折尾駅「こくうま鶏めし」(1,000円)~九州のバッテリーで動く電車「DENCHA」【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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新しい折尾駅に入線する、鹿児島本線813系・快速荒尾行

新しい折尾駅に入線する、鹿児島本線813系・快速荒尾行

福岡県北九州市の折尾駅にやって来ました。
折尾は鹿児島本線と筑豊本線の接続駅で、明治28(1895)年に出来た日本最古の「立体交差駅」として広く知られてきました。
しかし、今年(2017年)1月から鹿児島本線が新線に切り替えられ、最古の立体交差は見納めに。
古い駅舎などを比較的大事にする九州にあって、このような工事が行われているのは、折尾駅をかつて利用していたニッポン放送の山本剛士アナウンサー曰く、「まるで迷路のような駅」だから。
階段1つ間違えて、行きたいホームに辿り着けないことも、しばしばありました。
このため今後、高架化事業がさらに進められて、普通の駅のように鹿児島本線と筑豊本線のホームを横に並べる工事が行われ、両線の乗換えの利便性が図られることになっています。

JR九州BEC819系電車

JR九州BEC819系電車

駅が変わる一方で、折尾駅を走る車両も変わり始めました。
特に注目を集めているのが、JR九州のBEC819系電車。
去年(2016年)10月から、筑豊本線・若松~折尾間で1日4往復運行されています。
白い車体にブラックフェイス、最近の九州ではよく見るカオの電車。
いったい、普通の電車とどこが違うのかといいますと・・・?

折尾駅の「DENCHA」

折尾駅の「DENCHA」

この電車には、電池と共に「DENCHA」という愛称のロゴが描かれています。
そう、BEC819系電車は、話題の蓄電池(バッテリー)で走る電車なんです。
「駅弁膝栗毛」でも、既に東日本エリアの蓄電池電車を、「烏山線」と「男鹿線」で紹介しました。
特に男鹿線を走るEV-E801系電車は、この「DENCHA」をカスタマイズした車両。
明後日(3/4)からは、色は違いますが、ほぼ同じ形の車両が秋田でも営業運転を開始します。

*こちらの記事でご紹介しました。↓↓
宇都宮駅「ダイジ飯」(800円)~雷都・宇都宮の自分で作るいなり寿し駅弁!
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筑豊本線の車窓に広がる洞海湾

筑豊本線の車窓に広がる洞海湾

筑豊本線の若松~折尾間は、地図で見ると、北のほうに飛び出した盲腸のような路線。
正式には筑豊本線ですが、実質的に「若松線」と呼ばれています。
この区間は今も非電化で、DENCHA以外は、短編成の気動車が行ったり来たりしています。
蓄電池電車が投入される路線には、電化区間と接続した短めの“盲腸線”が多いのが特徴。
架線のある駅で充電して、短い非電化区間はバッテリーで一気に走るという訳ですね。

筑豊本線・若松駅

筑豊本線・若松駅

洞海湾を横目に、程なく行き止まりの若松駅が見えてきました。
いわゆる“若松線”は、昔の石炭輸送の名残りで、今も複線になっています。
筑豊炭田の石炭は、筑豊本線の貨物列車で運ばれ、若松港から積み出されました。
石炭輸送華やかな頃は、貨物列車が頻繁に走っていたでしょうから、鹿児島本線の線路を長時間ふさがないよう、折尾駅の立体交差の意義も大きかったんでしょうね。

若松駅の「DENCHA」

若松駅の「DENCHA」

若松駅に到着した「DENCHA」は、パンタグラフを上げることも無く、折り返し準備に入りました。
なるほど、若松~折尾間は、10キロちょっとで、所要時間も片道20分弱。
折尾駅でため込んだ電気で、若松~折尾間の往復分を賄えるんですね。
東日本の烏山線では、少し非電化区間が長いので、終点・烏山駅にも集電設備があります。
“若松線”程度の距離なら、新たな地上設備を作らなくても、車両の置換えで済む訳なんですね。

こくうま鶏めし

こくうま鶏めし

さて、新しい電車「DENCHA」のデビューに先駆けて、去年(2016年)10月1日、折尾駅の駅弁を手がける「東筑軒」からも新しい駅弁が誕生していました。
その名も「こくうま鶏めし」(1,000円)。
「東筑軒」といえば、昔から鶏肉を使った名物駅弁「かしわめし」が根強い人気!
「DENCHA」同様のブラックフェイスで登場したこの新作、一体、どんな中身なのでしょうか?

こくうま鶏めし

こくうま鶏めし

包装も黒に金文字、パッケージの手触りも高級感ある装丁です。
白いご飯の上に載るのは、左側が濃いめの醤油味で仕上げられた鶏もも肉カルビ焼。
右側が食欲をそそる鶏むね肉の生姜焼で、2つの味わいを楽しめます。
これに春雨サラダと香の物が付いたシンプルな構成。
鶏肉には、福岡県の業者が手がけるブランド鶏「華味鶏」が使われています。

こくうま鶏めし

こくうま鶏めし

実はこの駅弁、「第12回九州駅弁グランプリ」にエントリーされた34駅弁の1つ。
残念ながら決勝大会には進めませんでしたが、十分、実力派の駅弁です。
「東筑軒」は、長年「かしわめし」を通じて、鶏肉を知り尽くした老舗駅弁屋さん。
その老舗が現状に安住せず、ブランド鶏を使った新作に挑戦してきたのも興味深い!
調製数はあまり多くないとみられますので、見かけたらぜひ肉厚の鶏肉駅弁を味わいたいもの。

DENCHA

DENCHA

明治時代、日本の工業化の最先端にあった筑豊本線の若松~折尾間。
昭和中盤以降は、エネルギー革命で、時代と人の流れから取り残された路線になっていました。
しかし、ココへ来て「蓄電池電車」という形で、改めて時代の最先端に躍り出ることに・・・。
充電してバッテリーで動く電車ですから、原理としてはスマートホンと同じなんですよね。
スマホでこの記事を読む方も多いと思いますが、変わりゆく街の風景の中で、時には新作駅弁をチョイスしてみては!?

(取材・文:望月崇史)

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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