三島由紀夫の”割腹演説”の音声収録逸話に学ぶ【報道部畑中デスクの独り言】

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三島由紀夫の”割腹演説”の音声収録逸話に学ぶ【報道部畑中デスクの独り言】

割腹自殺の前、バルコニーから演説する作家・三島由紀夫 (提供:産経新聞)

私どもニッポン放送はラジオ局、「音が命」です。音の世界も最近の技術の進歩は目覚ましく、例えば5月の韓国大統領選挙の中継レポートでも、お聴きの方はその音質の良さを感じていただいたのではないかと思います。
かつてはこの手の海外中継は長らく電話で、音質も"電話ならでは"のものでした(それはそれで味があるのですが)。今回、韓国の中継ではスマートフォンの特殊なアプリを使用しました。逆に音質が良すぎて、海外っぽい臨場感に欠けるという「贅沢な悩み」さえ出てきました。

その一方で、結構"アナログ"な工夫もしています。私どもは取材の際、様々な方法で音声を収録しますが、遠方の音を収録する時は「物干しざお」という方法をしばしば使います。文字通り、物干しざおのような長い棒=ブームを使い、その先にガンマイクという文字通り銃口のような形をした指向性の強いマイクを取り付けて収録します。テレビニュースでもよくご覧になる光景かと思います。

ただ、この物干しざお、結構重いんです。特にラジオ局の記者は、よほどの大きな取材でない限り、取材と音声収録を「一人二役」でこなすため、さすがにプロ用の重いさおを
常に携帯するのは苦しい。何とかならないかと考えていたところ、テレビでやっていた観光客に関するニュースで、「これだ!」とひざを打ちました。

三島由紀夫の”割腹演説”の音声収録逸話に学ぶ【報道部畑中デスクの独り言】

写真① 自撮り棒を取り付けたところ

ご存知「自撮り棒」です。さっそく近くの家電量販店で入手し、アタッチメントにはスマートフォンの代わりにICレコーダーをビニールテープで固定し、レコーダーには直付けのガンマイクを接続してみました。これがなかなか具合がいい。物干しざおと違って格段に軽量、しかも普段の長さはわずか20㎝ほど、小さいショルダーバッグにもすっぽり入ります。そして伸ばせば最長1mにもなります。

規制線が設けられるなど警備が厳しい取材、大勢の報道陣が詰めかける混乱の現場ではこれが威力を発揮します。また、記者会見や講演の取材でもテーブルにマイクを立てられないような時もあります。そういう会場では一般に音声分配器という器具に録音機を接続して収録しますが、それさえない場合は、高い天井のスピーカーにマイクを向けて音声を録音します。この時も効果はてきめんです。写真にもある警視庁築地警察署の会議では、
組織犯罪対策部長のコメントを明瞭に収録し、ニュースに反映しました。とにかく軽量だから、片手に自撮り棒とメモ、片手にペンをもって、文字を走らせることもできるのですね。

三島由紀夫の”割腹演説”の音声収録逸話に学ぶ【報道部畑中デスクの独り言】

写真② 記者会見ではマイクを立てる場合が多い。2017年4月25日 日本郵政の記者会見で

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写真③ あるホテルの取材現場 マイクを立てられない時は各社、音声分配器につないで音声を収録する

 

三島由紀夫の”割腹演説”の音声収録逸話に学ぶ【報道部畑中デスクの独り言】

写真④ 2017年7月11日 警視庁築地警察署で行われた会議 発言者ははるか先 さあ私の左手は?

三島由紀夫の”割腹演説”の音声収録逸話に学ぶ【報道部畑中デスクの独り言】

写真⑤ 天井スピーカーから流れる音声を"自撮り棒装置"でキャッチ。テレビ局の"物干しざお"の姿も

話は思い切り横にそれますが、こんな逸話を思い出しました。自動車には「トランクオープナー」という運転席にいながらにしてトランクのふたを開けられる装備があります。
ワイヤーとチューブを介してレバーとトランクをつなげる仕組みで、機械的にトランクという重い鉄板を開けるのは当初かなり難儀でした。何とか軽い力で開けられないか…開発者はヒントをデパートの台所用品売り場で得ました。フライパンなどに施されているテフロン加工、その滑りのよさを活用し、チューブの内部に同様の加工を施すことでワイヤーとの摩擦を低減、問題を解決したといいます。
仕事のアイデアは思わぬところに転がっているもの…今回の自撮り棒もこのテフロン加工のフライパンのようなものかもしれません。

一方で、いかに明瞭で迫力ある音声を収録するか…これは一にも二にも取材対象にいかに近づけるかということに尽きます。いまから40年以上前、作家・三島由紀夫の"割腹演説"の音声を収録するため、木によじ登り、マイクを枝に括り付けて収録、スクープ音声の収録に成功した…あるラジオ局の逸話はいまも語り草になっています。
技術がいかに進歩しようとも、インターネットが発達しようとも、ニュースソースに少しでも近づくのは記者の原点…「プロ魂」は忘れないでいたいと思います。

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