一目惚れした保護猫のために実家を出る! ハタチの決心と猫への愛
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【ペットと一緒に vol.116】
女子高生時代に一目惚れした保護猫を迎えるために8年間かけて準備をした、村井えみりさん。いざ、迎えてみると……。今回は、えみりさんと保護猫のストーリーをお届けします。
母の姿を追って
村井えみりさんは高校生の頃、母親がボランティアとして出入りしている猫の愛護団体を初めて訪れました。そこで出会ったのが、3歳のヤスヒロくんという保護猫です。
「グリーンの瞳がすごく美しくて。まさに、一目惚れでした(笑)」と、えみりさんは振り返ります。
実はヤスヒロくん、キャットシェルター随一の人見知り。訪問客に自分から寄って行ったことなどありませんでしたが、えみりさんには、ゴロンとひっくり返って甘える仕草を見せたのだとか。
「すご~い! ヤスがお客さんに撫でられてる」と、愛護団体の代表も驚いていたと言います。
えみりさんはヤスヒロくんをシェルターから引き取って一緒に暮らしたいと希望しましたが、愛犬のヨークシャー・テリアや一時預かりの猫が常時いるにぎやかな家庭という事情から、ヤスヒロくんを迎えることはできませんでした。
けれども「私、将来ひとり暮らしをしてヤスを迎える!」と、えみりさんは二十歳になってもヤスヒロくんと暮らす夢を諦めきれなかったそうです。
猫の目の色に合わせたインテリア
えみりさんは大学を卒業して就職後、念願のひとり暮らしをスタートさせました。ヤスヒロくんと出会ってから実に7年。初志を貫き、ヤスヒロくんの目の色に合わせて、インテリアはグリーンで統一したそうです。
愛護団体の代表も、「どの譲渡会も参加を見送ってきたヤスだけど、唯一、えみりちゃんなら一緒に暮らせると信じられるから」と、新居での2週間のトライアル期間がスタート。
「ヤスと同じ空間での生活は、夢のようでした。でも、ヤスはシャイな猫です。友人がよく遊びに来る私の家では、落ち着かないかもしれない。もっと穏やかな暮らしを望んでいるかもしれない。そんな、ヤスに負担をかけたくないという強い思いが、逆に私の生活に緊張感や神経質さを芽生えさせてしまったようで……」と、えみりさん。
結局、「うまく表現できないんですけど、ヤスを思うからこそ、一緒の生活は諦める決断を下したんです」。
猫への愛は変わらない
東京都中央区「動物との共生推進員」や子猫のミルクボランティアとしても活動する母親を見て育ち、のべ50頭ほどの一時預かり猫との暮らしを送ってきた、えみりさん。
「ヤスとの生活は断念したものの、独り立ちしたいま、私も保護猫に明るい未来を切り開く手伝いをしたいという思いは強くなりました」。
そこで、一時預かり先が見当たらずに困っているという猫を、母の知美さんの紹介で引き受けたそうです。
「中央区内で捕らえられた黒猫なんですよ。地域猫としてエサやりボランティアさんとの触れ合いはありましたが、あまり人に慣れていません。なので、譲渡会などで新しい家族を募集する前に、我が家で人馴れをするのが目的です」。
知美さんは「一時預かり先が探しにくかったのは、ナナちゃん。誰も触れないから体も拭けなくて、とにかく汚いんです」と語ります。
「だから、抱っこは無理かもしれないけれど、せめてブラッシングや爪切りはさせてもらえるようなコにしてからじゃないと里親探しができませんよね。1年かかっても、2年以上かかってもいいんです。ゆっくり負担をかけずに、いろいろなことに慣らしてあげたいです」と、えみりさんは微笑みます。
先日えみりさん宅を訪れた友人には「いま、後ろ(ソファ)にナナちゃんがいるから、振り向かないでね。目が合うとびっくりしちゃうから」とお願いしたと言います。
「猫を愛しすぎですかね?」と笑うえみりさんは、今後さらに、保護猫のための新しい活動を企画して取り組んで行きたいという夢も抱いているそうです。
連載情報
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著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。