シリア内戦は米露の壮大なる出来レース!?
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4月16日 FM93AM1242ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』今日の聴きどころ!②
シリア攻撃~正当性強調するアメリカ・イギリス・フランスにロシア反発
7:10~お早う!ニュースネットワーク その1:コメンテーター須田慎一郎(ジャーナリスト)
アメリカはアサド政権のバックアップをするロシアに対し独自制裁をする方針
アメリカ・イギリス・フランスは、アサド政権を支援するロシア軍を避け、日本時間14日午前、シリアの化学兵器関連施設への攻撃を行ったが、ロシアは強く反発している。アメリカとロシアの緊張が高まるなか、果たして化学兵器への抑止力になるのか。攻撃はいつまであるのか。
飯田)土曜日に一報があったこの攻撃。まずはミサイル105発打ち込んだとのことですが、共同通信によると、アメリカのヘイリー国連大使が15日、メディアのインタビューで、アサド政権の後ろ盾になっているロシアに対し、アメリカの独自制裁を16日に発表する方針を明らかにしたということです。
また、21カ国と1機構で作るアラブ連盟は、サウジアラビアで首脳会議を終え、15日に、シリア攻撃への支持を表明したようです。各国が思惑入り乱れています。専門家はアサド政権の化学兵器使用を断定
飯田)今回は、何度もシリアを取材されている軍事ジャーナリスト、黒井文太郎さんと電話がつながっています。まずは今回の攻撃ですが、どういう風にご覧になりましたか?
黒井)「やる」と言っていたので、特に、東グータ地区での大包囲線。子供も沢山死ぬような、大虐殺と言ってもいい攻撃。それがニュースになっていましたので、そのタイミングでの化学兵器使用に対して、トランプさんが反応したということで、ある程度予想されていました。
飯田)化学兵器を使用したのが政権側か、反体制勢力なのか。ネット上で飛び交っていますが、どう思いますか?
黒井)ロシア側がそう言っているのですが、世界のいわゆるシリア・ウォッチャーは、そういうロシア側の言い分を信じている人はほとんどいないと言っていい。これまでもアサド政権は普通に化学兵器を使用してきているので、それを疑う声は専門家の間ではほとんどありません。
化学兵器を止めても、シリアの空爆攻撃は続く
飯田)この先ですが、「化学兵器以外の物で非人道的な虐殺を行っている。あまり意味がない」と指摘する動きもありますが、アサド政権に対してプレッシャーになりますか?
黒井)「ロシアに被害が出ると大変なことになる」ということで非常に限定的になりましたが、それで破壊された物は非常に小さいですよね。ですから、これでアサド政権が終わることはない。実際には空爆の後も、アサド政権からの一般市民に対する空爆が激化しています。なので、これで止むことはない。化学兵器はしばらくやらないかもしれないけど、それ以外の爆弾による空爆は、これからも続くと思います。
飯田)黒井さんご自身もシリアといろいろコネクションがあると思いますが、今回の攻撃について一般市民の反応はどんな感じですか?
黒井)みなさんいろいろと思っているので、ネットとかで出てきますが、やはり僕が見ているところで多いのは、「この程度じゃダメだ。もっとやれ」と思っている人が多いですね。「自分たちが殺されている。殺しているのはロシアとアサドである。それをどうにか止めてくれ」と期待はあったのですが、それから見ると、このくらいの攻撃では……つまり、「科学兵器を止めただけではダメ」という声が多いです。
米露は互いに全面衝突しないギリギリの部分でやりとりをしている
須田)ちょっと伺いたいのですが、「ロシアに被害が出ると大変なことになる」と仰いました。その点で言うと、米露の衝突はいちばん恐れているところですが、その辺はどうでしょう? やはり、アメリカもロシアも、互いに配慮や意識はしているのでしょうか?
黒井)そうですね。アメリカ側もロシア側も、そこは警戒して、気にしているところなので。たとえばロシア側も口では非難していますが、軍事的にアメリカに何かすることはあり得ないですね。それと、アメリカが独自制裁をロシアにかけたりしていますから、対立は激化しますが、「両軍が戦闘に入り、第3次世界大戦」とはならないですね。
須田)ギリギリのところで互いに寸止め、と?
黒井)そうですね。やってしまうと大変なのは両方分かっていますから。そこは裏ルートを利用して、そういう状況にならないギリギリのところでやっていると思います。
飯田)向こうの市民を救うためには、国際社会としてはアサド政権に圧力をかけ続けるしかない、という形になりますか?
黒井)そうですね。なかなか難しいのですが、国連安保理にロシアがついている以上、国際社会で何かやるのは非常に難しいので、しばらくこの状況は打開のしようがないというか……今回は東グータという場所でしたが、アサド政権がこれと同じことを北部のイドリブや、ダラーなど、他の町を「やる」と宣言してしまっているので、同じように、町を1つずつ潰すようなことがどんどん続いていく。これをどうにか止めたいとは思いますが、ロシアがついているので、非常に難しい状況なのです。
飯田)その辺の構図は、北朝鮮の後ろに中国がついているのと似たような感じがありますね。
黒井)ただ、ロシアは裏で支えているだけでなく、もう当事者なのです。なので、アサド政権とロシアは一体なのですよ。むしろ、ロシア軍の方が、アサド政権の上位というか、監督指揮権みたいなものを持っていますから。もう同盟軍として動いている。
たとえば北朝鮮で言うと、北朝鮮に中国軍が入り、中国軍と金正恩軍が一緒に北朝鮮市民を殺害しまくっている……そういう状況を想像してもらえればいいと思います。米露の壮大な出来レースのなかで、シリア国民が亡くなっている現実
飯田)安全保障理事会の常任理事国がいると、どうにもならなくなってしまう。理想とはかけ離れたところにあります。第3次世界大戦まではいかないけれど、地域的な攻撃が続いていくということになるのですかね。
須田)本来的にはアサド政権の行動を止めるためには、地上軍の派遣がどうしても必要になってくる。ミサイルだけ撃っても一定程度のダメージは与えますが、行動は止められない。そうすると、アメリカを中心とした地上軍の派遣が必要ですが、アメリカも「そこまでは踏み込みたくない」というのが、実情なのです。
ただ、一方で、アメリカ大統領選挙にロシア介入疑惑のある、ロシアゲート事件。これを払拭するためにも、トランプさんはシリアやロシアに対して厳しく対峙する姿勢を国内に見せなければならない。何故なら、中間選挙があるからです。やはりトランプさんとしては、1発ミサイルを撃った方が、自分の選挙に、プラスに作用するだろうな、と。
だから、それぞれの特殊な思惑が働いて、今回の結果になったのではないかな、と思います。飯田)プーチンさんも、選挙には勝ったけど、国内の基盤を安定させるためにマッチョなところを見せておかなければいけない。
須田)そうですね。その意味で言うと、先ほど黒井さんが言ったように「ロシアとアメリカは水面下のパイプでつながっている。そこで協議した上での攻撃」というのが、現実なのです。
飯田)だから、全部外せたのですね。ロシアの兵士がいるところをアメリカ軍も知っていたから、外せた。これはそう考えると、複雑怪奇ですね。そう言ってもいられないのですが……。
須田)壮大な出来レースで。だけどその一方で、シリア国民があれだけ亡くなっていくのです。国際社会はそれに対して指をくわえて見ているだけでいいのか、という問題は突きつけられていると思います。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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