あけの語りびと

業界の常識を打ち破る!『捨てないパン屋』を営む夫婦「あけの語りびと」(朗読公開)

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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
上柳昌彦あさぼらけ 『あけの語りびと』

広島市のパン屋さん『ドリアン』は、パン職人のご主人、田村陽至(ようじ)さんと奥さんの芙美(ふみ)さんが二人で営む小さなお店です。
今、この店が大きな注目を浴びています。

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パンが安い? 違います。何十種類ものパンがある? 違います。
『ドリアン』がスゴイのは、ここ2年あまり、パンを一個も捨てていないこと。
暗いうちから早起きをして、精魂込めて焼いたパンも、売れ残れば廃棄するしかありません。
けれども、作り方と売り方と働き方を変えることによって、『ドリアン』は、パン業界の常識を打ち破り、捨てないパン屋に生まれ変わってしまったのです。

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どうしたら、こんな〝奇跡〟を起こせるのか?
早速、ご主人の田村さんにうかがってみました。

田村陽至さんは40歳の三代目。実家の店を継いだのは、12年前でした。
張り切っていた田村さんは、店をリニューアル。
手作りの具にこだわった総菜パンや菓子パンをそろえ、流行りの天然酵母のパンも始めました。
店に並べた商品は40種類。田村さんは、夜の10時から翌日の夕方まで眠る間もなく働きづめだったといいます。

この努力の甲斐あって、評判の人気店にはなったものの、楽ではなかった経営。
何よりも辛かったのは、店の閉店後、廃棄処分にするパンの多さでした。
25リットル入りの袋がふくらんで行くのを見るたびに思ったそうです。

こんなに働いてるのに、なぜダメなんだ?
従業員たちに満足な給料も払えない。パン作りの技術を教える時間もない。
追い詰められた田村さんは、ここで決断しました。
(このままではいけない。もっと勉強しなければ)!

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2012年、田村さんは『ドリアン』を休業。
パン作りを修行し直すために、ヨーロッパへと旅立ったのです。
一件目、二件目、そして三件目に門を叩いたのが、オーストリア・ウィーンの名店「グラッガー」というお店でした。

見学を志願した田村さんに「グラッガー」の主人は言ったそうです。
「だったら、明日の朝、8時に来なさい」
「8時???」
田村さんは、不思議に思いました。
パン職人の仕事は、朝の暗いうちから~というのが常識です。
(そうか、8時からなら、終わりは夜になるだろう)と覚悟しました。

ところが!
「グラッガー」の職人たちの仕事は、午前中だけで終わってしまったのです。
その作業は、悪く言えば〝手抜き〟だらけでした。
パン生地の成形も型抜きも無し! 日本では常識の生地の2回発酵も無し!
ただ、粉と塩と水だけを練り上げ、薪の石窯でじっくり焼き上げる。
教わったことはただ一つ「材料の粉は、最高級のものを使うこと」
これだけで、比べものにならないほどおいしいパンが焼けたのです!

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(一日15時間も働いてきた俺は、いったい何をやって来たんだろう)
まさに、目からウロコ・・・の状態でした。

帰国した田村さんは早速、店を再開!〝実験〟を始めました。
まず売るパンは、ゴロリとした「カンパーニュ」など2種類に絞りました。
材料は、北海道・十勝産の有機栽培の小麦のみ!
輸入小麦に比べて、価格は4倍ほどもしましたが、具材を無くして原価を抑えました。
具材が無いことで、日持ちが2週間も延びました。

次に「働き方」も変えました。店を開けるのは、週に三日だけ!
店は奥さんに任せて、自分は朝の4時から11時までパンを焼くだけ…。
午後は体を休め、次の仕事までの充電をすることができました。

そして「売り方」です。
焼きたてのパンは、厨房の横に並べて代金の箱を置く無人販売。
売れ残ったパンは、地元の野菜移動販売などに託す。
受注生産の定期購入サービスも始め、日本全国に送れるようになりました。

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定期購入 (Boulangerie deRien HPより)

「うちの小麦で作ったパンが残ったら送ってください。全部買います」という小麦生産者からの男気あふれるメールからも勇気をもらいました。
こうして、パンを捨てない店『ドリアン』が生まれたのです。

田村さんは、しみじみ振り返ります。
「親父は「焼きたてパンの店」を売りに、身を粉(こ)にして働きました。
でも息子の僕から見て、その姿は決して幸せそうには見えませんでした。
僕が今、やっているのはヨーロッパの古い焼き方かも知れません。
でも新しいものは、いつか必ず古くなる。古いものは、いつまでも古くならないんです。」

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2017年4月26日(水) 上柳昌彦 あさぼらけ あけの語りびと より

朗読BGM作曲・演奏 森丘ヒロキ

番組情報

上柳昌彦 あさぼらけ

月曜 5:00-6:00 火-金曜 4:30-6:00

番組HP

眠い朝、辛い朝、元気な朝、、、、それぞれの気持ちをもって朝を迎える皆さん一人一人に その日一日を10%前向きになってもらえるように心がけているトークラジオ


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