イスラム圏で断食月~米大使館エルサレム移転もありテロ警戒

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5/18 FM93AM1242ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』今日の聴きどころ!⑤

イスラム圏でラマダンが始まる
7:44~ココだけニュース スクープUP!:コメンテーター宮家邦彦(外交評論家)

イスラム圏の多くの国で、1ヶ月の断食(ラマダン)が始まった

エジプトやサウジアラビアなどイスラム圏の多くの国で、17日イスラム歴の断食月「ラマダン」が始まった。期間はおよそ1ヶ月で、病人や子供、妊娠中の女性らを除いて原則として日の出から日没まで飲食が禁じられる。ラマダン中にイスラム教徒の信仰心が高まることにつけ込む形で、近年はイスラム過激派がテロ攻撃を呼び掛けるケースが多く、特にイスラム教徒の集団礼拝日である金曜日はモスクなどの宗教施設や群衆が狙われる可能性もあり、日本の外務省なども注意を呼び掛けている。

飯田)宮家さんは中東、イラクなどに直接赴任されたこともあると思います。

宮家)断食といっても日の出から日の入りまでですから、1日中やるわけじゃない。第二にイスラム歴というのは太陰暦ですから、徐々にずれていくわけです。真冬のときもあれば真夏のラマダンもある。真夏というのは50度くらいになるので、朝から水も飲んじゃいけないわけですよ。夕方まで我慢して日が沈んだら、暴飲暴食して、その気になったら朝まで食べているわけです。そうしたら眠いしお腹いっぱいで、仕事にならないときもある。聖なる月ですから、宗教心が高まってイスラエルけしからんという気持ちはわからないでもないですけれど、イライラすることも事実ですよ。

飯田)イスラエルという話も出ましたが、イスラエルにあるアメリカ大使館はエルサレムに移転した……タイミングが全部重なっていますね。

宮家)たまたまラマダンが始まったのでしょう、これは毎年ずれるわけだから。一番の問題は、パレスチナ人が怒るのは当たり前だけれども、アメリカがいままで中東和平のために仲介をやってきたわけです。しかしながら、イスラエルの首都がどこかというのは問題の核心中の核心ですよね。この問題はいままで触れないようにしてきて、最後に議論すればよかった。ところがアメリカがもうこっちだって言っちゃったから、アメリカが善意の第3者じゃなくなるということです。そのことが最大の問題です。和平プロセスは死んじゃったんですよ。それが私は悲しくてしょうがない。

飯田)エルサレムの帰属に関しては、双方、国を作ったときに「首都だ」と言って、最後の最後に話し合いで当事者同士で決めるということでしたよね。

宮家)最初に分割されたときもエルサレムは割れていたわけです。イスラムの地区とユダヤの地区があったのだけれども、いまは全部占領しちゃっていますでしょう。しかも分割するべきじゃないとイスラエルは言っているわけだから。ということはイスラエルの人だけになるということですよ。それが最大の問題なので、あともう1つは難民の帰還権の問題があるのだけれど、難民の問題と首都の問題、これを軽々しく判断しちゃいけないですよ。

サウジアラビアの王子がイスラエルの主張を認める発言

飯田)難民についてですが、ユダヤ人がパレスチナの地域にも入植をしていて、帰還ができなくなっている。それに対してサウジアラビアの王子がイスラエルの主張を丸飲みするような、認めるような発言をしました。

宮家)国連の決議が出ていて然るべく分割をしましょう、そして西岸とガザについては占領しているわけだから撤退しなさいと。サウジアラビアはこれにずっと反対していたのだけれども、最近ようやく現実的な判断をするようになりました。必ずしもイスラエルの肩を持ったわけではなく、現実的な判断をするようになったけれども、あまりにも時間が遅れている。

飯田)かつてだったらこういう事が起こると、アラブ全体として大反対になるんじゃないかと言われていましたけれども、いまはないと。これはどういう事が理由になるのですか?

宮家)それは自分たちの政権の維持が誠一杯ですから。アラブの大義の為にとは言って実際に戦いを何度もやったけれど全然上手くいかなかったし、アラブの大義は理解するけれどもアラブが統一しているかというと全然バラバラだという現実を露呈してしまったということです。

飯田)アラブとしては対岸のペルシャ、イランに対してどう対応するかということが重要になってきますか?

宮家)特に湾岸地域の人口の少ないスンニ派の国々が多いですけれども、彼らからするとペルシャよりイランの方が遥かに怖いですよね。それが現実なので、それをやっとサウジアラビアが認め始めた。イランの脅威が強まるにつれ、イスラエルとはかなり共通の利益を持つようになってきたとは思います。

飯田)イランに対してはアメリカが核合意を放棄して強硬に出るというのは、アラブ諸国にとっては歓迎の部分が大きいですか?

宮家)そうですね、サウジもそうだし。イランが本気で核開発を進めて核兵器を持ったら、サウジアラビアだってエジプトだってどこの国も本気で核開発を考えますよ。それはとんでもない核拡散ですよね。それを防ぐ意味ではいまの段階でイランを止めないといけないと思います。

日本ができることとは?

飯田)そんななかでの日本の外交というところですけれども、これはやりたいことは限られてしまうわけですか?

宮家)アジアとは違って、いい意味で歴史問題がない。善意の第3者として動く余地はあります。でも日本はあそこに基地を持っているわけではないし、政治的、軍事的にプレゼンスが強いわけではないですから、なかなか本当の判断をするときはパワーが大事な部分はあるので。日本は別の世界、即ち軍事的というよりは経済的な分野で貢献をしていくと。いままでそれをやってきたわけですが、チャンスがまたくるかもしれないというところだと思います。

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