東海道本線の富士と、中央本線の甲府の間、88キロあまりを結ぶJR身延線。
看板列車は、富士山に見守られるように走る特急「(ワイドビュー)ふじかわ」です。
373系電車が3両編成で、静岡~甲府間を毎日7往復。
この春は、早朝の下りと夕方の上りに、臨時の「ふじかわ61号、62号」も運行されます。
身延線の車窓の目玉は、何と言っても「富士山」です。
身延線で富士山がよく見えるのは、静岡県内の富士~沼久保間。
中でも、西富士宮~沼久保間は、車窓の富士山としてはトップクラスの美しさです。
下り列車は、西富士宮を出て潤井川の鉄橋を渡ると、左へ大きくカーブを描きます。
合わせて、急な登りに差し掛かるため、列車のスピードがガクンと落ちます。
この落ち具合が、「ゼッタイ富士山を見て!」と言わんばかりのスローダウンなのです。
見よ、3,776mの剣ヶ峰をセンターに美しくそびえる「富士山」!
JR東海ご自慢の“ワイドビュー”な窓の実力が、如何なく発揮される瞬間です。
あの宮脇俊三先生が、「車窓の富士でいちばんよい」と仰った富士山がコレ。
下りでは進行左側、上りでは進行右側となり、富士川や駿河湾も同じサイドとなります。
特急「ふじかわ」で指定席を取る場合は、「A席」を指名買いです。
(参考:「最長片道切符の旅」宮脇俊三著)
富士山と富士宮の街を眺めたら、ついつい食べたくなってくるのが「富士宮やきそば」。
「富士宮やきそば」といえば、やきそばG麺、ミッション麺ポッシブル、三者麺談・・・といった徹底したダジャレ企画を仕掛けることで、「B級ご当地グルメ」という食のジャンルを確立しました。
この系譜を感じさせる駅弁「富士宮やき×さば弁当」(880円)が、今年1月10日から登場!
調整元は、新富士駅弁の「富陽軒」です。
「やき×さば」とは・・・なんと! 焼き“そば”と焼き“さば”のコラボ!!
「富士宮やきそば」と「焼き鯖寿司」を、1つの折詰に詰め込んでいるのです。
焼きそばには静岡らしく桜えびが載り、焼きサバは味のバランスを考慮した味噌仕立て。
付け合わせはシメジやパプリカなどの温野菜で、珍しいバーニャカウダソースでいただきます。
デザートとして、お茶の里・静岡らしく、抹茶わらび餅も入っています。
富陽軒によりますと、「今までにない駅弁を・・・」という思いで新作を考案する中、通常、駅弁ではまず使わないような肉厚なサバの入手ルートを開拓。
このサバをメインに、ご当地ならではの味「富士宮やきそば」が相棒に抜擢されました。
もちろん語呂の良さ、従来にない組み合わせということも、採用の決め手になったそうです。
なるほど、だから掛け紙もサバで、「焼き鯖寿司」が“センター”なんですね!
基本的には新富士駅での個数限定販売ですが、事前に予約(電話:0545-61-2835)すれば、富士駅などでの受け取りも可能で、さっそく評判は上々のようです。
ちなみに、特急「ふじかわ」は、富士駅で進行方向が変わるため、3~4分停まります。
富陽軒のそば店がある2番線の発着なので、予約すると受け取りやすいのも有難いところ。
富士山をバックに、坂を喘ぎ喘ぎ登ってきた特急「ふじかわ」甲府行。
ゆっくり走るということは、その分、たっぷり富士山が見られるということ。
静岡行の「ふじかわ」は、富士川沿いの山間の風景から一転、最高の富士山が広がります。
やっぱり、西富士宮~沼久保間に乗ってこその「身延線」!
ぜひ晴れた日に乗って、最高にキレイな富士山を見て下さい。
(取材・文:望月崇史)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/