日本も見習うべきインドのしたたかな外交

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月2日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。RCEPを中心に、インドの外交ポジションについて解説した。

RCRP 閣僚 会合 安倍首相

RCEPの閣僚会合で記念写真に納まる安倍首相(中央)と各国閣僚ら=2018年7月1日午前、東京都内のホテル 写真提供:共同通信社

RCEP~年内の大筋合意目指すことで一致

TPP関連法成立の一方で注目を集める、アジアの自由貿易協定、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)は、昨日、日本・オーストラリア・インド・ASEANなどの、16カ国による閣僚会合を東京都内で開催。トランプ政権が保護主義的な政策を打ち出すなか、今後自由貿易を推進するための交渉を進め、年内の大筋合意を探っていくことになる。

飯田)新聞報道などでは、「トランプ大統領の保護主義に対抗する」という部分を全面に出すような解説も多いですが、果たして日本としては、特にそれが眼目なのかとなると、少し違う気がします。

須田)なおかつ、アメリカのトランプ政権の保護主義化が強まってきたというのは、RCEP交渉ができた時点ではなかったわけですからね。

飯田)これは5年も交渉していますからね。

須田)それが目的ではない。よく言われているように、メガFTA(巨大場自由貿易協定)と呼ばれています。通常FTAは、2国間で結ぶのがポピュラーなやり方ですが、近年では多国間でそうした自由貿易協定なりを結ぶのが主流になりつつあります。2国間だけでやると、関連していない国はルールの範囲外に置かれるので、非常に使い勝手が悪い。「多国間でマルチなFTAをやろう」というのが通性です。そのなかの1つに、このRCEPが位置づけられている。しかも今回、TPPと異なるのは、TPPは「アジア太平洋地域」という、太平洋を取り囲むような形です。
一方、RCEPにはインドがある。人口が多く、将来の経済成長性も見込まれる大国が入ってきた。つまり、一帯一路構想。アメリカではなく中国に対する意識が非常に強いと思います。

したたかな外交センスを持つインド

飯田)中国もなかに。中国やインドは、どちらかというと「まだ途上国だから」と、貿易のルールは関税をかけたり、昔ながらのやり方をするところで、ちょっと日本はなだめるというか、そういう立場ですよね。

須田)ただ、最近インドも変わってきたと思うのは、まったく違う話ですがCOP21(パリ協定)においてインドは最後まで後ろ向きでした。「途上国だ」と強く打ち出し、「我々にはCO2を排出する権利がある!」とやっていたけれど、最終的にはアメリカのアル・ゴア元副大統領が動きました。アメリカから無償で太陽光発電の技術を供与されるということで、COP21に署名した流れになりますが、その点で言うと、お互いにwin-winの関係だとすれば、インドも先進国の日本と共同歩調がとるのは、十分に可能。やはり異質なのは、中国だと思います。自らのルールで動きすぎだし、それも朝令暮改でコロコロ変わる。

飯田)インドがしたたかだと思うのは、一帯一路の会議もこの間インドでやって、けっこう投資を引き出して。今回のRCEPでは日本の方に……いろいろなところと、上手い外交をしますね。

須田)上手いですよね。とはいえ、モディ首相は「一帯一路に参加しない」とよく分からないことを言っていて、AIIBから融資を引き出して。おいしいところ取りですが、あのしたたかさは日本も見習うべきだと思います。

日本はアメリカとインドやオーストラリアの仲を取り持つ重要ポジションにいる

飯田)ある意味、米朝がこれから角をつき合わせるところでいうと、インド的ポジションはとろうと思えばとれるわけですよね。

須田)だから、インドと協力関係を結んでいく。特に、インドとアメリカは、安全保障の分野ではそれほど親密な関係にはないのですよ。やはり日本の存在があるから、アメリカ・インド・日本の三角関係が成立するわけです。その点で言うと、アメリカの国防総省も日本に対して非常に感謝しているのです。

飯田)「アジアは広く任せたぞ」みたいな。

須田)その仲立ちをしている日本の存在感は増してきている。オーストラリアに対してもそうです。アメリカとオーストラリアもそこまで仲良くはありませんが、そこに日本が入るので……だから、この経済・安全保障の分野でオーストラリアやインドの間で日本の存在は今後高まってくると思います。

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