シリア攻撃~トランプ大統領が決断を下せない3つの理由

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4月13日  FM93AM1242ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』今日の聴きどころ!②

シリア攻撃決断下さず トランプ大統領、英仏と協議継続
7:10~お早う! ニュースネットワーク:コメンテーター宮家邦彦(外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

シリア 東グータ 地区 ドゥーマ 化学 兵器 攻撃 子供

2018年4月8日、シリア・東グータ地区ドゥーマでの化学兵器によるとみられる攻撃後、手当てを受ける子供(ゲッティ=共同) 写真提供:共同通信社

シリア攻撃~慎重に検討するトランプ大統領

内戦が続くシリアで化学兵器の使用が疑われる攻撃によって多数の死傷者が出たことを受け、アメリカのトランプ大統領は12日ホワイトハウスでNSC(国家安全保障チーム)とシリアへの対応をめぐって協議した。ホワイトハウスによると、最終的な決断は下されなかった。

飯田)このシリア攻撃、去年もこの時期に巡航ミサイル撃ちましたよね。

宮家)レッドラインという言葉を使いましたね。オバマ時代にもありました。オバマさんはその時レッドラインという言葉を使いながら、結局レッドラインというのは攻撃するということですから、それができなかった。それに対する不満があったこともあり、去年はやった。今回は時間がかかっているように見えるかもしれませんけれど、いくつか去年と違うところがあります。まず第1にロシアがもの凄く反発しているわけです。

飯田)なんかもう全面戦争になるぞっていうような脅しをしていますよね。

宮家)一つ間違えるとロシアと喧嘩になってしまう。そうすると前のように楽にはできない。
第2に、今度はイギリスとフランスが参加するかもしれない。これも水面下で随分と動いていると思いますが、イギリスもフランスもやるかな、やりそうだなという感じの段階でこれから物事が最終的に決まっていくでしょう。

飯田)なんかフランス大統領のマクロンさんがフランスのテレビで「確たる証拠があるんだ」というような話までしていますね。

宮家)そういうのはあるのかもしれませんね。恐らくフランスもイギリスも前向きに考える。そうするとアメリカだけのオペレーションではなく、大きくなりますから。失敗できませんので慎重にやらなくてはならない。
3番目にアメリカの国内でロシアゲートも含めて、トランプさんの個人弁護士の事務所が捜索されたりしているわけでしょう。トランプさんはあれで相当怒っています。そういうような状況で、議会の方はまた何かやるのだったら議会の方に武力行使の承認を求めろという声があるわけです。ですからそこはやはり時間をかけてやらなくてはいけない。失敗したら大変ですから。
よく言われるのはボルトンさんとかポンペオさん。ポンペオさんは今議会承認の真っ最中ですが、新しい国務長官です。彼らが強硬派だからやるだろうと言われますが、それは必ずしも彼らが強硬派だからではないのですよ。去年やって、レッドラインを超えたらやると言ったわけです。それで今年になったらやりませんと言ったら、化学兵器の使用を事実上黙認するのと同じです。そういうことはできないと思います。去年の段階で踏み切ったのであれば。ちなみに去年はどうやって踏み切ったかというと、スティーブ・バノンという人がいて大統領の国家戦略官。彼が反対したんですよね。

飯田)反対していましたよね、あの時そういえば。

最終的には攻撃する可能性は高い

宮家)彼は、国際的な問題について介入するのをやめなさいと、アメリカ第一なんだからという考え方だったにもかかわらず、結局トランプ大統領は攻撃を命令したわけです。何故命令したかというと、娘のイヴァンカさんに可哀想な子供たちの写真を見せられながら「これで何もしないの?」と説得されてやったのですよね。
今年イヴァンカさんが役割を果たすかどうかわからないけれども、今までのことを考えてこれでやらなかったら本当に逆効果になると、そういう判断をしているのだと思います。

飯田)慎重に検討はするけれども、最終的にはやる形になっていくと思いますか?

宮家)その確率の方が高いと私は思います。

飯田)これをやらないとオバマさんと一緒だろうということになってしまう。

宮家)それで国内でますます窮地に立つかもしれないので、そこは彼らも慎重にやっているのだと思います。ボルトンさんも就任したばかりでしょう。

飯田)安全保障担当の補佐官ですね。

宮家)それからポンペオさんはこれから議会承認ですから。やはり今までのような形で準備ができているわけではないと思います。

飯田)シリアが化学兵器を使う直前に、「もうシリアから退く」というようなことを言いましたよね。

宮家)あれは衝動的な発言でね、困るんですよ、ああいうことを言うとロシアだってシリアだってイランだって、「ほぅそうかい、だったらやっちまえ」となりかねない。非常に不用意だったと思います。すぐに安全保障チームもそれを打ち消して、今度は全く逆のことを言っている。相変わらずですね。

シリア攻撃は必ずしも北朝鮮を見据えてのものではない

飯田)去年トマホーク59発を撃ち込んだと、米中首脳会談中にやったじゃないですか。あれで習近平さんがもの凄くビビった、北朝鮮もビビったという説がありますが。

宮家)今回は確かにそういう見方もあります。しかし北朝鮮の問題の方は今話し合いになっているでしょう。そして準備が進んでいるわけです。そしてシリアの問題はCNN等でしか見ていませんが、アメリカの国内でこれは北朝鮮があるからなんとかしなきゃという議論は全く無いんですよ。今は中東の方が重要で、そしてそこにイランがいてですよ、トルコもちょっかいを出していて、イスラエルがシリアを攻撃しているわけですよ。その代わり一つ間違えたら暴発しかねない状況の下で、全く新しい二人が安全保障のチームの中に入って来る。そして大統領は相変わらず予測不可能となれば、それは皆心配しますよ。
北朝鮮の話は北朝鮮の話でまた別途ある。全体としてこの新しいチームが強硬になっているのは間違いないけれども、それで直ちに北朝鮮のことを考えるからやらなくてはいけないということは必ずしもないと私は思います。

飯田)「選挙に受けるのが経済などの内政なのか、戦争も含めた外交なのか、トランプさんは今見極めているんじゃないでしょうか」という指摘がリスナーの方から来ています。

宮家)そうですね、見極められるほど彼に余裕があるのかどうか、彼にとってはその日その日で、例えばテレビを観て「これは使える」と思ったらすぐTwitterしちゃうわけですよ。誰も制御できないというのは恐ろしいところで、外交も使える、もしくは外交も一つの要素ですよ。そしてもし支持率アップ、支持率ダウンを食い止めることができるのであれば、それはある程度衝動的に言ってしまったり、そこを考えてやってくれると嬉しいのですけれどね。どうもよく考えていないのではないかとアメリカの人が言っているから。恐ろしい話だなと思います。

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