平成28年1月からマイナンバーカードの交付が始まって、はや2年。基本をおさらいしておきますと・・・国民一人一人が必ず持つ12桁の番号が「マイナンバー」。自治体から、その番号を知らせる紙のペラペラの「通知カード」というものが全員の手元に送られてきたはずです。
それを申請して、写真入りのプラスチック製のカードに変えたものが「マイナンバーカード」。氏名、住所、生年月日、性別が記載されていますので、本人確認のための身分証明書として利用できる。
しかし、マイナンバーは人にむやみに教えてはいけない。知られないようにしなければならない。そんなワケでこのカードを持っていても、ガチガチに硬くなって何も利用していない人が多いのではないでしょうか。実はいろんなポイントが貯まって、そのポイントを還元できる場が増えてきているのです。
マイナンバーカードを作っている人は、去年10月現在、1,250万人。国民のおよそ1割が所有しています。マイナンバー自体は国民全員に与えられていますが、国民から申請がなければ、プラスチックの“カード”は交付できない。総務省としては、もっともっと国民に申請させて、このカードを普及させたい。
よって、カードを持つことで様々な利点があるよ~というメリットづくりに必死です。実は去年9月から、クレジットカードや航空会社系カードなどで貯めたポイントやマイルを、マイナンバーカードで一括してポイントにして、地元の商店街や各地の名物がもらえるようになったんです。早い話が、“あなたのマイナンバーカードがポイントカードになるんですよ!”ということなんですが、そのアピールがあまり浸透していないようで、なかなか伝わっていない。その辺をまとめてお話ししたいと思います。
マイナンバーカードで集められるポイントの名前を「自治体ポイント」と言います。つまり、民間で発行されたいろんなポイントを「自治体ポイント」に変換してせっせとためることで、いろんな自治体でポイントが使えますよ、ということです。
では、どんな民間のポイントを変換できるのか? 総務省が音頭を取って、“うちのポイントをマイナンバーカードのポイントに変換してもいいですよ”と同意した会社がいくつかあります。カード会社の「三菱UFJニコス」「三井住友カード」「JCBカード」「クレディセゾン」など。それから、航空会社だと「ANA」に「JAL」のマイレージ。さらに、NTTドコモや中部電力、関西電力。結構、有名企業のポイントが使えるんですね。こうした有名企業のカード会員はのべ2億5千万人。カード会社や航空会社のマイレージを別々にもらっている人なら、それが一緒にできるという仕組みは魅力的ではないでしょうか。
これらの民間のポイントやマイレージは、少なくとも年間1兆円程度あって、毎年増加傾向にあります。サービスの一環ですが、発行されるポイントのうち、3割程度は有効期限切れなどで活用されていない。だったら、なんらかの方法で活用すべきだ、特に自治体の経済活動を活性化することに役立てられるのであれば一番いい。と国が考えた、というわけです。
では、実際に「自治体ポイント」はどんな場面で利用できるのか? ポイントの出口を見てみますと・・・9月のスタートから、一番利用者が多いのは、「めいぶつチョイス」という全国の名産品を買えるサイトで、支払いの際にポイントで決算するという方法。つまり、ポイントを使えばタダで名産が手に入ることになります。
サイトに並んでいるのは、黒毛和牛や黒豚、幻のカニや、こだわりのだし、とらふぐ、フルーツ、日本酒など。食品ばかりでなく、木製家具やゴルフの高級ドライバーもあります。
もう一つ、利用が多いパターンは、地方の商店街で支払いの際にポイントを使ったり、美術館などの公共施設の入場料に使ったりする、という方法です。確かに、地元への貢献となりますよね。
さて、仕組みはわかったと思うのですが、大きな問題点があります。それは、マイナンバーカードでポイントを使えるようにする方法がちょいと難しい、という点です。
あなたが、コンピュータやIT関係に詳しい方ならば、そんなに問題ないでしょう。というのは、手持ちのマイナンバーカードを、ポイントを貯められるように登録手続きをしなくてはいけないのですが・・・カードから「マイキーID(アイディー)」を取得する、というステップを必ず踏まなくてはいけません。
そのマイキーIDを取得するためには、「カードリーダー」を使って、マイナンバーカードの情報を読み取らなくてはいけないのです。え? カードリーダーってなに? クレジットカードを使うときに、ピッと情報を読み取る機械がありますよね? アレのことです。カードリーダーは1,000円くらいで市販されているものでして、誰でも買えるモノではあるのですが・・・そこまでして手間をかけるかどうか? それが問題です。さらに、このカードリーダーで読み取ったマイキーIDを、「マイキープラットフォーム」というクラウド上で管理できるように登録しなければいけない。ああ・・・ここまで説明すると「なんのことやら?」と躊躇する人が多いのではないでしょうか。
しかし、このマイナンバーカードと自治体ポイントを積極的に使っていこうとする自治体も出てきています。23区の中で、豊島区は他に先駆けて、この自治体ポイント変換システムの社会実験をスタートさせています。空き家問題や人口減少に悩む区の積極策、とでも言いましょうか。
具体的なポイント還元の一つの方法を紹介すると・・・豊島区内に本社がある「クレディセゾン」は、この2月末までセゾンカードの永久不滅ポイント100ポイントを区のポイント550ポイント(550円相当)に交換できるキャンペーンを実施。たまった区ポイントは、池袋や巣鴨など90店で買い物に利用できます。
また、マイキーIDを取得するなど、マイナンバーカードの初期設定が難しい点についても、豊島区民は豊島区立中央図書館で「マイキーIDを作成」を手伝ってもらえるというサービスも始まっています。
民間で使われていないポイントをマイナンバーカードを通して一括してまとめて、自治体や地方の名産という出口で使ってもらう。こうして、マイナンバーカードを地域活性に役立てたい、ひいてはマイナンバーカードの利便性をもっと高めたい、という国の意図はよくわかりましたが・・・
さきほど言った登録がヤヤコシイ、これが一つの問題点。さらに言えば、出口である「ポイントの使い先の充実」も今後の課題となっています。地方の名産をもらえる「めいぶつチョイス」のバリエーションはなかなか豊富なのですが、個々の自治体での使い道がまだまだ少ない。例えば関東ですと・・・東京はさきほどの豊島区、埼玉は所沢、神奈川は川崎市の「モトスミ・ブレーメン通り商店街」、と使い道が限られています。地方によっては、「美術館・博物館の入場料」など公共の場所で使える場合もあるのですが、なにせ関東近県はまだ積極的ではない。
また、民間のポイントだけにたよるのではなくて、自治体の方からもポイントをマイナンバーカードに与える方法を模索しています。たとえば、ボランティアをしたら、図書館を利用したら、健康が増進させたら、転居してきたら、結婚したら、家族が増えたら・・・など節目ごとにポイントを与えてはどうか、という考えが出てきていて、これは近いうちに実現するところがありそうだということです。
マイナンバーカードのポイント換算。走り出したばかりではありますが、課題もある分、うまくいけば便利なカード利用法として定着するのかもしれません。
1月9日(木)高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より
高嶋ひでたけのあさラジ!
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