【ライター望月の駅弁膝栗毛】
新横浜駅に入ってくる東海道新幹線N700系。
現在は「のぞみ」「ひかり」「こだま」全ての新幹線が新横浜に停まります。
下りでは早朝6:00に新横浜始発の「ひかり493号」も設定され、後続の「のぞみ」より早く名古屋・京都・新大阪に到着するダイヤとなっています。
もちろん新横浜駅でも、「崎陽軒」の各種駅弁が販売されています。
さて、横浜駅弁「崎陽軒」特集でお届けしてきた駅弁膝栗毛。
崎陽軒のシウマイで忘れてはならないのが「ひょうちゃん」です。
「ひょうちゃん」とは、「昔ながらのシウマイ」「特製シウマイ」の箱に入ったしょうゆ入れのこと。
昭和3(1928)年にシウマイが発売された時は小さなガラスの瓶でしたが、戦後、ひょうたん型の白い磁器になりました。
この磁器に「フクちゃん」などで知られる漫画家の横山隆一さんが“目鼻をつけてあげよう”と表情をたくさん描いて「ひょうちゃん」と命名、昭和30(1955)年に生まれ、今年で「62歳」となりました。
崎陽軒の工場見学で、最初に圧倒されるのが「ひょうちゃんの歴史」です。
初代「ひょうちゃん」は、いろは48文字にちなんだ48種類!
2代目「ひょうちゃん」は、昭和63(1988)年の「崎陽軒」創業80周年を記念して誕生。
イラストレーターの原田治さんによって80種類作られ、大小2タイプ、4色の色違いまで入れると、全640種類も登場し、平成8(1996)年からはコルク栓からゴム栓になりました。
そして3代目「ひょうちゃん」は、平成15(2003)年の横浜工場リニューアルに際して登場。
初代の横山隆一さんのデザインが復活し、今も48種類の「ひょうちゃん」が活躍中です。
「ひょうちゃん」で見逃せないのが、「期間限定」のひょうちゃん!
過去にはクリスマス限定バージョンや崎陽軒創業100周年記念バージョン、さらには劇団四季とコラボした「キャッツひょうちゃん」もありました。
そして記憶に新しいのが平成27(2015)の「還暦記念ひょうちゃん、金色の還暦記念ひょうちゃん」。
「ひょうちゃん」のコレクションをしている方には、垂涎の的だったことでしょう。
今回の工場見学は、崎陽軒・広報マーケティング部の高井未希さん、伊藤亮さんにご案内いただきました。
今年は、夏に通常のシウマイ5個を8個に増量した「メガシウマイ弁当」を登場させたり、秋口にはウェブサイトの企画から始まった筍煮を増量した「ドリーミング筍シウマイ弁当」、唐揚げを増量した「忍法唐揚げの術シウマイ弁当」を限定販売するなど、様々な面白い話題を提供しています。
来年の創業110周年、「シウマイ」誕生90周年に向けて、一体どんなコトを仕掛けてくるのか・・・今からとても楽しみです!
横浜駅弁・崎陽軒特集のトリは、崎陽軒が誇る中華の技がギュッと詰まった駅弁、「横濱中華弁当」(1,080円)に飾ってもらうことにしましょう。
横浜市内に中華料理をはじめとしたレストランも展開している「崎陽軒」。
「シウマイ」はもちろん、各種中華料理も丁寧に作られていて、美味しくいただくことが出来ます。
さあ、荘厳な掛け紙を外しますと・・・?
【お品書き】
・白飯
・海老のチリソース
・黒酢の酢豚
・青椒肉絲(チンジャオロースー)
・油淋鶏(ユーリンチー)
・昔ながらのシウマイ
・春巻き
・カニ風味蒲鉾とクラゲと錦糸玉子の酢の物
・ザーサイ
ふたを開けた瞬間から、そこはもう中華料理屋さん!
特に黒酢で仕上げられた本格派の「酢豚」からは、食欲をそそる香りがフワッと漂ってきます。
食感が楽しいのは、「海老のチリソース」と「青椒肉絲(チンジャオロースー)」。
「海老の・・・」は海老のぷりぷり感、「青椒・・・」はピーマンと筍のシャキシャキ感がたまりません。
思えば海老は「えびシウマイ」や「横濱チャーハン」などでもおなじみ、「筍」もシウマイ弁当などで筍煮として人気を博しているだけに、「崎陽軒」十八番の食材なんですよね。
だからこそ、本格中華駅弁でも、驚異の「冷めてもおいしい」を実現出来ているのでしょう。
横浜は始発駅・東京からわずか20分前後という、駅弁屋さんとしては極めて厳しい立地です。
およそ90年前、「シウマイ」を登場させた時も、最初はなかなか売れず大変だったといいます。
それでも「崎陽軒」は、この厳しい環境を、ひたすらアイディアで乗り越えてきました。
初代社長・野並茂吉氏は、なんと飛行機からビラを撒くように、「シウマイ」の無料券を配布して、知名度アップに努めたという逸話もあり、そのDNAが綿綿と受け継がれているのです。
そして、リニューアルされた崎陽軒の工場見学にも、アイディアがいっぱい!
少人数のグループに分かれて、映像で大まかな流れを把握(予習)してから、実際の様子を見て(復習して)いくストーリーになっているので、製造工程がとても分かりやすくなっています。
また、スクリーンの設置の仕方や、話題の展開にライブ感も感じられるのも面白いところ。
さすが、3か月先まで常にいっぱいという大人気の工場見学です。
私自身、「崎陽軒」を知ったのは、小さい頃、ニッポン放送の昼のラジオから流れていたCMソングの「シウマイ旅情」でした。
ラジオと駅弁はよく似ていて、その地域に行かないと聞くことが出来ない番組があり、その地域でないと食べられない駅弁があります。
そして、ラジオも駅弁屋さんも、1人1人との細やかなコミュニケーションで成り立っています。
以前、横浜駅のコンコースにある売店を訪ねた時、欲しい駅弁が運悪く品切れとなっていました。
この時、店員さんは機転を利かせて下さって、店内にある端末で近くの売店の在庫状況を確認、
「○○のお店にはまだあると思うから、よかったら行ってみて」と仰ってくれました。
たくさんの店舗がある横浜駅ならではの光景かと思いますが、「売切れでごめんなさい」で終わらせず、フワッと心が温かくなる一声をかけていただいたことは、今でも忘れられません。
大きな工場で大量生産が行われていても、1つ1つに「人の温もり」が感じられる崎陽軒の駅弁。
地元「横浜」にしっかり根ざした上で、「冷めてもおいしい」という駅弁の原点を貫くために、崎陽軒の皆さんはたくさんの情熱を注いでおられます。
その熱がどこかで私たちに伝わっているからこそ、“温もり”ある駅弁になっているのではないか?「冷めてもおいしい」駅弁は、実は“冷めてもあったかい”駅弁ではないかと私は思います。
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/