日米首脳会談~トランプ大統領が北朝鮮へ送った重要なメッセージ

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4月20日  FM93AM1242ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』今日の聴きどころ!②

日米首脳会談が終了
7:10~お早う!ニュースネットワーク:コメンテーター宮家邦彦(外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

トランプ 大統領 安倍 首相

トランプ米大統領と会談する安倍首相=2018年4月17日、米フロリダ州パームビーチ(共同) 写真提供:共同通信社

日米首脳会談終了~トランプ大統領があえて「朝鮮半島の非核化」と言った理由

安倍首相とトランプ大統領は米フロリダで2日間の日程で行われた日米首脳会談を終えた。拉致問題に焦点をあてた北朝鮮への対応では日米の意見は一致したものの、貿易問題では考え方の違いが明らかになる形となった。

安倍総理)最重要課題である拉致問題の早期解決を促し、努力していくことでも一致しました。

飯田)昨日の日米首脳会談後にフロリダで行われた安倍総理とトランプ大統領の共同記者会見での、安倍総理のコメントです。注目されたポイントと言いますと?

宮家)拉致問題もしっかり入って、全体としてはいい流れですけどね。僕は最初トランプさんが喋り始めたときに、えっ! と思ったことが一つありました。彼は金正恩委員長と会い、「朝鮮半島の非核化に向けて話し合う」と言っているのですよね。朝鮮半島の非核化? ちょっと待てよ、日米で合意したのは北朝鮮の非核化でしょう? 朝鮮半島の非核化というのは元々北朝鮮がずっと使っている言葉でね、要するに「アメリカさん出て行ってね」っていうのが最終的な結論だから、本来は「朝鮮半島の非核化」という概念と「北朝鮮の非核化」という概念は全く違うのですよ。
日米では朝鮮半島ではなくて、「北朝鮮の非核化」で一致しているにもかかわらず、トランプさんが冒頭で「朝鮮半島の非核化」ということを言って、僕はびっくりしたわけです。

よく考えてみたらこの部分は日米の共同発表というよりは、北朝鮮に対するメッセージだと私は思います。そうであれば説明がつくのです。「金正恩さん僕らは一致しているよ。あんたのところの核をやめなきゃ駄目なんだよ。だけどこれから会うのだから一応北朝鮮の言っている言葉に合わせますよ」「朝鮮半島の非核化? いいよ、だけどこっちの言う朝鮮半島の非核化はあんたが核をやめることなんだよ」と。そういうことを伝えた上でその後なんて言っているかというと、「成功すると思わなきゃ会わないけれど、実りが無いのだったら行かないよ、行ってもすぐ席を立っちゃうかもしれないよ」という言い方をしているわけです。それは安倍さんに言ってもなんの意味もない話だから。これは北朝鮮に対して「言っておくけど甘くみるなよ、ここで決断しなかったらアウトなんだよ」ということを上手く言っているのだろうと思います。そうでないと説明がつかない。

飯田)確かに「朝鮮半島の非核化」で僕もドキッとして、向こうに取り込まれちゃったのかトランプさんと思ったのですがそうではないと。

「朝鮮半島の非核化」は金正恩委員長へのメッセージ

宮家)そこは微妙なのですが、恐らくそうではないだろうと思います。だってそれがもし本当だったら私が安倍さんなら、「トランプさん何言ってるんだ」とネジ巻くからね。でもネジを巻くというよりも、どうも事前に「こういう形でアプローチをしていきますから、一緒にやろうね」というのがあったのでしょう。「勿論、朝鮮半島の非核化と言っても実態は北朝鮮の非核化なんですよ、そこはわかってるよね」というような形ですり合わせを上手くやった。いろいろなことが発表されているけれども、発表されていないことが一番大事なんですよ、常に会談っていうのはね。
恐らくこの後「朝鮮半島の非核化について」米朝が話し合った後、もしかしたら決裂するかもしれないし、もしかしたら動くかもしれないけど、それこそ2020年までにいろいろな議論があるでしょう。いろいろな可能性、いろいろなオプションについて相当程度日米で突っ込んでいて…勿論発表できませんけど、手の内を出す必要はないですから…それを北朝鮮にチラチラ見せながら「舐めんなよ本気だぞこっちは」と圧力を掛けていると見ることができる。そしたら決して下手なやり方ではない、むしろ上手くやっているなと思いますけどね。

飯田)2020年までにお尻を切って話をするなんて話が出てきていますが、六ヶ国協議の時はお尻の部分が見えなかったのですけどね。

宮家)切ったってどうせ北朝鮮がそう簡単に核兵器を放棄するとは思えないから、そういう意味ではこれからなのでしょうけど。ああいう形でデッドラインを決めて、デッドラインをクリアする為には、今から始めなきゃいけないわけだから。そういう意味では具体的な第一歩をやらせると。途中で食い逃げするかもしれませんから、そうさせないように、十分見ながらやるという意味では一つのやり方かもしれません。

ポンペオ次期国務長官が訪朝~本来CIAは政策をしてはいけない機関

飯田)北朝鮮についてもう一つだけ、この首脳会談をやっている最中に、CIAの元長官で次の国務長官になるポンペオさんが平壌に行っていたという話が出てきました。このCIAルートっていうのはどこまで……?

宮家)CIAルートというよりも、ポンペオさんに対する個人的な信頼でしょうね。その前にティラーソンさんがいてクビにしたわけだから、あの二人は全然仲良くないから事実上機能していなかった国務省ってことですよね。でもね、CIAっていうのは情報収集をやるところですよね。本来の情報機関というのは政策をやってはいけないのですよ。情報機関が政策を語り始めたら、政策目的の為に情報の判断が狂ってしまう。だから絶対に政策の部門と情報の部門ははっきりわける。これがアメリカの情報機関のあり方の基本中の基本なんです。
だから本来であればポンペオさんという、CIAの長官を使ってはいけない。何故使ったかというと、国務省が機能していないからです。それはティラーソンさんが大統領と仲が悪いから上手くいかなかったのもあるけれど、同時に大統領も含めトランプ政権は国務省を目の敵にした。予算はバッサバッサ切るし、バタバタ人は辞めていくわけですよ。ですからアメリカの外交部門は殆ど機能していないと言ったら言い過ぎだけど、下っ端しか残ってないし信頼されてないから、外交をやってきた人を全く連れて行かずに、CIAの北朝鮮の担当官かなんかを通訳で連れて行ったのでしょう。それは危険なことなんですよ本当は。だけどいずれはポンペオさんが国務長官になるからいいじゃないかと言われたら、それはそうかもしれないけれど、通常ではないやり方をしているということです。

貿易問題~トランプ大統領の頭の中は支持者へ出すメッセージのみ

飯田)一方で日米首脳会談では貿易について、これが安全保障で譲歩する代わりに貿易では攻め込まれるなんてことを言いますが。

宮家)どっちみち攻め込まれる。トランプさんはもう選挙モードに入っている。中間選挙のことしか頭にない。そして2020年たまたま大統領選挙がある。彼は出る気ですからね。

飯田)2期目に行こうとしているのですか?

宮家)全ての貿易問題について、「自分の支持者に対してどういうメッセージを出すか」を考えているわけですよ。TPPはまず拒否して「二国間だ二国間だ」って言ってですよ、日本だけじゃないんですよ。中国なんかめちゃくちゃじゃないですか。ヨーロッパだって韓国だってみんな圧力かけて弱いところは譲歩させられてきているわけですよ。だけど鉄鋼に関する限り、日本にはあまり痛くないわけです。だって日本しか作れないものがあるわけだから。ですから慌てて譲歩したりする必要は無いので、日本はよく頑張ったと思いますよ。

飯田)これは今回、茂木さんとライトハイザーさんという二人でやるんだと。

宮家)アメリカの本心は、1つは中国をどうするか、特に知的財産権をどうするか。それから国内的にどうやって成果を出したと言えるかどうかです。僕はFTAを出してくるんじゃないかと思いますが、FTAというのはオハイオとかのおじさんたちが、FTAって言うのはダメだと言うに決まっているんですよ。それよりアメリカの兵器を俺が売りつけたんだぞ、と言った方が遥かに効果的なんです。ですから半分は本気でやっているのですが、半分は選挙だと思わないと見方を誤ると思いますけどね。

飯田)半年我慢すれば……

宮家)半年我慢したらまた次の選挙が来るから、彼は残念ながら自分で全部やれると思っちゃっているわけだからね。そういう意味では恐ろしいけれども付き合っていかなければならないのであります。

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