自動車の自動運転を支える技術とは?
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【報道部畑中デスクの独り言】
先日、臨海副都心にある東京ビッグサイトで「オートモーティブ・ワールド」という自動車部品を中心とした展示会が開かれました。華やかなモーターショーとは違い、業界向けの商談会という”硬派“な催しです。しかし、だからこそ華やかな世界の裏で何が動いているのか、最先端を見ることができるわけです。EV、コネクティッドカーなど次世代自動車の開発競争が激化する中、特に自動運転については「自動運転EXPO」というコーナーが新設されるなど、高い関心が集まりました。
自動運転はクルマの側ではカメラやレーダー、センサーなどで構成されます。これに路面の状況やドライバーのクセを認識するための人工知能が加わります。一方、クルマの外では精密な地図、道路上での感知システムも必要になってきます。そこには既存の自動車メーカーだけでなく、新興のベンチャー企業も参入しています。その数は年々増加しているようで、この分野が今後世界的に大きく成長する可能性を示しているものと言えます。
「ストラドビジョン」という会社のブースには画像認識のシミュレーションをするモニターや、人工知能のデバイスが展示されていました。現在は単眼カメラにより、動いている車両の奥行きなど三次元的な情報も検出・解析します。奥行きがわかれば速度がわかる…ブレーキをかけるタイミングを制御できるわけです。この会社では人工知能も使って世界トップクラスの検出速度と精度を実現しているということです。
さらにこのブースでは「シーンテキスト検出&認識」という高度な技術も展開されていました。道路標識や案内板を文字で検知できるソフトウェアで、例えば臨時でできた通行止めの立て看板なども認識できます。「通行止め」と認識すれば、クルマの方で警告音を発する、通行止め区間の進入を回避するよう制御する…こうした仕掛けも現実になるかもしれません。
自動運転に関する技術面での今後の課題を聞いたところ、対象物の認識精度を高めることを挙げていました。具体的には4K,8Kなどカメラの解像度を上げる、夜間や降雪時などの対応には近赤外線カメラなどを搭載して対応する…などなど。しかし、精度が上がれば情報量も増えるので、瞬時に解析するために高性能な処理装置が必要になります。さらにより高速な伝送経路、ケーブルの性能向上も求められます。つまり、一つのデバイスだけが突出してもダメで、システムの部品一つ一つを総合的にレベルアップさせる必要がある…しかも、そのシステムは既存の自動車とは全く違う枠組みで存在すると言っても過言ではありません。まさにベンチャー企業のチャンスはここにあります。
いまやこのようなベンチャー企業に大手の自動車メーカーが商談に訪れているのです。これまでと違う開発には外部とのタッグが欠かせないという考えの一方で、開発の主導権を奪われてはならないというメーカー側の危機感もにじみます。ある企業の担当者は「だからこそメーカーが来るんじゃないですか」と話していました。
「画像解析・認識技術」「衝突回避センサー」「地図の精密表現」「処理装置の高性能化」「装置の保護技術」「ケーブル類の集積化」「セキュリティ技術」「周辺のサービス」「メインテナンス」「法制化」…自動運転技術はまさに様々な分野が高次元で融合する「総合芸術」の趣があります。自動車産業は元々さまざまな部品産業が集積する“すそ野の広い”業界ですが、自動運転技術のすそ野の広さはその比ではないと思います。自動運転の実現にはまだまだ課題が多いものの、展示会では“ゴール”に向けて一歩一歩進む底知れぬパワーと主導権をめぐる駆け引きが感じられました。