6月9日、神戸港を皮切りに全国各地で見つかっている、強い毒性を持つ外来種のヒアリ。
ついに先週、大井ふ頭で新たに卵や幼虫・さなぎを含むヒアリおよそ100匹、横浜港の本牧ふ頭では700匹以上が発見され、ふ頭で繁殖したと見られます。さらに茨城県の内陸・常陸太田市に運ばれていたのが発覚と、関東でもあちこちで確認されています。
ヒアリがどんな生態で、どんな点が問題なのか?
今後繁殖を防ぐためにどうしていくのか?
日頃の疑問を、時間の許す限り専門家の方にぶつけていきたいと思います。
電話口には、ヒアリを始め、外来種に詳しい国立環境研究所 五箇公一(ごか・こういち)室長がいらっしゃいます。
先生はヒアリに噛まれたことがあるそうですが、どこで?
どんな状態になるのでしょうか?五箇) アメリカ、ヒアリの研究所。10カ所か20カ所ぐらい肌に触れたと思ったらすぐに刺してきた。その間1秒もない。火蟻と書くように、火の粉を散らしたような痛み。
非常に強い攻撃性ですぐに刺し、人によってはアナフィラキシーショックを起こし亡くなる。実数をおおまかに示すと、全米で1000万人が刺され、10万人がアナフィラキシーショックを起こし、亡くなるのは100人。ヒアリに刺されたことで死に至る確率は0.001%。治療を受けている人の数なので、治療を受けていない人はここに入っていません。低いと見る向きもあるが、ゼロではない。また、どんな人がアナフィラキシーショックを起こすかはわからない。
原産と言いますか、もともとはどこに住むアリなのでしょうか。
五箇) 南米ブラジルです。ブラジルには天敵がいて、数は淘汰されている。ところが日本など他の場所で天敵がおらず、一度繁殖すれば大変な勢いとなります。ブラジルではアマゾン流域に住み、成虫・幼虫も含めたセットで川を渡って生き延びることもある、たくましいアリです。
日本各地の港を中心にヒアリが発見されていますが、まだ定着していないのでしょうか?今後のヒアリへの対応では、どんなことが重要になってくるでしょうか。
五箇) 今年一気にやってきたのではなくて、前から来ていたのだろうと。まだ定着はしていないと思われる。ただ、愛知県春日井の例のように、コンテナを土のある状態の環境へ移動すると、大変まずい。ヒアリの“女王アリ”は1つの巣に10匹から数十匹ほどいる。寿命は7年から8年で、1日に2000個前後の卵を産むとされるので、羽アリなので、別の場所へ飛んで行ってオスとくっつき、短期間のうちに爆発的に数が増えてしまう。
とにかく『初期対応でヒアリを定着させないこと』、が絶対。アメリカはこれに失敗して、もはや定着して根絶できない状況。他に、オーストラリア、中国、台湾など14の国と地域で確認されていて、いずれも多額のお金をかけて駆除に努めているが、まだ根絶は難しいのが現状。
対策が成功した国と言えば、ニュージーランド。上陸して間もない時に発見し、巨額を投じて薬剤で幼虫を殺し、定着を防いだ。今後、五箇先生たちが行う初期対応について教えてください。
五箇) ヒアリの巣ができるまでには、1年から1年半の時間がかかる。その間にモニタリングを強化し、発見すれば「薬剤包囲網」をつくる。コンテナを消毒する手だても考えられると思うかもしれないが、日本の港に膨大に毎日に運ばれてきているコンテナをすべてチェックするのは不可能。物流に影響が出て必然的に経済も停滞する。
最後にヒアリを見つけたらどうしたいいのでしょうか。
五箇) 家で見つけたら、殺虫剤で殺すこと。他のアリと同じように効きますから。アリ塚を見つけたら、絶対に近づかないように。日本にはアリ塚を作るアリはいないので、アリ塚はヒアリということになります。そして、自治体にすぐ連絡してください。
五箇さんら国立環境研究所は、10年、東京の大田区に侵入していることが分かったアルゼンチンアリを駆除。生態系への影響や農作物への被害が懸念される特定外来生物を、3年間にわたって毎月、殺虫剤の散布、毒餌の設置も続け、アルゼンチンアリの根絶に世界で初めて成功しています。
この技術と取り組みをヒアリの駆除にも応用できると踏んでいます。ヒアリの場合、3年で防除できるのではないか、ということです。
7月18日(火) 高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より