永瀬正敏×ジム・ジャームッシュ、27年ぶりのタッグ『パターソン』

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【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第263回】

さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回は、8月26日公開の『パターソン』を掘り起こします。


何もない日常こそ、美しく新しい

永瀬正敏×ジム・ジャームッシュ、27年ぶりのタッグ『パターソン』
舞台は、ニュージャージー州パターソン。

街と同じ名を持つバス運転手のパターソンの一日は、朝、隣で眠る妻のローラにキスすることから始まる。
そして仕事に向かい、決まったルートでバスを走らせ、乗客の会話に耳を澄ます。仕事を終え帰宅すると、妻と夕食を取り、愛犬のマーヴィンと散歩に出かけて、バーで一杯だけビールを飲む。
そして詩人でもある彼は、心に浮かぶ詩を秘密のノートに書き留めている。

そんなパターソンの何気ない7日間を映し出していく…。

永瀬正敏×ジム・ジャームッシュ、27年ぶりのタッグ『パターソン』
1980年代から90年代、日本のミニシアター・ブームの立役者である、ジム・ジャームッシュ監督。4年ぶりに日本で公開される長編劇映画は、バス運転手パターソンの何気ない日常を切り取った人間ドラマです。

主人公のパターソンを演じるのは、『スター・ウォーズ フォースの覚醒』のアダム・ドライバー。そして『ミステリー・トレイン』以来27年ぶりにジャームッシュ作品へ参加した永瀬正敏が日本人詩人に扮していることでも話題の一作です。

永瀬正敏×ジム・ジャームッシュ、27年ぶりのタッグ『パターソン』
先にお伝えしておきますと、本作では殺人も爆発もロマンスも起きません。誰も死なないし、難病にもなりません。
あるのはただただ、パターソンさんの一見代わり映えしない毎日。

しかし詩人でもあるバス運転手パターソンの目に映る“日常”は、すべてが美しくて魅力的。彼が大切にしている大量のマッチ箱もバスのフロントガラスの曲線も、サプライズとユーモアに満ちています。

日々同じことを繰り返しているようでも日ごとに少しずつ違うこと、そして平穏な日常がいかに幸せに満ちているかを、観るほどに気付かされるのです。

ささやかな幸せや喜びを静かに温かな視点で描き出すジム・ジャームッシュ監督の手腕は、実に詩的。詩についての映画でありながら、この作品そのものが一遍の詩のように美しく芳醇なことに驚かずにはいられないでしょう。

永瀬正敏×ジム・ジャームッシュ、27年ぶりのタッグ『パターソン』
もうひとつ触れずにいられないのが、パターソンの愛犬マーヴィンの名演技。演じるのは、元救助犬のメスのイングリッシュ・ブルドッグのネリーちゃん。パターソンとの兄弟とも悪友とも取れるような関係性には、思わず笑みがこぼれます。

その素晴らしい演技が評価され、第69回カンヌ国際映画祭では「パルム・ドッグ」賞に輝きました。
彼女の存在にも、是非ご注目を。

永瀬正敏×ジム・ジャームッシュ、27年ぶりのタッグ『パターソン』
パターソン
2017年8月26日からヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
監督・脚本:ジム・ジャームッシュ
出演:アダム・ドライバー、カーラヘイワード、ゴルシフレ・ファラハニ、永瀬正敏 ほか
Photo by MARY CYBULSKI ©2016 Inkjet Inc. All Rights Reserved.
公式サイト http://paterson-movie.com/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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