子犬期は社会化の黄金期!良い経験を積めるパピーパーティへ【ペットと一緒に vol.9】

By -  公開:  更新:

TOPP(w680)

筆者はドッグライターと2足の草鞋を履きながら、「犬の幼稚園」を都内に経営してもうすぐ10年になります。今回は、当園でも定期開催しているパピーパーティについて、何を行っているのかや参加するメリットなどについてご紹介します。

子犬の社会化期にたくさんの良い経験を

私は12年前にオーストラリアで犬の問題行動カウンセリングを学んでいたのですが、研修先のドッグトレーナーたちが、動物病院の待合室で開催するパピーパーティによく同行しました。
研修生として参加しながら、子犬の社会化や、飼い主さんとの適切な信頼関係を築くことの重要さを実感したものです。

A(w680)

オーストラリアの動物病院で診療時間後に開催されたパピーパーティの様子。家族連れで熱心にトレーナーの言葉に耳を傾けています

子犬には、「社会化期」と呼ばれるものがあります。
「社会化」とは、簡単にいえば、自分が生きていく世界のものに慣れること。犬であれば、飼い主さん以外の人、散歩中や動物病院やトリミングサロンなどで出会ったり触れ合ったりする可能性のある犬や猫などの動物、乗り物、あらゆる音、環境などがその対象です。

人間でも幼少のうちはすぐに誰とでも仲良くなったり、新しい環境に慣れやすいものです。犬も同様。幼いうちは好奇心の塊なのです。ところが、犬でいえば、個体差もありますが、生後3カ月位から警戒心が上がってきます。子犬ならではの高い好奇心は、それと反比例するかのように下がり始め、生後半年位で好奇心よりも警戒心のほうが上回ってしまうと言われています。

B(w680)

離乳前は、第一次社会化期などとも呼ばれ、親犬やきょうだい犬との関わりのなかで様々なことを学ぶことが大切

子犬の飼い主さんたちが口にされているのをよく耳にします。「うちのコは、全然吠えないの」と。
ある意味それは当然といえます。そもそも、警戒心がまだ育っていない月齢だからです。
ところが、生後4~5カ月齢になると、ある日突然に「ピンポーン」というドアチャイムの音や来客、ほかの犬などに吠え始めることも珍しくありません。その理由は、警戒心が高まってきたから。

そう、一生に一度しかチャンスのない、生後3~12週齢頃の子犬の社会化期にどれだけ多くのものに接して適切に慣れることができたか。つまり、犬にとって多くのことが警戒する対象や刺激物にならずに済んだかが、その後の成長過程に大きく影響するのです。

パピーパーティは楽しくて安心

パピーパーティは、飼い主さんだけでは愛犬に社会化をさせてあげにくい「ほかの犬」に主にフォーカスした場です。人間でも子供同士での関わりや遊びが、社会性を育むうえで重要だと言われるように、犬も子犬同士で遊びながら、噛む力加減などを身につけていきます。

パピーパーティでは、犬のプロであるドッグトレーナーが、子犬同士が上手にあいさつできたり遊べるように導いてくれて安心なのが、最大のメリット。
まだ「自信」がついていない子犬期には、怖い思いをさせないことがとにかく重要です。もしほかの犬に威嚇されたり追い詰められたりして恐怖を感じてしまうと、「犬は無理!」と子犬自身が以後拒絶するようになるでしょう。そうならないように、パピーパーティや犬の幼稚園では、ドッグトレーナーは細心の注意を払いながらメンバーを選んで犬同士を触れ合わせます。

C(w680)

ドッグトレーナーが見守るなか、ほかの犬にあいさつ。積極的なコは、リードを付けたまままでハンドリングすることも

子犬に社会化をさせなければならないと、シッポが下がって震えている子犬を無理やりドッグランに連れて行く飼い主さんを見かけることがあります。
何ごとも最初が肝心。自発的に相手の犬に近づいて安全を確認できたならば良いのですが、飼い主さんにお尻を押されたりリードを引っ張られたりしながらほかの犬の近くに行かされても、子犬に自信は育まれません。それどころか、相手の犬に威嚇でもされようものなら、トラウマになってしまう危険性も……。
残念ながら出会う犬みんなが、適切な社会化がされているとは限りません。
子犬が恐怖を感じないような、犬同士の適切なマナーを身につけている犬たちとだけ、子犬期は触れ合わせたいものです。量より質が大切なのです。

D(w680)

あいさつできた~! じゃ、追いかけっこや取っ組み合いをして遊ぼう!

パピーパーティで教えてもらえること

多くのパピーパーティでは、ドッグトレーナーによる「子犬期に飼い主さんがやっておきたいこと」というようなプチ講義もあるかと思います。

新しいことをスポンジのようにどんどん受け入れていく社会化期にこそ、まずは「体のどこを触られても大丈夫になる」ことが大切。おやつをうまく使いながら、手先や耳や口まわりなどを触って慣れる練習方法などを、当園で開催するパピーパーティでもドッグトレーナーが実演しています。
さらに、ゴロンと横になることへの抵抗がなくなれば、たとえば動物病院の健康診断や診察で超音波検査をする際、犬自身も落ち着けるので安全に行えるようになります!

E(w680)

「おやつをガジガジしてるから、横になってることを忘れちゃうよね~」

また、子犬が飼い主さんの目をしょっちゅう見てくれるようになるなど、適切な信頼関係を築ける秘けつ、トイレトレーニングのコツなどを教えてくれるパピーパーティも少なくないでしょう。

犬の幼稚園を経営していて感じるのは、正直、パピーパーティに数回参加しただけでは、ほかの犬などへの社会化が十分に行えないかもしれません。
半日は滞在できる犬の幼稚園のような施設でドッグトレーナーのもと、シャイな子犬は自発的に目の前の問題を解決できる自信がつくように、積極的すぎるコは落ち着いて行動できるように、場数を踏み、良い経験を積み重ねながら社会化できるのが理想です。
それでも、パピーパーティをとおして、愛犬のことで気づくことはたくさんあるはず! 愛犬との良い関係性を培っていくきっかけにもなるかと思います。

子犬期は、その後の「犬生」を愛犬がストレスなく自信を持って生きて行けるようになるかの鍵を握る黄金期です。
ぜひ、動物病院や犬のしつけ教室が主催するパピーパーティを探して、参加してみてください。

連載情報

ペットと一緒に

ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!

著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。

Page top