トランプ大統領が「イラン核合意」離脱に至った6つのポイント

By -  公開:  更新:

5/9 FM93AM1242ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』今日の聴きどころ!②

アメリカがイラン核合意を離脱、フランス・マクロン大統領が批判
7:10~お早う!ニュースネットワーク:コメンテーター高橋洋一(数量政策学者)

アメリカのイラン核合意離脱をマクロン大統領が批判

アメリカのトランプ大統領がイランとの核合意から離脱すると発表したことを受けて、フランスのマクロン大統領がTwitterを更新し、アメリカの決断を残念に思うと、その決断を批判した。またイランのロウハニ大統領はアメリカの対応を批判しつつ、核合意に残留する考えを示している。

飯田)アメリカのイラン核合意離脱のニュースは日本時間、今朝の3時に記者への発表がありました。各国様々な反応を見せています。イランは核の濃縮を準備しろと、数週間待つけれども、というようなことをロウハニ大統領は指示したそうですね。

高橋)一応穏健派ですからね、合意に残りつつ、対抗策ということなのでしょう。でもアメリカとしては核を持つという道筋が許せなかったということでしょうね。
今、北朝鮮と交渉していますよね。北朝鮮は段階的にと言っていますが、そういうのも許せないというのが、今回のイランの核合意からアメリカの離脱ということと同じだと思います。北朝鮮に対しても段階的では許せないと。ある意味でトランプらしい、首尾一貫したやり方ではありますね。

各国それぞれの思惑~イラン核合意アメリカ離脱の理由

飯田)その辺りの意図や、アメリカ外交全体への波及というのを、今日は国際政治学者・藤井厳喜さんと電話をつないで伺ってみます。
まずはイランの核合意からアメリカの離脱という話ですが、藤井さんはどうご覧になりましたか?

藤井)トランプもまた乱暴なことをやっていると言う人もいますが、そういうことではなくて、核のドミノを強力に防ぐ、これをどうしてもやらなければいけない。日本にとってのいい影響というのは北朝鮮に対する強烈なメッセージになるということです。でもこれで終わりではありません。幾つかのポイントをお話しますが、1つ目は180日ルールというのがあって、180日間の猶予期間の間に本当に制裁を開始するかどうかを、アメリカは決める。その間に再交渉すれば、アメリカは核合意に戻ってくる、ということもありうるわけです。

2番目にロウハニ大統領はいち早くここに留まると表明しています。アメリカが離脱してもヨーロッパとの関係は深いですから、こちらも同時に絶たれちゃうと困るので、アメリカが離れてもこのディールには留まると言っているのです。それもトランプさんはある程度見越してのことでしょうね。

3番目。ヨーロッパはイランと貿易をやりたくてたまらないのです。例えばフランスのエネルギー開発会社のトタルはイラン南部にガス開発で48億ドルを投資すると2016年に調印しています。フランスのルノー、日産ルノーですが、ルノーやプジョーもイランに工場を持っています。それに石油エネルギー大手の英国とオランダが持っている会社のロイヤル・ダッチ・シェル、ここもイランのエネルギー部門で複数の投資協定に仮調印していますし、それからユニリーバという生活関連商品を扱うイギリスとオランダの会社ですが、イランに進出しています。ヨーロッパのエアバス、アメリカのボーイングからも航空機を買いますなんてことも言っています。だから彼らは商売したくてしょうがないんです。そういう訳でフランスは絶対離れませんし、イギリスもそういうことで関係がある、それからドイツは脱原発を進めているし、フランスも原発の比率を下げると言っているので、イランの天然ガスはどうしても必要です。これはロシアの天然ガスとのシェアのバランスをとるためにも必要です。これが3番目のビジネスポイント。

4番目にアメリカはサウジアラビアを強力に擁護しなければならない。というのは、サウジとイランのライバル関係が中東での一番の不安材料なんです。サウジはイスラム原理主義の方向から外れて、いい方向に進んできています。この間もサウジの皇太子がアメリカに行って、ユダヤ系のタカ派の団体トップみんなと会っていました。
これはどういうことかというと、イランと対抗するためにサウジは過去の確執もあるけど、イスラエルとも手を組みましょうということです。
この、サウジアラビアの不倶戴天の敵がイランだというサウジ王家を支援せずに、サウル王家が揺さぶられるようなことになったらとても困るんです。それとサウジもこのタイミングでアメリカに行っているのは、このまま放っておいて2025年からイランが徐々に核開発をやるようになれば、うちも核開発をやらざるを得ませんよと、アメリカもわかってるでしょということですよね。だからアメリカはサウジのメンツを立てて、中東の核のドミノを防ぐためには、今回ちょっとハードだけど、この手続きを経ざるを得ないだろうと。

イランにおける体制転換の可能性

藤井)5番目はイランの中で強烈なインフレが起きている。これは通貨崩壊に近い。昨年末にリアルという単位なのですが、1米ドルが4万リアルだったのに、今は6万リアル以上にまで外為相場が下がってきている。崩壊状態です。これに揺さぶりをかければ、レジームチェンジ(=他国の体制を転換させること)が出来るのではないか、ということを危険ですがアメリカは考えているのではないかと思います。

飯田)イスラム革命以来の体制を変えるということですか?

藤井)そうです、イスラム教のお坊さん達が上を完全に仕切っていますから、完全なデモクラシーではないんです、選挙はやっているけれども。誰が選挙に出られて出られないかというのは、イスラム教の宗教指導者が全部決めている訳です。

飯田)ハメネイさんというひとがトップです。

藤井)そう。中にはハメネイとロウハニとの対立というのもありますが、ここをうまくやると、レジームチェンジも不可能ではない。昨年以来、自然発生的なデモが起きています。経済制裁を解除されたのに、ちっとも国民の生活がよくなってないじゃないかと。

飯田)若者が相当不満を持っていると言いますね。

藤井)若者の失業率が30%以上と言われています。それからホメイニ革命以降に生まれた人が人口の半分以上になったこともあり、その中でレジームチェンジの可能性があるのではないかと見ているのではと思います。

連立多元方程式を解くように決断した米の離脱

藤井)6番目は先ほど高橋先生が仰ったように、北朝鮮に対する強烈なメッセージです。そういうことを考えますと、かなり微妙なバランスの上でとったトランプ大統領の決断だったと思います。トランプはすごくわかりやすい人で、選挙中に言った公約を次から次に実現させています。イラン核合意からの離脱というのは、唯一でもないですが、公約を破っていた。

飯田)手をつけていなかったと。

藤井)非常に微妙な連立多元方程式を解くような問題なので、これは簡単にはできないぞと、トランプ自身、よくわかっていたんです。ここに来て北朝鮮との連動もあるでしょう、いろんな要素も考えて、アメリカは敢えて離脱と。核ドミノについては、どうしても防がなければいけない。これには強硬な手段も必要だろうということだと思います。

飯田)核ドミノということで言えば、東アジアでは北朝鮮です。そこもトランプ大統領としては防ぐという大きな意思を示したということなのでしょうか。

藤井)そうです。イランと北朝鮮とは常に連動していましたからね、開発に関しては。ですからこれは強烈なメッセージですよね。だから今度もし北朝鮮が一挙に短期間で核開発プログラムを廃棄するということになると、イラン核合意よりも遥かに緩い。2025年以降段階的にいつの間にか核保有国になっちゃう可能性もあるわけです。そういうあたりのバランスだと思います。

飯田)ということは、緩いものは許さないぞと、ポンペオ(米国務長官)さんが北朝鮮に行っています。このタイミングも計っていたということでしょうか。

藤井)そうですね、北朝鮮を睨みながらの決断でしょうね。

飯田)なるほど。国際政治学者・藤井厳喜さんに伺いました。トランプさんは連立多元方程式を解くような形で今回の決断を下したということです。

高橋)そうですね、ヨーロッパが逃げられないからということで、核の話について筋を通したというのが大枠だと思います。トランプさんらしいといえばらしいのですが、最初からブレてないということなので、ヨーロッパが説得しようというのが、ちょっと難しかったのかなと思います。

飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月~金 6:00~8:00

番組情報

飯田浩司のOK! Cozy up!

FM93/AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00

番組HP

忙しい現代人の朝に最適な情報をお送りするニュース情報番組。多彩なコメンテーターと朝から熱いディスカッション!ニュースに対するあなたのご意見(リスナーズオピニオン)をお待ちしています。

Page top