日米首脳会談~安倍首相はどこまで「したたか」に取り組めるか
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4月19日 FM93AM1242ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』今日の聴きどころ!②
日米首脳会談の成果~安倍政権に追い風となるか
7:10~お早う!ニュースネットワーク:コメンテーター鈴木哲夫(ジャーナリスト)
日米首脳会談~ポイントは拉致問題と経済問題
安倍総理大臣とトランプ大統領の日米首脳会談は、2日目の本日、両国の貿易や投資などについて議論を重ねた。総理は日本の立場を説明したうえで、貿易や投資問題を話し合う新たな枠組みを提案したと見られている。
飯田)まず全体として2日間、どうご覧になりましたか?
鈴木)ポイントはまさに「拉致問題」です。これを米朝首脳会談でちゃんと取り上げて欲しいというのを、トランプ大統領が「分かった」と言うのかどうか。それと、日米間の貿易問題ですね。通商問題と言ってもいい。これでアメリカは1対1の交渉で、FTA(自由貿易協定)で。とにかくアメリカファーストの人ですから、アメリカに都合のいいことばかり押しつけてきて、日本はどうなのか。日本はTPPでしっかり枠組みを作ってアメリカに備えるのを我慢して、いままでやってきた。このせめぎ合いですね。
初日は、「北朝鮮の拉致問題を米朝首脳会談で取り上げる」と言ったのは、進展だと思います。だけど、経済でどこまで押し込まれるのか。日本が押し返すのか。どういうタフな交渉になったか。そこが大きなポイントだと思います。飯田)経済についての2日目の会合の頭の部分だけ、カメラも入っていましたが、トランプ大統領は「何しろ貿易赤字が問題だ」と。「これを削減。縮小均衡にしたい」と仰っていたとか。
最後に安全保障を持ち出してくる米~安倍首相が試される会談
鈴木)日本からすれば言い分は山ほどあります。だけど、古くは通産省(現在の経済産業省)のOBの人たちも言うけれど、とにかく日米の1対1の通商交渉は、常に日本は負けてきている。かつて橋本龍太郎さんが大臣のとき一矢報いましたが、他はほとんど負けている。何故かというと、結局アメリカは、最後に安全保障を持ち出すんですよ。「誰が日本を守ってる?」と言われたとき、どうしても日本は譲らざるを得ない部分がある。まさにいまがそれです。北朝鮮のことでも、「拉致問題解決についてお願いする。さあ、その代わりに通商交渉では?」みたいに言われたとき、どこまで日本が筋を通していくのか。その辺、安倍総理は非常に難しい、試される会談になると思います。
飯田)経産省の官僚に聞くと、「アメリカが言ってくるより前に外務省もストップをかける」みたいな話もしています。
経済に関してはTPPを絡めながらのタフな駆け引きとなる
鈴木)安倍総理とトランプ大統領は、世界の首脳のなかでも非常に密接ですが、「パートナー」としてということであれば、なおさらイエスマンではなく、言うべきことは言うような関係になって欲しい。少なくとも言うべきことは言う姿勢を見せていくのは、大事だと思います。それが、安倍さんの下降中の支持率を跳ね返す試金石にもなってくる。今度の日米首脳会談の成果というのは、そこが、支持率を挽回できるかということにも直結するのです。
飯田)日米首脳会談後の共同記者会見がアメリカのフロリダ州でこれから行われますが、いま安倍総理とトランプ大統領が会見場に入ってきて、まずはトランプ大統領から冒頭発言となっていますね。これはホスト役の首脳側からやるということです。
2日目の議論は拡大した形で。総理だけでなく、西村官房副長官とか、茂木経済財政担当大臣も中に入っている。向こう側もUSTR(米通商代表部)のライトハイザーさんだったり。異例と言われましたよね。「新しい形で、茂木さんとライトハイザーさんがやる」みたいな報道もありましたが……。鈴木)いままでは麻生さんとペンスさん。副総理と副大統領でやっていましたが、もう少し多様化するような交渉になっていくだろうと見ていいと思います。単純に2トップがやるのではなく、TPPも絡めながらの駆け引きになってきますね。1対1の交渉しながらTPPのステージにどう戻せるか。ようするに、「こっちを譲り、こっちを取る」みたいな複雑な交渉になっていく。それで、経済閣僚が日本も入っているということは、実はこの首脳会談では、北よりも、経済。実務的なところで言うと、経済の方が大きな課題になっている可能性があります。
飯田)それで言うと、韓国に対しアメリカがFTAの再交渉をやって、為替の条項を入れてきましたよね。「通貨安、あまりやるなよ」と。これが日本に対しても来ると、けっこうキツいものがありますね。
鈴木)ようは、この通商交渉を見る場合、従来の日米……これは安倍さん周辺の外交ブレーン議員が言っていたのだけど、「日米問題と言うより、トランプ・日本問題」と。
飯田)ようするに、個人ですね?
米国内に向けての外交をするトランプ大統領
鈴木)そうです。トランプという珍しい大統領。何かというと、すでに中間選挙ではなく2期目に向け、国内でいろいろな準備を始めているくらいなのです。トランプ大統領の支持率は、コアなところでは止まっていますが、いまだに高くない。そういうなかで、トランプの政策は常に国内向け。国内の世論や支持率、支持層に向けられている。これが言い換えればアメリカファーストということかもしれないけど、トランプファーストなのですよ。だから、それでいくと、何を言ってくるのか分からない。逆に言うと、昨日まで言っていたことを急に変えてくることもある。さらに逆に言うと、日本を利用することもある。たとえば今度の米朝首脳会談も、日本は一生懸命に必死に「圧力だ!」と連携してきたけれど、CIA長官のポンペオさんが極秘に北朝鮮に行っていた。これも驚きましたよね。実はそこまで水面下で米朝で事前に話をしていた。こういうことが、日本にちゃんと教えられてきたのか。ハシゴを外されていないか。
トランプは「初の米朝首脳会談」と盛んに言うわけですよ。これはどこに向けて言っているのか。「世界の問題」とまで、昨日安倍さんと一緒のときも言いましたよね。「世界のトランプ」を演出することにより、国内世論に向けてということを考えているのではないかな、と。
日米通商交渉でも、彼のアメリカでの支援者・業界に有利になるような形に何を言い出すか分からない。日米というより、トランプを見極めて日本も対応しなければいけない。この辺が、従来の日米通商交渉と違うと、安倍さん周辺が言っています。飯田)アメリカの世論みたいなものに、ものすごく敏感ということですね。すると、外交交渉で1対1ということもありますが世論工作みたいなところ、この辺が中国や韓国の上手いところじゃないですか。日本も負けていられないところですね。
安倍首相に求められる外交での「したたかさ」
鈴木)これも前から言っています。安倍さんは外交に自信を持ってやっていますが、たとえば北朝鮮問題も、みんなで「圧力」と言っていましたが、逆に日本だけ抜け駆けして「拉致問題してくれるなら、独自に日朝首脳会談して、平壌宣言に戻してもう1度やってもいいよ」くらいのことをやる「したたか外交」が、安倍さんの課題になってくると思います。
飯田)トランプ大統領の冒頭発言がまだ続いていますが、メモでの情報によると、まずシリア攻撃についても言及し、「素晴らしい作戦だった。同盟国の働きに感謝する」と。「北への最大限の圧力を総理と確認した。朝鮮半島を非核化する、日米で緊密に連携する」と発言したようです。「北へ最大限の圧力を確認」という意味では、既存の路線を確認し、朝鮮半島の非核化に言及……この辺は予想されたところではありますね。
鈴木)そうですね。非核化はもちろんです。日本にとっては、拉致問題をどこまで入れ込んでくれるのか。本気でどこまでやってくれるのかを見なければダメですね。
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