【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第268回】
さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回は、9月9日から公開となる『三度目の殺人』を掘り起こします。
是枝裕和監督と福山雅治が再タッグ、オリジナル脚本で挑む法廷心理ドラマ
勝つことにこだわる弁護士・重盛が弁護を担当することになったのは、殺人の前科がある男・三隅。解雇された工場の社長を殺害し、死体に火をつけた容疑で起訴されている三隅は、犯行を自供しており、死刑はほぼ確実。しかし重盛は、なんとかして無期懲役に持ち込もうと調査を始める。調査を進めるにつれて、重盛の中で違和感が生まれていく。金目当ての私欲な殺人のはずが、いまいち釈然とせず、三隅の動機も二転三転。やがて意外な事実が浮かび上がり…。
カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した『そして父になる』から4年。福山雅治と是枝裕和監督が再びタッグを組み、日本映画史に残る名作が誕生しました。法廷心理サスペンスでありながら家族、殺人、法制度といった社会問題にまで斬り込み、是枝監督ならではの鋭い視点が光る一作です。
“裁判で勝つためには真実は二の次”と割り切っている弁護士・重盛に福山雅治、得体の知れない不気味さを秘めた容疑者・三隅に役所広司、物語の鍵を握る被害者の娘・咲江に広瀬すず。さらに吉田鋼太郎、斉藤由貴、満島真之介、市川実日子、橋爪功ら実力派キャストが是枝組に集結しました。
その緊迫感あふれる演技に、息を呑むこともしばしば。事件の真相は?本当に殺したのか、殺してないのか?重盛と同じように観客も容疑者に翻弄され、そのストーリーテリングは素晴らしいの一言。
そしてすべてを知った後、いま一度、本作のタイトルを思い返してみると…。得も言われぬ感情が押し寄せてくることでしょう。
本作は8月30日(日本時間では31日未明)から開幕した第74回ヴェネチア国際映画祭のコンペティション部門に選出されています。是枝監督にとっては、1995年に初監督作『幻の光』で金のオゼッラ賞を受賞して以来、実に22年ぶりのヴェネチアでのコンペ出品。
受賞結果は9月9日(日本時間10日未明)に発表されますが、現地での反応にも期待が高まります。
三度目の殺人
2017年9月9日からTOHOシネマズスカラ座ほか全国ロードショー
監督・脚本:是枝裕和
出演:福山雅治、役所広司、広瀬すず、斉藤由貴、吉田鋼太郎、満島真之介、松岡依都美、市川実日子、橋爪功 ほか
©2017 フジテレビジョン アミューズ ギャガ
公式サイト http://gaga.ne.jp/sandome/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/