銃乱射事件でも銃規制が進まないアメリカの事情とは
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10/6(金)FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!①
誰もが銃規制について、両方の意見を持っている国である
6:32~ニュースやじうま総研!ズバリ言わせて!:コメンテーター宮家邦彦(元外交官・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)
銃規制に賛成派の人間も拳銃を所持しているのが当たり前の世界
ラスベガスでの銃乱射事件に対しての、全米ライフル協会の対応。銃規制に関する新たな法案などの情報が、連日報道されています。日本では理解しにくい銃規制反対派の感情について、今回は元外交官の宮家邦彦さんが、実際にアメリカで体験した、銃に関する日本では考えられないエピソードを交えつつ、詳しく解説します。
高嶋)ラスベガスで銃乱射事件があって。犯人はとんでもない銃マニア。そして、それに対するトランプさんの素っ気ない態度。いろいろ考えるとね……よく「アメリカの病巣の中心は銃」と言われています。宮家さんも、アメリカに友人がいて、銃にまつわる体験をされているようですが、実感の話を今日は伺いたいと思います。
宮家)アメリカで世論調査をやると、47%が「銃に賛成」なのですが、僕に言わせれば、同じ人間でも銃規制に反対と賛成、どちらの側面も持っているのです。僕にはワシントンに住んでいる、政治家志望の弁護士の友人がいるのですが、ワシントンでは銃は持たないし、品行方正です。だけど、僕がイリノイ州のイーストセントルイス……ミシシッピ川をはさんで、ミズーリ州のセントルイスの反対側ですね。僕の好きなジャズ奏者のマイルス・デイヴィスさんがそこ出身なので、見に行きたかった。友人がたまたま、そこの選挙区だったのですよ。それで、彼にレンタカーでイーストセントルイスに観光に行くことを話したら、「いや、絶対に迎えにいく」と言われて。それで空港に着いたら、迎えに来てくれた。そして車に乗ったら、車内にはライフル2丁と、ピストルが3丁。そして実弾が何10発もあった。「どうしたの?」と聞くと、「お前、イーストセントルイスに行くんだろう? 命がけだぞ」と。
僕は初めてですよ。あんなに銃を何丁も見たのは。高嶋)彼は銃規制に関しては、賛成と反対、どちら派なのですか??
宮家)ワシントンでは銃規制派なのだけど、実際に地元に帰ったら……だって、何マイルも走らないと次の家がないようなところに、もし武装した集団に一軒家が襲われたら、ね。これは銃が無くては怖くて生きていけないですよ。
銃規制が、一時的な感情になってしまう理由は根深い
高嶋)場所によっては、絶望的なところもあるのですね。襲われたら命はない、みたいな。
宮家)ありますよ。日本みたいにちょっと歩けば交番があるわけじゃない。交番は何10キロも先なのですから。なので、そういうことを考えると、アメリカ人の心の中でも、銃規制に対する感情は賛否が両方あるわけです。だから、事件が起きて、フィーバーが始まると、「これは大変だ、銃規制をやらなければ!」と言うのだけど、長続きしないのはそういうことです。半分はやはり「銃が必要」と思っている。
高嶋)CNNでは、「銃乱射事件が発生すると、銃規制の支持が急激に高まる。しかし、その後、熱も冷め、議会で法案が通過することもない。数ヶ月でほとんど消えてなくなるだろう」と伝えています。今度、また規制の法案を民主党が出すというのが記事になっていますが……
宮家)全米ライフル協会が絶対潰しにくるだろうけど。まあ、ライフル協会が悪いのではなく、やはりアメリカ人の心の中にある、「自衛しなければいけない」という気持ちがある限りは法案と言っても、大したものではありません。「速射、連射が可能になる装置の販売を禁止する」というものです。おかしいですよね。「それなら、単発式ならいいのか」という話です。だけど、それくらい我々とは感覚が違う。僕はそれを正しいと言うつもりはありませんが、アメリカの大きなところに住んで、西部開拓時代からの伝統を考えると、日本のように島国で海に囲まれていて、刀狩りに成功した国とは、やはり違うのだなぁ、と。日本は安全ですよ。こんなに安全なところはない。
高嶋ひでたけのあさラジ!
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