終生室内飼育の猫がほとんどの今、自宅以外の環境がストレスに感じる猫は少なくないと聞きます。
今回は、猫の心身への負担が少ないことから利用者が急上昇中という、ペットシッターに密着。日本初のペットシッターサービスを1993年にスタートさせた「留守番わんにゃん」の山口照代さんが、猫のお世話をする様子をご紹介します。
猫の扱いと衛生管理はおまかせ
飼い主さんが出張中の留守宅に山口さんが入ると、1匹の猫が「ニャ~ン」と甘い声を出して近寄ってきます。今日のシッティングは、なんと20年以上も山口さんが依頼を受けているという水品さんのお宅。
動物愛護団体の一時預かりボランティアも行っている水品さん宅には、預かり猫ちゃんを含めて14匹いるのですが、同行取材の筆者を警戒してか、人なつっこいあと数匹はリビングで待機中のもよう。
「飼い主さん以外はなついていない猫ちゃんも多いもの。決してびっくりさせたり怖い思いをさせないように、人見知りの猫ちゃんには近づいては行きません。私も10匹の猫と暮らすほど猫好きなので、はやく仲良くなりたいんですが、辛抱です(笑)」と、山口さん。
水品さんの依頼は1泊2日から2週間ほどと、短期も長期もあります。本能的に食いだめをする犬とは違い、猫ならば水とごはんを余分に置いておけば、2日間くらいの留守番ならばなんとかなりそうだと思った私に、
「猫はとってもキレイ好き。トイレが汚れているとストレスに感じて、別の場所で排泄を始めてしまいます。猫たちの健康管理のためにも、こまめにトイレを掃除することが大切なんですよ。ごはんに関しても、夏場ならば、出しっぱなしのウエットフードだとすぐ雑菌が繁殖しますしね」と、山口さんは教えてくださいました。
ゴハンですよ~! 健康チェックもね!
ひととおりの掃除と換気と観葉植物への水遣りが終わると、山口さんは慣れた様子で食器棚と収納庫を開け、ごはんの支度に入ります。
「あ! ごはんだ、ニャーン」と、この時点で山口さんの足元にすり寄ってくる猫ちゃんも数匹。
ここで、山口さんは猫ちゃんたちの様子を真剣な眼差しで確認しています。
「健康状態のチェックですね。このあと、出てこなかった猫ちゃんたちも確認しに行きます」とのこと。
食事を食べに来なかった猫ちゃんは、リビングのほか、寝室のベッドの下などにいました。山口さんは、数を数え、一匹一匹の状態を確認したり、スマホで写真を撮ったり。シッティングが終了したあと、LINEなどで飼い主さんに報告するためです。
隠れていた猫も異状ナシとチェックしたら、リビングで山口さんと遊ぶのを楽しみにしている猫ちゃんたちのもとへ。
「猫は当然ながら狩猟本能がある動物です。退屈に過ごすこともストレスになるので、遊びの時間も大切なんですよ」と、山口さんはおもちゃを動かしながら微笑みます。
依頼主のお話
今回の依頼主である水品さんは、ペットシッターは多数飼育の飼い主さんや、人見知りの猫ちゃんを飼っている方、ペットホテルへの送迎の時間が取りにくい方でも気軽に利用できるのが最大のよさだと語ります。
「私は90年代、アメリカで2匹の猫と生活していました。海外では、当時からペットシッターはメジャーな存在。日本人には、自宅に誰かが入ることに抵抗感を抱く方も少なくないようですが、事前の打ち合わせでシッターさんとの相性を、愛猫はもちろん、飼い主も確認できるので安心です」(水品さん)。
「留守番わんにゃん」では、事前の打ち合わせで聞き取りをしながらシッターが利用シートに細かく依頼主の情報を記載し、カギの受け渡し方法なども決めます。
「私以外、山口さんにしかなついていないコもいますよ。何度も顔を合わせるし、猫ゴゴロを掴むのが上手ですから、山口さんは大人気(笑)」と、水品さん。
利用料やサービス内容などは、ペットシッティング業者ごとに異なるので、ホームページやパンフレットなどをご参照ください。
ちなみに「留守番わんにゃん」では、主には上記のサービスを行ない、猫2匹まで1時間3,000円(税別)と出張交通費が加算されます。
ペットのお世話の依頼先として、日本でも広まっているペットシッターサービス。次回の出張や旅行時から、お願いしてみるのもよいかもしれません。
連載情報
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著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。