南北首脳会談~今後日本は何を考えて北の動向を見るべきか

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4/30 FM93 AM1242ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』今日の聴きどころ!②

日朝対話はあるのか~北朝鮮・金正恩氏が意欲示す
7:10~お早う! ニュースネットワーク:コメンテーター須田慎一郎(ジャーナリスト)

南北首脳会談~今後日本は何を考えて北の動向を見るべきか

南北首脳による共同宣言を受け、記者団の取材に答える安倍晋三首相 提供産経新聞

米朝会談に繋げることに成功した意味も込め、60点と判断

先週金曜日の南北首脳会談。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が、「いつでも日本と対話を行う用意がある」と述べていたと、韓国の文在寅が、安倍総理との電話会談のなかで明らかにした。最近も日本を激しく非難している北朝鮮の真意、そして日朝首脳会談実現の可能性について探っていく。

飯田)この話題などについて、今回は新潟県立大学国際地域学部教授で韓国政治にも非常に詳しい浅羽祐樹さんに電話が繋がっています。まず、南北首脳会談について、浅羽さんはどう思いますか?

浅羽)一応60点にしました。Twitterでアンケートしていたのでみなさんの点数を拝見すると、60点未満が87%で非常に高い。ですが、一応、辛うじて落第点は免れたと思います。大学の点数でたとえると、「優・良・可」の「可」ですね。

飯田)どこを評価してですか?

浅羽)「完全な非核化」という用語が辛うじて入ったところです。米朝に繋げることができた、ということですね。

飯田)前哨戦としての役割は果たした、と見るわけですか?

浅羽)そうですね。それが最大課題だった。「米朝首脳会談にトランプ大統領が応じない」という程では無かった。むしろその後に出てくるのは積極的姿勢ですよね。

飯田)トランプさんもツイートがすぐに出てきました。かなり評価しているようですね。

浅羽)ただ、「アメリカが応じる」ことと、「それが日本にとって望ましい水準になるか」は別なので、そこは慎重に見極める必要があると思います。

「いつまでに非核化するか」と「どの核についてなのか」を考えなければならない

飯田)事前に言われていたのは、非核化に関しては「検証可能」という文字だったとか、「不可逆的」も指摘されていましたが、これについて言及はなかったですね。

浅羽)そうですね。「完全な非核化」ということで、いわゆるCVID(完全で検証可能で不可逆的な非核化)のうち、2つは入ったのですが、VとI、「検証可能で不可逆的」が入っていない。そこをどのようにするか。
あと、2つ欠けていて。1つは「いつまでに終えるのか」です。これまでも非核化について合意があったわけですが期限を切っていなかったので、ちょっとずつ見返りを取られ、食い逃げされました。なので、遅くとも2020年でしょうね。トランプ大統領の任期中で、大統領選の局面にはいるまでに、全部片付けたい。ただ、それが盛り込まれなかった。これが1つ。
もう1つは、「どの核なのか?」です。「核なき朝鮮半島」と文言が入りました。「北朝鮮の非核化」と「朝鮮半島の非核化」では、まるで意味が違ってくるわけです。それが、韓国の在韓米軍とか、グアムから飛んでくる戦略資産も含む、と解釈する余地もある「核なき朝鮮半島」という文言ですので、この辺が懸念事項です。

日本の安全保障にも関わってくる

飯田)すると、在韓米軍だとか、グアムにいる米軍辺りまで言及があるとすると、日本の安全保障にも、非常に大きな問題となってくるわけですね。

浅羽)そうですね。なので、「北朝鮮の非核化」か「朝鮮半島の非核化」かの部分で、米朝首脳会談でアメリカがどう望むか。それに日本・韓国がどう働きかけるか。それがこれからの課題になりますね。

飯田)非核化について、北朝鮮サイドはかなり小出しに、「核実験場廃棄」とか、話をしていますよね。

浅羽)それは、「今後の、将来の核にたいして凍結」という意味で、コミット面と約束で公開するので、一定の検証の可能性も担保する、ということですが、すでに持っているものをどうするかが焦点だし、「核兵器になっていない核物質」とか、その他諸々どうなのか。つまり、「すべての」核と、ちゃんとなるのか。

韓国経由の情報だけで考えるべきではない

飯田)韓国新聞についてもチェックしていると思いますが、現地の報道の雰囲気はいかがですか?

浅羽)基本的にはとりあえず好意的ですね。慎重ながらも可能性に賭けてみよう、と。保守紙の朝鮮日報だけは「非核化の問題が最重要課題なのに非常に不十分」と一貫して警告していますが、その他はいくつかの保守紙も含め、慎重ながらも「可能性に賭けたい」という論調です。全体的に絶賛されていました。

飯田)日本メディアの報道も煽られるように、「歴史的会談だった」みたいに報じるところもありますが……

浅羽)韓国経由で情報が流れているからです。我々の朝鮮半島報道に関わる切り口が、韓国サイドによってフレームアップされている部分は気をつけなければいけない。日本は日本で、違う立場があるし、当然判断・対応もあるし。

“すべての”核実験場やミサイルを本当に廃棄するか注意深く見る必要がある

須田)「完全で検証可能かつ不可逆的な」という文言ですが、最近のポンペオ国務長官とか、ジョン・ボルトン補佐官の発言を聞いていると、アメリカなどが北朝鮮に入り、そういう作業を進めていく、いわゆるリビア方式。そんなイメージをしているようですが、これは北朝鮮にとって絶対に飲めないと思います。その辺のギャップが今後顕在化していく可能性については、どうでしょう?

浅羽)どのように検証するか、という部分ですよね。「5月中にも行う」と言っている核実験場閉鎖に関しては、北朝鮮が閉鎖するのを、アメリカと韓国の専門家メディアが見る、という話なので、主体は北朝鮮です。
リビアや南アフリカ、ウクライナ……核を持っていて放棄に成功した事例は、内部勢力が検証に入っています。なので、その辺をキッチリ見ていかないといけない。

飯田)かつての「冷却塔を吹き飛ばしたのをテレビで生中継」みたいな、セレモニーだけで終わってしまう可能性も高い、ということですか?

浅羽)5月の核実験場閉鎖というのは、2009年の冷却塔爆破のシーンがデジャビュのように浮かびます。それは現在あるやつで、しかも特定の豊渓里という実験場だけなので、「すべての」という部分をちゃんと見なければいけない。
あと、「すべての」についてもう1つ。米朝首脳会談で「すべてのミサイルをちゃんと扱ってくれるか」というところですね。アメリカ本土に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)とか、グアム・ハワイに届く中距離弾道ミサイル(IRBM)は破棄されるかもしれないけれど、日韓に飛んでくるスカッドやノドン。これも正確に同じ日本海域に落ちたことがあるので、いまのミサイル防衛では防ぎきれないです。

今後日本は防衛や平和条約関与について深く考えなければならない

飯田)同じところに4発同時、みたいになるともう防ぎきれなくなる?

浅羽)そうです。それが「すべてのミサイル」に含まれるかどうか、ですよね。含んでもらわないと困るわけですが、仮にトランプ大統領が言及してくれたとしても、残る可能性がある。なので、そっちが日本にとって、より直近で差し迫る脅威ですので、そこは核やICBMとは切り離して考える必要があると思います。

飯田)それに関しては相手に破棄させる、プラス日本の防衛の仕方というのも変えなきゃいけない可能性もありますか、これは?

浅羽)もちろん、核の傘はアメリカは引き続き提供してくれるはずだし、日米同盟が日本の安全保障の軸であると思いますが、国家戦略を見直す必要や、防衛の体制レベルがいまのままで十分なのか議論があって然るべきと思います。
もう1つは、朝鮮戦争がいま休戦協定ですが、これを早ければ今年中に終戦ないし平和条約、ということになり、そこに関わるのは南北朝鮮とアメリカ、ないし中国と言っている。日本やロシアが入っていないわけですが、これは朝鮮戦争当事者じゃないので、平和条約に加わるのはなかなか難しいですが、秩序が大きく、地殻変動レベルで変わる時期に、日本はこれにどう関与していくのか考える必要があると思います。

 

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