりにもちょうどいい分量です。

おやき三昧・きんぴらごぼう

おやき三昧・きんぴらごぼう

「おやき」で直球勝負というのは、実はスゴイことだと思います。
「おやき」の皮は小麦粉ですから、本来は「加熱」料理が基本。
信州で「おやき」を直売している所でも「温かいもの」を出しています。
いわゆるコナモンでは、関西の駅弁屋さんが「明石焼」の駅弁を出したことがありますが、この時も「加熱式容器」での販売でした。
そこを敢えて「冷めても美味しい」を基本とする「駅弁」で出してきたのがスゴイんです!

おやき三昧・なす

おやき三昧・なす

「おやき三昧」、実は伝統食による「未来志向の駅弁」と推察します。
「丸政」では近年「甲州かつサンド」や「そば屋の天むす」など軽食系駅弁を充実させています。
これは以前もお伝えしたように、鉄道の高速化で乗車時間が短くなっているため。
「おやき三昧」は、これらの軽食駅弁とほぼ同じ価格帯に設定されました。
軽食駅弁は数多くあれど「おやき」を胸張って出せるのは信州に販売拠点をもつ駅弁屋さんならでは!
時代の変化の中で、今求められる駅弁に「信州の伝統食」がピタっとハマったとも言えそうです。

私自身も「おやき」を初めて食べたのは「鉄道旅」でした。
高校時代『信越本線・黒姫駅(現・しなの鉄道)のそば屋のおやきが美味しいらしい』というウワサにつられて、静岡から黒姫まで青春18きっぷで普通列車を乗り継いで「おやき」のためだけに鉄道好きの仲間と出かけたことがあります。
去年、黒姫を訪ねると「駅そば」はあったものの「おやき」は無くなっていて少し残念な思いをしました。

未来の鉄道少年たちが、いつか「おやき」のために茅野に足を運んでくれるようになったら嬉しいもの。
「おやき三昧」が茅野の新名物として育っていくように、温かく見守っていきたいと思います。

(取材・文:望月崇史)

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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