トランプさん、ぜひ日本車に乗ってみて下さい!
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【報道部畑中デスクの独り言】
先日、日本の2017年度の車名別自動車販売台数が発表されました(日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会の集計)。
1位 N-BOX(ホンダ)22万3,449台
2位 プリウス(トヨタ)14万9,083台
3位 ムーヴ(ダイハツ)14万5,643台
4位 デイズ(日産)13万6,505台
5位 タント(ダイハツ)13万4,660台
6位 ノート(日産)13万1,119台
7位 アクア(トヨタ)12万8,899台
8位 ワゴンR(スズキ)12万1,224台
9位 スペーシア(スズキ)11万3,691台
10位 ミラ(ダイハツ)10万4,221台
11位 C-HR(トヨタ) 10万2,465台
12位 フィット(ホンダ) 9万9,734台
13位 フリード(ホンダ) 9万5,483台
14位 ヴォクシー(トヨタ) 9万1,187台
15位 シェンタ(トヨタ) 9万756台
16位 ヴィッツ(トヨタ) 8万6,214台
17位 アルト(スズキ) 8万3,439台
18位 セレナ(日産) 8万1,005台
19位 ルーミー(トヨタ) 7万9,247台
20位 カローラ(トヨタ) 7万7,288台 …
トップ20のうち、軽自動車は8車種、コンパクトクラスが8車種を数えます。「軽自動車・コンパクト」が日本市場の売れ筋であることを見事に映し出しています。特にトップ10に限ると軽自動車は実に7車種に上ります。
ランキングを見るにつけ、日本のユーザーは実に賢明な選択をしていると改めて感じます。
クルマというものは多くの場合、時を経てモデルが代わるごとに大型化していきます。日本車もその例に漏れません。その背景には自動車産業がグローバル化し、国際基準に合わせる必要があるため、居住性を向上させるため、厳しい衝突安全基準に適合させるため、そして日本では今から30年ほど前、まさに「バブル期」に物品税が廃止され、それまで「贅沢品」とされていた3ナンバー車に対する購入のハードルが低くなったことなどが挙げられます。
しかし、車は大きくなっても、道路や駐車場が広くなっているわけではありません。私が通っていた病院の駐車場は昔ながらの区画で、ギリギリのスペースに駐車して助手席のドアから降りたこともありますし、自宅近くには狭い路地が多く、“職人技”のように駐車してある車を見かけます。その土地その土地で使いやすいサイズがあるのです。かつて販売の上位を占めていた車種が姿を消したのは、魅力そのものが乏しくなったこともありますが、国際基準の名のもとに、日本で使いやすいサイズから自ら勝手に逸脱してしまったものも少なくありません。
というわけで、ユーザーが選ぶ車が使いやすいサイズに集中するのは当然と言えますが、中でも軽自動車は厳然と決められた規格の中で、乗用車全体の約4割を占めるほどになりました。戦後、事実上の前身である三輪トラック、国民車構想を経て、軽自動車には普及促進のために登録車より低い税金、車庫証明不要という“特典”が設けられました。その間、規格も排気量で360cc、550cc 、660ccと拡大、現在の寸法は全長3,400㎜、全福1,480㎜、全高2,000㎜以内となっています。パワー競争、廉価商用車、ハイトワゴン、低燃費競争…時代時代のブーム、そしてその都度繰り広げられる熾烈な競争の中でメーカーは技術を磨き、日本独自の文化と言えるほどの発展を遂げてきました。
また、小さい車は制約が多いがゆえに高度な技術が必要な割に、利益は少ないと言われます。それゆえ部品調達やコスト削減など、利益を出すための並々ならぬノウハウを蓄積してきました。スズキの鈴木修会長が数年前、「限られた規格の中で切磋琢磨してつくり上げられた軽自動車は、技術者からみて“芸術品”だ」と胸を張っていたことが思い出されます。私は普段はコンパクトカーに乗っていますが、毎年訪れる東日本大震災の被災地で借りるレンタカーはほぼ軽自動車。十分な広さや走行性能、物入れの豊富さなどかゆいところに手が届く配慮、小回りの良さ…市街地を走るのに「これ以上何が必要か」と思います。
一方、アメリカではこうした軽自動車の規格などが「非関税障壁」として、是正を求める声があります。特にトランプ大統領は就任以降、保護主義的な姿勢を見せる中で、特に自動車に関してはかつて「アメリカ人は毎年何百万台も日本車を買っているのに、日本人がほとんどアメリカ車を買わないのは不公平」と発言しました。最近も輸入車の規制強化をちらつかせたりしています。
日本の自動車ユーザーの1人として申し上げたいと思います。トランプさん、日本に来たら、ビースト(「野獣」の意、大統領専用車の通称)に乗って“大名行列”も結構ですが、一度、日本の軽自動車、コンパクトカーにお乗りになって下さい。そして、ファミレスやコインパーキング、狭い路地に入って“車庫入れ”をしてみて下さい。いかに自国の事情に合わせてつくられているかがわかります。そして“アメ車”に対し、日本人の財布のひもがなかなか緩まない理由もご理解いただけるのではないでしょうか。