マイクロチップで迷子対策【ペットと一緒に vol.16】
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愛犬や愛猫にはマイクロチップは入っていますか? 主に迷子対策として役立つマイクロチップについて、今回は、マイクロチップデータの登録機関である日本獣医師会が提供している情報や、筆者の愛犬との経験、これまでの獣医師への取材内容をまとめながら解説したいと思います。
異物を入れるのに抵抗感アリ?
筆者の愛犬のリンリンは、オーストラリア滞在中に迎えた際にはマイクロチップが装着済でした。オーストラリアをはじめ、法律で犬へのマイクロチップの装着が義務化されている国も少なくありません。
このマイクロチップはISO国際規格で、世界で唯一の15桁の数字が記録されています。日本でも近年はISO規格のマイクロチップのみが流通するようになったので、どのメーカーのチップやリーダーであっても互換性があり、番号の読み取りができます。
番号を読み取るリーダーは、自治体の動物愛護センターや保健所、一部の動物病院などに備えられています。番号をもとに、日本獣医師会のデータベースを照会すれば、動物の所有者が特定できるという仕組み。
体内に異物を挿入するのに抵抗がある飼い主さんもいるようですが、日本獣医師会によると、マイクロチップによる副作用やショック症状の報告は1例もありません。海外ではマイクロチップが原因での腫瘍が2例報告されていますが、何千万頭分の2頭は非常に少ない率で、マイクロチップの安全性は高いと考えられています。
リンリンとの生活でマイクロチップによる不便を感じたことがなかったのと、首輪をしていないときに迷子になった場合の安心材料になると思ったので、筆者は日本で迎えたミィミィには、ワクチン接種の際にかかりつけ医にお願いしてマイクロチップを入れてもらいました。
長さ12mm、直径2mmほどの円筒状のマイクロチップは、注射器のような器具に入っていて、注射のような要領でミィミィの首の付け根あたりに挿入されました。「キャンッ」とミィミィは一度鳴きましたが、その直後からは何事もなかったかのように普段どおり。一安心です。
「ご覧のとおり一瞬で済みますし、挿入時の犬への負担もほとんどありませんが、去勢避妊手術などで全身麻酔をかけるときにマイクロチップの挿入を依頼される飼い主さんも多いですね」と、獣医さん。
登録と登録データの変更が大切!
マイクロチップ代と挿入料として動物病院に支払ったのは5,000円ほど。最近はイベント会場や動物病院で、チップ代と挿入料の無料キャンペーンを行っているところも多いようです。
チップを挿入したら、登録は飼い主さん自身で行います。
ミィミィは動物病院で渡された書類に、所有者の氏名と住所と電話番号などを記載して、公益団体としてマイクロチップのデータ登録機関となってデータの管理を行っている日本獣医師会に登録しました。登録料は1,000円(税別)です。そして、これまで3回の引越しのたびに、登録データの変更手続きを忘れずに行ってきました。
この登録や登録情報の変更を行わないと、せっかくマイクロチップがペット挿入されていてもいざというときに役に立たないので要注意!
また、一部のペットショップではマイクロチップ装着済の犬を販売して、飼い主となる方に独自の登録団体へのデータ登録を促していますが、リーダーで個体識別番号を読み取った自治体や獣医師がデータを照会する先は、まず日本獣医師会です。必ず、ペットショップから登録用紙を受け取った際は登録先を確認するとともに、日本獣医師会へのデータが未登録の場合は後日必ず登録するようにしましょう。
体内でチップが移動すると心配?
実は筆者の数人の犬トモから、愛犬のマイクロチップが背中や足に移動してしまったと聞いたことがあります。
獣医さんに質問したところ、「マイクロチップは通常、皮下で定着します。移動しても筋肉組織には入らず、どの部位まで行っても皮下組織内に留まっているので、体に悪い影響を与えることはありませんよ」とのこと。
レントゲン検査やCT検査を受けても問題ありません。
ただ、MRI検査の際は1.5テスラ以上の磁東密度の機器を使用して撮影した画像に歪みが生じることがありますが、動物の体には悪影響はないそうです。
マイクロチップは、GPSのようにずっと電波を発信し続けるわけではなく、リーダーを近づけなければ電波を発しないので、電磁波による影響も気にする必要はありません。
身元証明にはマイクロチップ
筆者は東京都中央区の「動物との共生推進員」の一員でもあり、中央区保健所が情報発信元となっている共生推進員のメーリングリストで、ペットの失踪情報がしばしばまわってきます。
以前、区内に長い間つながれたまま飼い主が現れない犬の情報がメールで届いたことがあったのですが、後日「マイクロチップが入っていたので所有者の情報を得ました」という内容の報告メールがきました。
飼い主さんがわざと愛犬を捨てようとしたのか、違う理由でつながれっぱなしになっていたのか、真実はわかりません。いずれにしても、犬の所有者情報はマイクロチップによって判明したのは事実です。
犬の盗難事件もある昨今、マイクロチップは愛犬の身元証明書としても役立ちます。
以前、リンリンが路上でロケット花火の音に驚いて散歩中に突然踏ん張り、首輪がスポッと抜けて逃げ出した経験があります。
愛犬を保護してくれた人がすぐに飼い主さんに連絡できるというメリットがある迷子札を、筆者は首輪につけているのですが、迷子札は取れてしまうことも! 自宅では迷子札をはずしているペットも少なくないでしょう。
災害や事故や盗難など、愛犬がいつどんなことに遭遇するかわかりません。あとから悔やまないで済むように、迷子札とマイクロチップのダブル迷子対策などをして、いざというときのために万全に備えたいものです。
連載情報
ペットと一緒に
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著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。