安倍首相が英・メイ首相をもてなす理由とは?
公開: 更新:
9/1(金)FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!③
北朝鮮への圧力を強化する方針で一致
7:10~やじうまニュースネットワーク:コメンテーター宮家邦彦(元外交官・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)
イギリス・メイ首相と対北朝鮮に関して連携を強化する方針
安倍総理大臣は一昨日の深夜にはトランプ大統領とおよそ30分間、2日連続の電話会談を行い、「今後の対応でトランプ大統領と完全に一致した」と述べ、昨日はNSC(国家安全保障会議)の特別会合に、来日中のイギリスのメイ首相を招き、ミサイル発射を「暴挙だ」と非難しました。外国の首脳をNSCの会合に出席させるのは異例で、北朝鮮に対する国際包囲網構築への強い決意を滲ませました。
安倍総理は夕方には迎賓館で日英首脳会談を行い、朝鮮半島の非核化と、国連安保理制裁決議の厳格な履行に向け、連携を強化する方針で一致しました。以下は、安倍総理とメイ首相です。
安倍総理大臣)北朝鮮に対する圧力を一層強化していくこと。そのために、中国にさらなる役割を求めていくことで、メイ首相と一致できたことは大変有意義であります。
メイ首相)今週の、北朝鮮のミサイル発射は暴挙でありました。この不法行為に対抗すべく、安倍総理大臣と私は、一緒に協力することに合意いたしました。
森田解説委員)日英両首脳は北朝鮮に関する共同声明も出し、ミサイル発射を「言語道断の挑発行動」と非難したほか、安全保障や経済分野に関する共同宣言も発表しました。
一方、経済関係では、ハイレベルの実務者による日英間の「産業政策対話」という対話の関係を新しく作る、ということで合意しています。
一方、北朝鮮のミサイル発射を受け、航空自衛隊のF-15戦闘機と、アメリカ空軍の巡航ミサイル搭載可能なB-1戦略爆撃機などが、昨日、共同訓練を行い、アメリカ軍機はその後、朝鮮半島上空で、韓国軍とも共同訓練を行いました。これについて、北朝鮮の朝鮮中央通信は、「ミサイル発射訓練に仰天した者たちの、つまらない空元気に過ぎない」と主張しています。
トランプ大統領は30日に北朝鮮問題について、「対話は解決策ではない」とツイートし、再び態度を硬化させています。日本政府は、北朝鮮が6回目の核実験を強行すれば、石油の禁輸、輸出禁止を巡る議論が本格化すると踏んでいるのですが、政府関係者の中には、「日本が太平洋戦争に突き進んだのも、石油禁輸がきっかけだった。生命線を絶てば戦争になりかねず、中国は絶対に受け入れない」と指摘しています。緊張緩和の糸口は見えていない、という状況です。イギリスは日本にとって最初の同盟国だった
高嶋)「2日間破格の待遇でメイ首相をもてなした」と新聞は書いているのですが、京都へ行って、それで東京に来て、いろいろあって。東京の辺りにもユニオンジャックと日章旗がずっと飾られていて、「あ、やってるな」という感じです。国旗に関しては、何を基準に決めるのですか?
宮家)いい質問ですね。元々、旗を出すのは、国賓とか公賓とか、そういう人に限られていたのです。だけど、昨日話を聞いたら、最近はもっとフレキシブルに、偉い人が来たときは、その都度の判断で旗を揚げるかどうか決めるのだそうです。ずいぶん自由になりました。昔はルールがありましたが。
高嶋)京都とかはえらく喜んでいましたね。
宮家)それはそうですよ。京都には国際会議場もあるし、見るところもいっぱいありますから。もっとああいう形でやるといいと思います。総理も忙しいので、毎回行くわけにはいかないかもしれないけれど。
高嶋)でも、自分がロンドンに行ったときに、非常に手厚くもてなされたという、そういう認識がある。
宮家)日本の最初の同盟国はイギリスですからね。日英同盟があった。あまり言うと怒られてしまうかもしれませんが、イギリスが香港を統治していたころ、「アジアのパワー」だったのですよ。だけど、香港を返してしまい、EUに入って、ヨーロッパの国のフリをしていましたが、やはりヨーロッパではないな、と。すると、本来の姿に戻るわけです。それが何かというと、「自由貿易の海洋国家」なのですよ。その意味では、日本もイギリスも、大きな大陸の端にある小さな島国で、シーレーンで、自由貿易で食っている国なのだから。そういう意味では、両者が近づくのは久しぶりですが、非常に自然なことだと思います。
イギリスとの新しい関係は成るか高嶋)「対北朝鮮問題」に関して、イギリスが北朝鮮に関心を持っているとも思えないのですが、どうですか?
宮家)2つあって、1つは、やはり六者協議というのがあって、ヨーロッパにあまりゴチャゴチャ言われたくないという気持ちもあると思うのですが、これだけ勝手にミサイルを撃たれたら、日米韓だけでは……中国もフラフラしているし、やはりヨーロッパを、G7を巻き込んでいかなければいけない。そういう意味では正しい行動だと思います。
高嶋)本音は、やはりビジネスにあるわけですよね?
宮家)どうでしょうね。ビジネスの人たちはもちろんそうでしょうけど、首脳レベルで、ビジネスのためだけに動いている、ということはないですね。やはりイギリスも生き残るには、ヨーロッパ大陸との関係はこれ以上延びないわけですから。そうであれば、ご無沙汰していたところとの関係改善。それから、イギリスの場合はもちろんアメリカと組んで生きていかなければならない。その一環として日本があるのは当然だし、日本からすればイギリスみたいなある程度影響力のある国がたまたま来て、たまたま(北朝鮮が)撃ってきたわけですから。これはNSCに来て貰って、ドカンと打ち上げる。これは両方、それなりの安全保障の問題も含め、利益があったのではないでしょうか。
高嶋)日本風に言うと「阿吽の呼吸」ですね。
宮家)イギリスとはそんなに対立がないですから。
「権利はそのまま、義務は負わない」というイギリス側の主張に難色を示すEU
高嶋)イギリスと言えば、EUから離脱しましたよね。いま交渉をやっている最中です。だけど、イギリスは「離脱した後もEUと、良い経済関係を持っていたのと、同じような高待遇をしろ」みたいなことを言っていて、EU側は「冗談じゃない」と。ユンケルさんとか、高級官僚が言うわけですよ。これはどういうことなのですか?
宮家)ようするに「イヤになったから」と言って自分から出て行くわけでしょう?なのに、「いままでの特権は全部残しておいて」というのは……
高嶋)いまは、その前のままの状況でビジネスはやっているわけですよね?
宮家)そうです。いまはまだ、法的にはEUのメンバーですから。ただ、あと2年以内に決着を付けなければいけない。離脱となったら、イギリスはEUの特権を失うわけです。そのときにどの程度新しい関係を作れるのかを、いま交渉しているわけです。イギリスが「義務は負わないけど、権利だけはそのままにしたい」と都合のいい話ですから。
高嶋)メイさん、この前選挙でぼろ負けしたでしょう?
宮家)あれも少しみっともなかったですよね。
高嶋)ものを言えるバックグラウンドを強くしようとしたら、かえって弱くなってしまった。
宮家)そうですね。だけど仕方がないです。彼女が受け継いだイギリスというのは、どうにもならない状況で、「EUを出る!」と決めてしまったところで、「どうぞ」というわけですから。
高嶋)それでスコットランドとか、あの島国があちらこちらで。連合王国ですから……
宮家)日本みたいに中央集権でしっかりした国ではないので、大変ですよ。
高嶋)これから、どういう方向に進んでいくのでしょうか。
宮家)イギリスが割れて、スコットランドが独立するとなったら、もう終わりでしょうね。でも、あの人たちの底力はというのはあると思っています。でなけば、英語がこれだけの共通語になるとは思えないし。誰もスペイン語やフランス語は喋っていないでしょう?「なぜ英語なのか?」というところに、イギリスの強さがどこかにあるのでしょうね。
高嶋ひでたけのあさラジ!
FM93AM1242ニッポン放送 月~金 6:00~8:00