出水駅「松栄軒の味くらべBOX」(1,100円)~駅弁屋さんの厨房ですよ!(vol.4松栄軒編⑥)【ライター望月の駅弁膝栗毛】

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787系・特急「きりしま」

現在は、九州新幹線の各駅停車タイプの列車に、愛称が引き継がれている「つばめ」。
国鉄時代から特急の愛称として親しまれてきましたが、博多~西鹿児島(現・鹿児島中央)間の特急として復活を果たしたのは、今から25年前、平成4(1992)年のことでした。
90年代から2000年代、九州の「つばめ」の代名詞となったのが、この787系電車。
現在も、宮崎からの特急「きりしま」などで、鹿児島に乗り入れています。

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「松栄軒」松山幸右社長

その鹿児島で駅弁を手がける「松栄軒」の松山幸右社長は、今年で社長就任10年。
これからの展望について伺いました。

●社長としてのこの10年、いかがですか?

楽しんで・・・というほどではないですが、「駅弁の魅力」を年々感じています。
作り手としても年を経るごとに、だんだん、「駅弁ってすごいなぁ」と思うようになっています。
この文化をより発展させるためにどうしたらいいのか、考えなきゃいけないかなと。
それに必要なのはお客様に“ドキドキ・ワクワク”してもらうコト、旅を感じてもらうコトですね。
そんなコンセプトはしっかり持って、理解していかないといけないと思います。

●「駅弁屋」として、これからやってみたいことは?

今、企業間のコラボが増えているじゃないですか。
でも、駅弁ではまだ、あまりないんです。
「松栄軒」では、醤油も鹿児島の老舗のものを使っていますが、もっと会社の名前を出して、コラボレーションしていきたいと思います。
駅弁も僕の考えである「九州を発信する」という意味で、そういう弁当をどんどん作っていきたい。
そんな形で、九州をアピールできて、九州全体が潤う形に出来たらと思います。
ま、大きな使命を勝手に背負ってやってる感じですが・・・。
あと、肉を使ったビジネスも出来ないかなぁということも考えています。
せっかく、肉を焼いて、味も付けている訳ですから、惣菜とかギフトにもできたらと思います。

鹿児島の「3つの海」を見て、「60の駅弁」を楽しもう!

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「肥薩おれんじ鉄道」の列車からの前面展望。夕方は東シナ海の夕陽が満喫できる。

●その中で新作も出し続けている「松栄軒」ですが、今、いくつ駅弁があるんですか?

今、「松栄軒」が作っている駅弁の種類は、この間数えたら「60」くらいありました。
ただ、毎日同じものを作っているのではありません。
実は出水で販売する駅弁は「週替わり」で、営業担当がその週に良さそうな商品をピックアップして作り、販売しています。
勿論、「えびめし」や「幕の内」などの基本の駅弁は毎日置いていますが、お客様からも、来る度に違う駅弁に逢えると、好評をいただいています。

●出水に来ると、旬の味が楽しめて面白そうですが、そんな駅弁を食べてほしい車窓は?

3つあって、まずは肥薩おれんじ鉄道の東シナ海が見える所が最高ですね。
そして、日豊本線の錦江湾沿いのところ。
あとは、指宿枕崎線もイイですよね。
共通するのはみんな「海」ということで、ぜひ“鹿児島の3つの海”を見てほしいです。
トンネルが多い新幹線でサクッと鹿児島へ来て、D&S(観光)列車などで、ローカル線の旅を駅弁と一緒にじっくり楽しんでほしいですね。

老舗の意地で黒豚駅弁を極めたい!

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出水駅観光特産品館「飛来里」で販売される「松栄軒」の駅弁、昼過ぎには完売のことが多い。

●これから力を入れていきたいことは?

もっと、「黒豚」を極めた駅弁を作りたいですね。
確かに今、「極 黒豚めし」という駅弁はあって、これも年々、作り方を変えたりして、ブラッシュアップさせています。
火の入れ方、さらに柔らかく出来ないか、タレなども、チョコチョコ変えているんです。
それがもっと極まった“究極の黒豚”でやりたいと、今、企画を練っているところです。

●来年の駅弁グランプリで、お目にかかれそうですか?

実はまだ、黒豚駅弁で1位になったことが無いんです。
これを来年は「九州駅弁グランプリ」に出して、僕らが一番力を入れている「黒豚」で、ぜひともグランプリを獲りたい!!!
そういう意味では、まだ、僕らも「黒豚」という全国に名の知れている食材を活かしきれていないのかなということで、そこに力を入れてやっていきたいと思っています。

(インタビュー終わり)

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出来たての「松栄軒の味くらべBOX」

鹿児島・出水を拠点に駅弁を手がける「松栄軒」。
その看板駅弁を1つの折詰で食べられるのが、「松栄軒の味くらべBOX」(1,100円)です。
包装もそれぞれの駅弁の包装が半分ずつ描かれたものになっています。
この駅弁は、平成25(2013)年3月に決勝大会が行われた「第9回九州駅弁グランプリ」に出品され、東京駅の「駅弁屋 祭」でもおなじみの駅弁ですね。

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松栄軒の味くらべBOX

包装を外し、ふたを開けると、先日、単独でもご紹介した「極 黒豚めし」と、鹿児島県産黒毛和牛を使った「牛めし」がきっちり分かれて登場しました。
特に「牛めし」は、出荷証明書付の鹿児島産黒毛和牛を、秘伝の特製ダレで、甘辛くすき焼き風に仕上げています。
日本トップクラスの畜産県・鹿児島の味がギュッと詰まった駅弁です。

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錦江湾からの桜島

「松栄軒」の看板にも使われている錦江湾からの桜島。
2000年頃、私が初めてこの区間を乗った時、ちょうど爆発のタイミングに差し掛かり、当時の475系電車の二段窓から火山灰がすり抜けて来て、窓枠に置いていた手が真っ黒になりました。
鹿児島は、これがある意味「日常」という、スケールの大きさが魅力の地域だと思います。
その意味では廃業寸前の「松栄軒」を立て直し、東京駅で鹿児島の黒豚駅弁を食べられる「日常」を作ってしまった松山社長のスケールも大きいもの。

『松栄軒は松山家の基本。創意工夫をしてやっていくしかない!』

松山社長の言葉からは、鹿児島・九州の駅弁への強い思いが感じられました。
「えびめし」「いかめし」といった魚介系駅弁から、「黒豚」を軸とした肉駅弁に転換して10年余り。
まだまだ進化を遂げそうな鹿児島の黒豚駅弁に、これからも要注目です。

*「駅弁屋さんの厨房ですよ!」シリーズはこちらから↓↓
シリーズ「駅弁屋さんの厨房ですよ!」(vol.1「祇園」編)~伊東駅「いなり寿し」(600円) 
シリーズ「駅弁屋さんの厨房ですよ!」(vol.2「丸政」編①)~小淵沢駅「甲州かつサンド」(700円) 
水戸駅「常陸牛 牛べん」(1,050円)~駅弁屋さんの厨房ですよ!(vol.3しまだフーズ編①)
出水駅「えびめし」(930円)~駅弁屋さんの厨房ですよ!(vol.4松栄軒編①)

(取材・文:望月崇史)

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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